330ポイント ホッキョクグマの繁殖随一

ホッキョクグマの繁殖に何度も成功して9頭が成長した。「繁殖実績は国内随一」(佐渡友陽一さん)。屋外ではプール以外は地面のほとんどを芝や土にしている。高齢の個体には状態に合わせて段差を低くしたり、肉をミンチにして与えたりして配慮している。
2019年3月に新設したゾウ舎では、冬に備えて屋内に大型の水浴び場を設置。屋内外とも砂の地面で起伏をつけ、運動量が増えるようにした。地元の希少種保全にも取り組んでおり、外来種によって減少するニホンザリガニの繁殖技術確立などに「地道に取り組んでいる」(村田さん)。
(1)札幌市(2)https://www.city.sapporo.jp/zoo/
330ポイント 地元の希少種保全

北海道のタンチョウを受け入れ、生息地を区切った保護増殖センターで繁殖に成功した。現在は主に近くにある丹頂鶴自然公園が繁殖を担う。動物園では来園者向けの展示や、事故などでけがを負った個体の治療や世話をしている。放鳥などもしており「継続的な保護増殖活動をしている」と若生謙二さん。
シマフクロウは1995年に世界で初めて、飼育下での繁殖に成功。当初はオス・メスの識別もできなかったが、これまでに19羽が巣立った。小宮さんは「地元の絶滅危惧種の保全に尽力している」と評価する。
(1)北海道釧路市(2)https://www.city.kushiro.lg.jp/zoo/
330ポイント タッチパネルで認知課題
絶滅危惧種のゴリラの飼育・繁殖で実績がある。人が哺育したゴリラの赤ちゃんを母親の元に戻し、無事に成長した。ロープが空中をつたう空間で4頭が暮らす。ゴリラやチンパンジーなどにはタッチパネルを用いた認知課題を与えて能力を引き出している。「繁殖やエンリッチメントに熱心」(外平さん)
研究員が常勤する「生き物・学び・研究センター」は一般向けに、動物に関して専門的な解説をする役割などを担う。本の出版も盛んで「研究活動をけん引している」(佐渡友さん)。
(1)京都市(2)https://www5.city.kyoto.jp/zoo/
野生の姿回復へ 資金不足など壁
動物園の運営で、飼育する動物が野生本来の姿を取り戻し、できるだけのびのびと暮らせるようにすることを重視する考えが近年強まっている。動物福祉の観点から飼育環境の向上を目指す「エンリッチメント」とよばれる考え方で、施設や環境の整備を進める動物園が徐々に増えてきた。
一方で動物園は、生態の研究や種の保存のための繁殖の役割も担う。だがペアリングのため離れた施設へ移動させれば環境の変化で過大なストレスを抱えたり、繁殖で個体数が増えると飼育スペースは狭くなり、劣悪な環境下に置かれたりすることがある。動物園など園館アドバイザーのつまきさんは「広大な敷地の中で1施設につき1種の動物のみの繁殖に集中するなど、動物側に立った思い切った改革も考えるべきだ」と話す。
ただ施設を充実させたくても動物園は予算やスペースに制約があり、日々動物の世話をする職員自身がもどかしさを感じているのが実態のようだ。施設の中にはクラウドファンディングなどで活路を見いだそうとするところも出てきている。
■ランキングの見方 動物園名。数字は専門家の評価を点数化。(1)所在地(2)URL。写真は1位が鈴木健撮影。4位は広島市安佐動物公園所蔵、6位と7位は(公財)東京動物園協会提供、ほかは動物園提供。
■調査の方法 動物園に詳しい専門家に取材し、動物福祉を重視しながら希少種の繁殖などに取り組んでいる施設を33カ所選定。そのうえで専門家11人が「生態や動物の個性に配慮しながら希少種の研究・繁殖に取り組んでいる」などの観点から順位を付け、編集部で集計した。現在または過去に勤務経験のある動物園は評価対象から除外してもらい、審査の公平性を確保した。
■今週の専門家 ▽伊谷原一(京都大学野生動物研究センター教授)▽楠田哲士(岐阜大学応用生物科学部准教授)▽小宮輝之(上野動物園元園長)▽佐渡友陽一(帝京科学大学アニマルサイエンス学科講師)▽外平友佳理(外平動物総合事務所代表)▽並木美砂子(帝京科学大学アニマルサイエンス学科教授)▽林良博(国立科学博物館顧問)▽羽山伸一(日本獣医生命科学大学獣医学部教授)▽村田浩一(日本大学生物資源科学部特任教授)▽森由民(動物園ライター)▽若生謙二(大阪芸術大学教授)=五十音順、敬称略
(清水玲男が担当しました)
[NIKKEIプラス1 2021年8月7日付]