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中川大志 経験や記憶をたどりながら、役をイメージ

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日経エンタテインメント!

5歳のときに両親を亡くし、伝説の殺し屋・丈一郎に育てられた男虎柊(おのとら しゅう)。あるとき、丈一郎は「これが最後」と決めた仕事で返り討ちにあい、殺されてしまう。柊は復讐のために殺し屋業を継ぐが、身体能力は申し分ないのに、最高に間が悪くて暗殺ターゲットの女を殺せない。それどころか、迫る危険から彼女を守るなかで、徐々に好きになってしまう。

『ボクの殺意が恋をした』(ytv・日本テレビ系)は、"殺意"と"恋"が入り混じるラブコメディ。映画『坂道のアポロン』(2018年)や連続ドラマ『花のち晴れ~花男 Next Season~』(18年)などの青春ストーリーで存在感を示し、NHKの朝ドラ『なつぞら』(19年)で飛躍した中川大志が、主人公の柊を演じている。柊の暗殺ターゲットであり、恋の相手にもなる鳴宮美月にふんするのは、新木優子。

中川はこれがGP帯(ゴールデン・プライムタイム、19時~23時)連ドラ初主演となる。取材したのはクランクイン前のポスター撮影時。この作品にかける意気込みを聞いた。

愛される人物像にできれば

「僕自身、小さい頃からドラマが大好きで。GP帯のドラマに主演するのは初めてなので、プレッシャーもありますし、ドキドキしています。でもまずは第1に、楽しむことが大切だなと。自分のアイデアも試しながら臨みたいです。

今日のポスター撮影で、世界観が具体的になってきました。柊は普段は清掃会社で働いているので、作業着とかつなぎを着ていて。それで、殺しのミッションに行くときは、丈一郎さん(藤木直人)のお下がりのスーツを着るという設定なんですね。武器庫の中にたくさんスーツが入っているんですけど。僕のなかでは変身するイメージで、1つの象徴的なアイテムになるのではないかと思っています。

新木さんとは、1度共演してますが(連ドラ『監獄学園‐プリズンスクール‐』15年)、ガッツリ一緒にお芝居をするのは初めて。台本を読んでいるなかで、僕なりの美月のイメージがあったのですが、新木さんはぴったりだなと。今日は合間にお話しする時間もあったりして、どんな掛け合いができるか、2人の特殊な関係性を一緒に作っていくのが楽しみです。

柊を演じるにあたっては、"殺し屋"という存在だったり、ストーリーの設定自体がファンタジックなので、見ている方にどれだけ柊というキャラクターに共感してもらえるかが鍵かなと思っています。

優しくてピュアな性格ゆえに、ターゲットである美月に感情移入してしまったり、ミッションとは違うところで足踏みして、『殺したいのにどうしても殺せない』、愛すべき人物像の部分は信じてもらえるように。アクションだったり、脱ぐシーンもあるみたいなので(笑)、体も鍛えて準備しています」

脚本は、連ドラ『ルパンの娘』(19年、20年)や映画『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』(19年、21年)など、ラブコメディに定評のある徳永友一のオリジナルだ。

「コメディとは何なんだろうというのを、僕も立ち返って考えているところです。僕は徳永さんの脚本は2回目で、以前もドラマに出させていただいたのですが(連ドラ『水球ヤンキース』14年)、ジャンルみたいなものがあったとしても、そこの枠に収まりきらないトーンだったり、ストーリー展開があるのが、徳永さんの脚本の魅力だと思うんですよね。

今回の『ボクの殺意が恋をした』も、やり方によっては、作品の表情がどんどん変わっていくような、そういう可能性を秘めているなと思っていて。だからこそ、作品のスピード感もそうだし、やる側のバランス感覚が試される。それは難しい課題ではあるけれど、挑みたくなる部分でもあって、結果としてこの作品にしかない色が出来上がっていったらいいなと思ってます」

マンガ原作の作品にも数多く出演しているが、今回はオリジナル作。役作りはどのように取り組んでいるのか。

「どんな作品でもベースは一緒で。その役が感じている気持ちを、自分も理解する…って、口では簡単に言えますけど(笑)。例えば、好きな女の子がいる役だったら、どれくらい好きなのかを知る必要があると思っていて、じゃあ僕自身が同じくらい好きな人は誰だろうって、基本的には考えます。結局は自分じゃない誰かを演じているので、『理解した』ということにしかすぎないんですけど。

『考えるだけでこんなに苦しいんだな』というのが、想像じゃなくて、自分のこととして分かる。トラウマを持っている役だったら、僕にとってそのくらい怖いことは何だろうって考えていく。それがベースですね。今回も経験や記憶をたどりながら、柊と1つになっていくことをイメージしています」

1年半前から改めて勉強を

言葉を慎重に選びながら、熟考して答える姿は真面目そのもの。小学校5年生から俳優活動をしており、23歳ながらキャリアは豊富で、『家政婦のミタ』(11年)のような社会現象になったヒット作や、NHK大河ドラマもすでに3作品経験している。近年、俳優としての気付きがあったり、転換期だったと感じた作品は?

「『親バカ青春白書』(20年)です。新たに勉強し始めたのがちょうど1年半くらい前で。ご縁もあって、演技指導の先生と一緒にトレーニングを始めたんです。僕の仕事への取り組み方が、ちょっとずつ変わったタイミングですね。

10歳からこの仕事をしていて、最初は事務所の演技レッスンもやっていましたが、振り返ってみたら本当に最初だけ。いきなり現場に行き始めたので、感覚的に体に染み込ませてきた部分が大きかったし、だんだん行き詰まりを感じてきたというか。

極端な話、同じことを10回やってくださいと言われたら、いつでも同じことができるような方法論を、ちゃんと勉強したいと思ったんです。"演技"なので、感性で勝手に身に付いたものだけじゃなく、"技術"として積み上げていきたいなと。

求められるものの変化で……というよりは、自分自身で限界を感じてきたというか。このままでもたぶんやり続けられるけど、自分が全てを知り尽くしたつもりになっていたら、それ以上の成長がないと思うんですよね。

今回は主演を務めさせていただくので、先生との演技レッスンは、このドラマへの自信にもなっていて、増えた引き出しを生かせるのではと思っています。まぁ、何が使えるかは分からないですが(笑)、撮影頑張ります」

『ボクの殺意が恋をした』
 育ての親・丈一郎(藤木直人)の裏稼業を継ぎ、殺し屋となった男虎柊(中川大志)。丈一郎殺害の真犯人だと目される、美女マンガ家・鳴宮美月(新木優子)を暗殺するために近づくが、間が悪くて殺せず、なぜか恋の相手に。殺意と恋を織り交ぜてスリリングに描くラブコメディ。共演は、殺し屋界のエース役に鈴木伸之、美月のチーフアシスタント役に田中みな実ほか。Huluでは過去話も配信中。放送中/日曜22時30分/ytv・日本テレビ系

(ライター 内藤悦子)

[日経エンタテインメント! 2021年8月号の記事を再構成]

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