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「アース ノーマット」の主力商品は60日タイプ

「アース ノーマット」の主力商品は60日タイプ

夏の眠りを邪魔する蚊はうとましい生き物だ。退治する方法はかつての蚊取り線香に代わって、今では電子式蚊取り器が一般家庭の主流となっている。液体式の据え置きタイプでシェア9割を占めるのは、アース製薬の「アース ノーマット」シリーズ。マット式の電子蚊取り商品では一番乗りを逃したアースだが、液体タイプでは先行し、圧倒的な支持を得た。「アース ノーマット」のシニアブランドマネージャーを務める渡辺優一氏は「今や感染症対策の意味からも蚊取りは重要」と注意を促す。

日本人は昔から蚊に悩まされてきた。古くは平安時代の清少納言も「枕草子」の中で、眠っているときに耳元で聞こえる蚊の羽音を「いとにくけれ」とつづっている。当時から1000年以上が過ぎても、蚊は安眠を妨げ続ける存在だ。2014年ごろからはジカ熱やデング熱など、蚊が媒介する感染症のリスクが相次いで報じられ、蚊の危険性をあらためて印象づけた。渡辺氏は「今やかゆみや寝苦しさにとどまらない。『たかが蚊』では済まない時代を迎えつつある」と、蚊との戦いが新たなステージに入ったとみる。

蚊に刺されるのを防ぐには、物理的に遠ざける蚊帳(かや)や、ボウフラの発生を減らす水たまり対策などがあるが、最も生活に身近なのは、やはり薬剤を使った蚊取りだ。歴史が最も長いのは、夏の風物詩ともいえる蚊取り線香。大日本除虫菊が「金鳥」ブランドで渦巻き式の蚊取り線香を発売したのは1902年と、120年近く昔のことだ。

以後、長く煙を使った蚊取りが定着したが、蚊取り線香にはいくつもの難点があった。「線香は火事ややけどの心配があるのに加え、すすで汚れたり、灰が飛んだりといった面倒もあった」(渡辺氏)。床に置いた線香を足で蹴飛ばしてしまうトラブルもしばしば。線香が燃え尽きれば、効き目も薄れてしまう。こういった弱みを踏まえ、火を使わない電子式が求められるようになった。高度経済成長期を迎えた1960年代には「脱・線香」を目指す、ひそかな開発競争が始まっていた。

殺虫業界の各社が開発を競う中、商品化で先陣を切ったのは、63年に世界初のマット式電子蚊取り器「ベープ」を発売したフマキラーだ。薬液をしみ込ませたマットを加熱して、成分を室内に放散するしくみ。線香と違って、マットを取り換えるだけで済み、火を使わないから、安全性も高い。急速に線香からの切り換えが進んだ。

アース製薬で「アース ノーマット」のシニアブランドマネージャーを務める渡辺優一氏

アース製薬で「アース ノーマット」のシニアブランドマネージャーを務める渡辺優一氏

アース製薬もマット式商品を売り出したが、消費者の声に耳を傾け、早くから次世代の改良型を準備した。マット式には「毎日、マットを取り替えなければならない」という面倒が伴っていたからだ。薬剤が安定して拡散しないという弱点もあった。消費者からは改善を求める声が聞かれたという。線香に比べれば、効き目の残る時間はいくらか長くはなったものの、使いたい時間だけ、スイッチをオン・オフするような感じで使うわけにはいかなかった。「いろいろな課題が見えてきて、開発の方向性も定まっていった」(渡辺氏)

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