そんな中で出合ったのが、ベンチャーキャピタリストという仕事だった。大学1年生の時にグロービス経営大学院主催のイベント「G1カレッジ」のパネルに参加し、VCの存在を初めて知った。その後、2年生になって知り合いからANRIのインターンシップの紹介を受けた。同世代の起業家が次々と登場する中、インターンを始めたきっかけは「『いつか自分も起業するかもしれないから、いろいろな人と知り合えたら役に立つかも』というちょっと打算的な動機だった」と笑って振り返る。

実際に19年1月からインターンを始めてみると、世の中の不便や不平等を解決するために働いている起業家たちの姿に共感した。特に忘れられないのが、ギフトECサイト「TANP」を手掛ける企業の創業2周年記念パーティーに集まった人の多さと笑顔。たった1人の起業家のアイデアから、こんなにたくさんの笑顔が生まれるという瞬間に立ち会えた。「会社ができていくってこういうことなんだ」と実感し、VCの魅力を知った。

アメリカの高校卒業パーティーの様子(2016年夏)。右から2人目が江原さん

彼らと一緒ならば、世の中のいろいろな問題に取り組めそう――。そうして「起業家を一番近くで見届ける仕事がしたい」と考えるようになった。インターンを始めた3か月後には、ANRI創設者でジェネラル・パートナーの佐俣アンリ氏に「ベンチャーキャピタリストになりたい」と打ち明けた。就職活動としてコンサルティング業界や消費財を扱う企業を一応は調べてみたものの、「自分の興味の範囲が広すぎて面接の時間内に理路整然と説明できないなと思った」と笑う。

シード投資は「戦友探し」 決め手は信念と性格

江原さんはANRIについて「インターンの時から、やりたい放題やらせてくれた」と振り返る。そして、その年の秋には「EARS」という音声サービスを手掛けるスタートアップへの投資を担当し始め、ANRIの正社員になった。大学に入ったころは「こんな仕事をしているとは全く思っていなかった」。

創業当時から資金を入れるシード投資のことを、江原さんは「戦友探しだ」と話す。教科書通りの正解や、投資に向けたチェックリストはほぼない。しかも事業が失敗すれば、また違う事業案を模索していくので、ビジネスアイデアだけに投資するわけではない。未知数だからこそ、投資の決め手は「人」だと考えている。EARSの創業者についても「最初はアイデアだけで何もなかったが、この人たちと頑張りたいと思えた」という。今も「投資したいと思うのは『こういう世界にしたい』という信念がある人。あとは性格が悪くない人」と言い切る。

足元で取り組んでいる大きなプロジェクトの1つが投資先の多様性の確保、特に女性起業家への支援だ。ANRIで働き始めてしばらくたった頃、VCのイベントには男性ばかりで女性が1~2人という例が多いことに気付いた。女性ベンチャーキャピタリストはまだ数少なく、男性との比率は「9対1くらいだと思う」。

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現代は弱みを見せることのできるリーダーが好まれる
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