左:愛媛・石鎚酒造「石鎚 夏の純米 火入れ しずく媛」(720ミリリットル、1650円)、右:新潟・村祐酒造「村祐 夏吟 生」(720ミリリットル、1600円)。石鎚の夏酒は味ノマチダヤのPB

西洋夏野菜・ズッキーニに合う日本酒はどんな味?

印丸さんがアパレルの仕事から転職して、店で働くようになったのが30代。多くの蔵元が代替わりをした頃で、若い蔵元とは年が近く、深い関係を築きやすかったことも、後の企画に結びついた。夏酒企画の前には、常温保存ができ、一升瓶で税別1800円以下(当時)の懐にやさしい「スーパー晩酌酒」を造ってほしいという企画を手掛け成功させたことも、蔵元のチャレンジ精神に火をつけた。

それまで蔵元は、値段ありきでお酒を造ったことがなかったという。だから、「逆算して造ることで、発想の転換になった。提案側だけでなく、造り手にもいい緊張感、ワクワク感を感じてもらえたのでは」と印丸さんは振り返る。第1回目の夏酒企画に参加した蔵元は約20にもなり、「豊盃」「黒龍(こくりゅう)」「石鎚(いしづち)」「長珍(ちょうちん)」「貴(たか)」など日本酒好きにはたまらない造り手が集まった。

出来上がった夏酒はそれぞれに個性があった。スカっとした酸が駆け抜ける酒、重厚さの中にさわやかな味わいを表現しようとした酒もあれば、夏でもおかんでおいしい酒を提案してくる蔵、ロックで楽しんでと勧める蔵もあった。ズッキーニなどの西洋の夏野菜と合わせてほしいと提案するところもあったという。甘口の酒を代表する新潟の村祐(むらゆう)酒造からは、和三盆のようなキレのいい甘さの夏酒が生まれた。夏の季語である甘酒のように体に染みわたる酒なのだろう。

カップ酒の品ぞろえも圧巻の味ノマチダヤ。夏酒もずらり。「ビキニ娘」のカップ酒もある

スタート時から、夏酒は大評判になった。特にヒットとなったのが、冒頭の「ビキニ娘」だ。用意していた300本が、約1カ月で売り切れたという。「もともと、『スーパー晩酌酒』で三浦酒造に『モヒカン娘』というお酒を造っていただいていた。そのラベルに描かれた女性を夏仕様にして『ビキニ娘』ってどうですか?と言ったら、出てきたのがあのラベルのお酒でした」と印丸さん。

ビキニ姿の女性が手にしているのは、なぜかバレーボール。当時、プロビーチバレー選手だった浅尾美和さんが注目を浴びていたからだ。この酒には、「シークレットラベル」が存在し、バレーボールの代わりにスイカや金魚鉢などを持っているバージョンが何種類も存在する。「コンプリートは、大変ですよ」と彼は笑うが、そんな夏の酒らしい遊び心も人気の理由の一つだろう。「『夏の酒というのは、ありそうでなかったよね』と飲食店さんから言っていただき、最初の年から様々な夏酒の飲み比べもやってもらえました」と話す。

次のページ
家飲み・ソロ飲みが一段と楽しくなるカップ夏酒も続々