爆発的ヒット後に襲ってきた「揺り戻し」

手掛けた商品の大ヒットは、メーカーの日ごろの努力が報われる喜ばしい出来事だ。だが、店頭から一斉にその商品が消えるほどの反響となると、マーケティング担当者の頭には「揺り戻し」への懸念もよぎるものらしい。

「瞬発力の高いヒット商品は、短い期間でお客様を一気に増やします。ただ、そうした層は、日常的に購入し続けてくれている層と比較すると、熱しやすく冷めやすい」

ムースポッキーも、例外ではなかった。

江崎グリコのマーケティング担当の槌田智子氏

「初めの勢いが落ち着いて以降も、5年ほどは市場で一定のポジションを保っていたと記憶していますが、反動は大きかったです。ポッキーの歴史を振り返ると、何度か売り上げが横ばいで停滞した時期はあったものの、大きく落としたことはない。ただ、『ムースポッキー後』だけは別でした」

売り上げの下降傾向を食い止めるために立ち戻ったのが、ベーシックな「ポッキーらしさ」だった。次々と口に運びたくなる軽快な食感であること、チョコレートが主役の菓子であること、そして多くの人々の輪の真ん中にあってコミュニケーションを促進する存在であること――。そうした基本を改めて追求し、送り出した「ポッキー極細」(06年発売)は、プレッツェルを通常ポッキーの2分の1の細さにすることで、軽快さとチョコレートの食べごたえを両立。「ポッキーをよく知っているが、最近手に取っていなかった」という客層からも人気を博した。

「これは私見ですが、『瞬間的なヒットを記録する革新的な商品』と『初めは革新的だけれども、やがてベーシックになっていくロングセラー商品』を分けるのは、世代を超えて支持を持続させられるかという点だと思います。2世代、3世代と親しまれた商品は、『家族みんなで食べた』『幼いころ、親に買ってもらった』といった形で記憶に刻まれるため、若者にも『初めから自分の中にあったもの』として捉えてもらえるようになるからです」

「支持を持続するために大切なのは、『空気のような存在』になってしまわないよう、絶えずお客様との接点をつくり出していく戦略ではないでしょうか。トレンドを追うことはもちろん重要ですが、長い目で見たコミュニケーションが鍵になると思います」

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「空気」にならないための戦略