日経Gooday

「脳トレ」より「趣味にハマる」が有効なワケ

:脳に刺激を与えれば成長できるという話なんですけど、それってやっぱりゲームやパズルみたいな、いわゆる「脳トレ」をやるのでしょうか?

:脳トレが楽しく続けられるのなら、もちろんそれでかまいませんよ。楽しくなかったら、無理に続けなくていいです。苦痛を感じて過度なストレスが発生すると、逆に海馬が萎縮しちゃいますから。

それよりも、自分の興味や関心のあることに、どんどんチャレンジしてみてください。仕事でも趣味でも何でもいい。それが脳に負荷をかけることになります。

:え、趣味でもいいんですか。私は川釣りが趣味なんですけれども、それでも脳にいいんですか?

:はい。楽しみながら何かに没頭することが脳に良い影響を与えます。私も新しい趣味にどんどん挑戦するようにしています。最近は、ピアノ、ドラム、スノーボード、筋トレなどにハマっています。古い車をいじるのも好きです。

:自分が楽しいと感じることに取り組むのがよいということは、能動的にやるのが脳にとって良い影響を与えるということですか?

:その通りです。自分が興味を持つ対象には「知的好奇心」が湧いてきますよね。長生きする人ほど知的好奇心が強いというデータもあるんですよ。100 歳以上のお年寄りを調べたところ、60~84 歳の普通の高齢者と比べて男女ともに知的好奇心が強かった、という研究があります[注8]

ほかにも趣味や好奇心が脳に良い影響を与えて、認知症予防にもつながるというエビデンスはたくさんあります。

:認知症予防になるなら、趣味を大切にしないとなぁ。

:趣味以外にも、大人の脳を若々しく保ち、脳のパフォーマンスをアップさせる方法があります。詳しくは次回解説しましょう。

「勉強しなさい」より「好きなことをしなさい」

:子供の脳はネットワークを作るスピードが速いということでしたが、この時期にどんなことをすれば、脳の能力がさらに伸びるのでしょうか?

:基本的には大人と同じですよ。子供が興味を持ったことを後押ししてあげて、とことんハマらせる。勉強以外でも、スポーツでも趣味でも何でもいい。

:えっ、何でもいいんですか? 趣味でも?

:そうです。私は『東大脳の育て方』(主婦の友社)という本を監修したのですが、東大生によく見られる共通点として、音楽やスポーツ、ゲームなどで並外れた「熱中体験」をしているというのがあるんです。勉強とは関係のないことでも熱中した経験があるというのがポイントです。

だから親は、「勉強しなさい」と言うより、「何でも好きなことをしなさい」と言うほうが子供の脳にとっては効果的かもしれません。

:勉強以外のことにハマっても、学校の成績は伸びないんじゃないですか?

:そうでもないんです。「子供の幅広い趣味活動が学業成績に良い影響を与える」ことが明らかになった研究もあります[注9]。別の研究では、「思春期にダンス、音楽、美術、科学、文学創作、演劇、スポーツなどの余暇活動で成果を出した人は、将来の仕事においても成果を出している」ということが分かっています[注10]。さらに、「ノーベル賞受賞者はほかの一般的な研究者と比べて本格的な芸術活動の趣味を持っている人が多い」というデータもあります[注11]

:親が口うるさく言って勉強だけやらせればいいってことじゃないわけですね。

:はい。子供の脳の力を伸ばす方法については、次々回に詳しくお話ししましょう。

[注8]Masui Y. et al., Age, 28(4): 353-361., 2006

[注9]Bergin D.A. Journal of Leisure Research, 24(3):225-239., 1992

[注10]Roberta M.M. et al., Journal of Advanced Academics, 8(3):111-120., 1997

[注11]Root-Bernstein R. et al., Journal of Psychology of Science and Technology, 1(2):51-63., 2008

(聞き手 郷和貴=ライター)

[日経Gooday2021年8月10日付記事を再構成]

瀧靖之さん
東北大学 スマート・エイジング学際重点研究センターおよび加齢医学研究所 臨床加齢医学研究分野 教授。医師。医学博士。東北大学医学部卒業、東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳のMRI画像は、これまでに16万人に上る。10万部を超えたベストセラー『生涯健康脳』(ソレイユ出版)、『回想脳 脳が健康でいられる大切な習慣』(青春出版社)など著書多数。

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著者 : 瀧 靖之、聞き手 : 郷 和貴
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