声には“その人”の情報が入っている

緒方 「声は情報量が多い」って、僕もよく言うんですけど、みんな逆だと思ってるんですよね。「動画は一番情報量が多くて、声は情報量が少ない」と。でも、その人たちがイメージしているものは、ただの「文字の音声化」なんです。

声って実は、“その人”の情報がめちゃくちゃ入っている。すごく本人性がリッチなんです。文字や動画は加工されて目に入るけど、声は、口から出てきたものがそのまま耳に入りますし。

佐久間 肉声の持つ、そうした生々しさや「気持ち悪さ」みたいなものを、固有のパワーに変えて認識してもらえるかがポイントになりそうですね。

緒方憲太郎氏

緒方 そうなんです。声の場合は「おきれいですね」と言っても、「こいつ、本当はそう思ってないな」というのがバレてしまう。僕がここで、「僕イケメンなんで」って、声で言ったらイジって笑ってもらえるけど、文字で書いたら全然おもしろくないし。

声だと本人の人となりが全部伝わってしまうので、佐久間さんみたいに、かざらない人の方が人気が出るような気がしますね。

佐久間 うーん、そうなのかな。僕、しゃべり手としての自分のことは、イマイチよくわかんないんですよ。

緒方 佐久間さんは、「ラジオっぽくやろう」と狙っている感じがしない。今までテレビの世界でおもしろいものをたくさん作ってきて、「自分がおもしろいと思うものをそのまま出せば大丈夫だ」という、一定の自信があるからなんでしょうか。

佐久間 いや、そういう感じじゃないんですよ。

番組のディレクターから、「初回だけは(自分の番組を)後で聞いてみた方がいい」と言われて聞いてみたんですけど、「はしゃぎすぎだな」って思いましたもん。「うれしいのはわかるが、おじさんがこんなにはしゃいでどうする!」って自分で思ったくらいはしゃいでた。

そういう気持ちが、今も変わらないんですよ。毎週、水曜日のラジオが楽しみだし、何かおもしろい出来事がおきたら「うわー、これ(番組で)しゃべれるわ!」ってうれしくなっちゃうし。そのワクワクが変わってないからじゃないかな。

しゃべり手の「ワクワク」の源

緒方 なんでそんなに楽しみなんですか? ボイシーにも、有名なブロガーやユーチューバー、タレントの方がいらっしゃるんですけど、みなさん「『聴きましたよ』って言われるのが一番うれしい」「しゃべってるのが一番楽しい」っておっしゃるんですよね。何がそんなに、しゃべり手を楽しくさせてるんでしょうか。

佐久間 うーん。僕の場合は、ワクワクの源がリスナーの存在であるのは間違いないです。

緒方 そのワクワクって何ですか?

佐久間 まずは「今」をリスナーと共有するのを楽しみたいんです。そうじゃないとナマでやっている意味がないから。その時の流れやノリみたいなものを大事にしたい。テレビでも、僕、生放送の方が好きなんですよ。

あとは、聴く人にとって、何かのきっかけになればと思ってやってます。例えば、「演劇」というジャンルを知らなかった人が、僕の番組をきっかけに関心を持って「おもしろい」と思ってくれるようになるとか。

自分の好きなエンタメを広めたいという気持ちがあるんです。単なる情報として紹介するんじゃなくて、僕の「おもしろい」と思っている感情と一緒に届ければ、関心を持ってもらうきっかけになるかなと思ってます。声ってウソがつけないから。

(ライター 大井明子/聞き手は日本経済新聞出版 雨宮百子)

緒方憲太郎
 1980年兵庫県芦屋市生まれ。音声コンテンツ技術を手掛けるVoicy(ボイシー、東京・渋谷)の代表取締役最高経営責任者(CEO)。大阪大学基礎工学部、経済学部を卒業。その後、2006年に新日本監査法人に入社し、その後複数の監査法人を経て、2016年にVoicyを創業。地元放送局のアナウンサーを父に持ち、「語り口から人柄や温かみが伝わる」声を生かしたサービスの事業化に取り組んでいる。著書に『ボイステック革命』(日本経済新聞出版)。
佐久間宣行
 1975年生まれ。テレビ東京プロデューサーとして、『ゴッドタン』『あちこちオードリー』『ウレロ☆シリーズ』『ピラメキーノ』など多数の番組を手掛け、『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』では監督も務めた。2021年3月末にテレビ東京を退社。現在は、フリーのテレビプロデューサーとして活動。「オールナイトニッポン0」水曜日のパーソナリティーも担当している。著書に『普通のサラリーマン、ラジオパーソナリティになる ~佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)2019-2021~』。

ボイステック革命 GAFAも狙う新市場争奪戦

著者 : 緒方 憲太郎
出版 : 日本経済新聞出版
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