大ヒットからの大低迷 ポッキーが起死回生できた理由江崎グリコ「ポッキー」(下)

「ポッキー」は発売から55年を迎えた
「ポッキー」は発売から55年を迎えた

1966年に発売され、「棒状で軽やかに楽しめるチョコレート」という斬新なコンセプトで、消費者の心をつかんだ江崎グリコの「ポッキー」。ロングセラーになれた背景には、商品力を最大限に生かしたマーケティング戦略があった。しかし、2000年発売の「ムースポッキー」では売り切れ続出の後、反動減も経験。抜け出すきっかけは「原点回帰」と「接点づくり」だった。

世界で最も売れた「ポッキー」 50年超え人気の理由(上)

80年代後半に差し掛かると、ポッキーは「多様化」の時代を迎える。従来のシンプルな路線とは異なり、砕いたアーモンドを全体にあしらった「アーモンドクラッシュポッキー」(89年発売)、異なる2種類のチョコレートを織り重ねるようにコーティングした「マーブルポッキー」(91年発売)など、味わいも見た目も華やかな商品を次々と市場に投入していった。

背景にあったのは、消費者の好みの変化だ。マーケティング担当の槌田智子氏は説明する。

「当時はバブル経済の真っただ中。より多様で、高級感のあるものが求められる傾向にありました。さらに売り場も、これまで中心だった街の菓子店やスーパーマーケットに加え、コンビニエンスストアが本格的に人々の生活に浸透してきました。コンビニの売り場は、商品の入れ替わりのサイクルが早く、話題性や季節感を意識していく必要があります。原点である『赤箱』のポッキーにとどまらず、急速な時代の変化に取り残されないよう、目新しさをどんどん追求していきました」

売り場はメーカーの商品と消費者をつなぐ「接点」だ。この変化に敏感に対応した結果として、ポッキーは子供やその親だけでなく、幅広い年齢層に浸透していった。女性の小さなポーチに収まる大きさの「リトルポッキー」(86年発売)、通常よりもほろ苦いチョコレートを使った「メンズポッキー」(96年発売)といった商品は、「子供より大人にリーチしやすいコンビニの存在があったからこそ生まれた」と槌田氏は話す。

菓子メーカー各社が狭い棚を激しく奪い合う――。そんな時代の流れが生み出した象徴的商品といえるのが、一大ブームを巻き起こした「ムースポッキー」(2000年発売)だ。「もっとたくさんのチョコレートをまとったポッキーが食べたい」という消費者の要望を踏まえ、気泡入りのふんわりしたチョコレートが開発された。その斬新な食感が市場で受けた。売れ過ぎて生産が間に合わず、一時は販売休止に追い込まれたほどだ。

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