第1回のテーマは「103万円の壁」。アルバイトをしている大学生がよく耳にする言葉ですが、どんな仕組みなのか、注意点は何か、日本経済新聞社の田村正之編集委員が解説します。聞き手は「しゅんダイアリー」こと福田駿さんと、筑波大学大学院2年の松原咲樹さんです。
Q 「103万円の壁」とは何ですか?
一般的な社会人が気にしている「103万円の壁」は、103万円を超えると「所得税がかかり始める」というものです。しかし学生の場合は、「勤労学生控除」という大学生などが使える控除があるので、さらに27万円が控除になります。つまり実際には130万円まで所得税がかからないということになります。
Q じゃあ大学生は103万円を超えてバリバリ働いても大丈夫?
そういうことでもありません。税金や社会保険を考える場合に大切なのは、自分だけではなく、親の負担も一緒に考えることです。皆さんを扶養している親は、「扶養控除」によって税金が安くなっています。例えば、19~23歳未満の子供がいる場合なら、「特定扶養控除」と言って所得税なら63万円(住民税は45万円)が親の収入から控除対象になります。もしも皆さんの給与収入が103万円を超えると、この控除を親が受けられなくなってしまいます。
税金は「累進性」と言って、収入の高い人ほど税率が上がる仕組みになっています。例えば、所得税20%と住民税10%、合わせて30%くらいの税率の親なら、63万円の控除がなくなるとその分課税対象が増え、年間で17万円くらいの親の税負担が増えることになります。103万円から104万円に学生の収入が1万円増えても、親の税負担が17万円も増えたら家庭全体ではマイナス。大学生であっても103万円の壁は気にしたほうがいい、ということになります。
Q 103万円を超えてバリバリ働きたい学生もいます。何かいい対処法はありますか?
学生が103万円を超えて働くと、124万円で「住民税」、130万円を超えると「所得税」がかかり始めます。しかも、130万円以上になると別途、公的健康保険料を考える必要がでます。親が会社員なら子供の健康保険料は親の会社の健康保険での扶養対象になっていますが、子の収入が130万円以上になると親の扶養から外れます。子が週30時間未満しか働いていない場合、原則的に子の勤務先の健康保険の加入対象にならないので、世帯主である親が別途、子の国民健康保険料を払わなければならなくなります。
学生で130万円以上働くなら、勤務時間を週30時間以上にすることで、勤務先の会社の健康保険に入るようにしましょう。そうすると、健康保険料は会社と折半なので、親が国民健康保険料を支払うのに比べて負担を低く抑えられます。
「103万円の壁」については自分だけでなく、親の負担もあわせて考えましょう。