オウムにも文化? ゴミ箱を開ける「技術」広がる

2021/8/30
ナショナルジオグラフィック日本版

キバタンは、オーストラリア東部の開発の進んだ地域でよく見られる、人目を恐れない鳥だ(Photograph by ROBERT CLARK, NATIONAL GEOGRAPHIC IMAGE COLLECTION)

オウムは多才だ。人間の言葉をまねるだけではない。音楽に合わせて体を動かせるし、進んで仲間を助けることもできる。そして最新の研究で明らかになったのは、新たな行動を互いから学べることだ。ほんの数十年前まで、この能力を持つのは人間だけと考えられていた。

キバタンという、オーストラリア東部の都市部でよく見られるオウムがいる。群れで暮らす騒々しい鳥だ。シドニーで、その何羽かがゴミ箱を開ける方法を見つけ出した。するとまもなく、ほかのキバタンもこの行動をまねて、新たな食料源を手に入れた。

この発見は、オウムが「文化を持つ動物たちの仲間入りを果たした」ことを意味していると、今回の研究のリーダーで行動生態学者のバーバラ・クランプ氏は言う。研究成果は2021年7月23日付の学術誌「サイエンス」に発表された。

食料を得るための「文化」を持つとされる動物はほかにも知られている。カラスや類人猿、クジラ・イルカ類といった長生きで大きな脳を持つ動物たちだ。たとえば、チンパンジーは新しい木の実のむき方を互いに見せ合う。「すべての条件がオウムにも当てはまると期待されますが、これまでは証拠がありませんでした」とクランプ氏は語る。氏はドイツのマックス・プランク動物行動研究所の職員で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(協会が支援する研究者)でもある。

十分な証拠が得られなかった理由のひとつに、人間の3歳児並みの知能を持つといわれたヨウムの「アレックス」のように、飼育下のオウムについてはよく研究されている一方で、野生のオウムの文化的行動を観察するのは難しいことが挙げられる。たとえば、自然の中で、鳥の行動に影響を与えうる要素を説明することは困難だ。

しかし、シドニーのキバタンは、確実にいつも同じゴミ箱を訪れる。クランプ氏がこの「都会の探検家」を観察するのにうってつけだった。

最も人間的な鳥

キバタンは、白い体に黄色い冠羽を持つ体長60センチほどの美しいオウムで、オーストラリア東部と周囲の太平洋諸島に生息する。オウム目(インコやオウムの仲間)はおよそ350種が知られているが、キバタンに特徴的なのは、よく繁栄していること、とりわけ都市部で増えていることだ。ただし、堅いものをかじる習性があり、バルコニーを壊したりして害鳥扱いされることも少なくない。

社会的学習の発見は必ずしも驚くことではないと語るのは、米ニューメキシコ州立大学でオウムの音声学習について研究する生物学者のティモシー・ライト氏。今回の論文には参加していないが、高度な知能を持つオウムの理解をさらに深めるものだと評価する。

「私はオウムを最も人間的な鳥と呼んでいます」とライト氏は言う。「そのような方向の証拠が、これでさらに増えました」

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ゴミ箱を開ける「文化」はこうして広がった
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