実力派料理家の技生きる本格肉まん 東京・四谷三丁目

2021/8/16
人気が高い「焼き小籠包」
人気が高い「焼き小籠包」

2021年5月、東京・四谷三丁目にオープンした「本格肉まん 香包(シャンパオ)」(以下「香包」)。

東京メトロ丸ノ内線・四谷三丁目駅を出てすぐのところにある消防博物館の前を、新宿方面に1~2分歩いた場所にある。

「香包」の点心をプロデュースしているのは、中国の新疆ウイグル自治区出身の料理家、小薇(シャウウェイ)さん。マニアックな中国料理が大人気だった「Rose Shanghai Tokyo(ローズ シャンハイ トーキョー)」(新宿御苑前・現在は閉店)の元オーナーシェフで、2019年に中国・大連で開かれた世界最大規模の中国料理コンテスト「魯花カップ」で華々しい成績を残すなど、その実力が広く認められている料理家だ。

20年6月20日にオープンした「小薇点心(シャウウェイテンシン)」(東京・中野富士見町)はそんな小薇さんがコロナ禍を機に、「今求められているのはマニアックで華美な中国料理ではなく、家庭でいつも食べられる日常的な中国料理ではないか」と考えてオープンした店だ。

自宅に持ち帰っても味わえる料理を目指して得意な点心にさらに磨きをかけ、まるで小籠包(ショウロンポウ)のように汁があふれるのに、皮には一切しみない独自の「爆汁ポークまん」を完成させ、大人気となった。

「香包」オーナーの谷口正俊さんは以前から仕事を通じて小薇さんと親交があり、個人的にも小薇さんの料理の大ファン。オープンのきっかけは、独立以前に働いていた会社の元同僚たちの窮状を知ったことだった。

「みんな真面目でいい人ばかりなのに、中高年になった今になって、コロナの影響で働く場所を失って困っていました。そんな彼らに、もう一度頑張るチャンスを与えられたらと思い、小薇さんに『小薇点心』のテイクアウト専門店を出したいと相談したのです」(谷口さん)

「香包」は東京メトロ丸ノ内線・四谷三丁目駅のすぐ近くにある

谷口さんの思いに感動した小薇さんは、新店オープンに全面的に協力。研究を重ねて生み出した点心の技を、店長の永田貴宏さんと女性スタッフたちに約半年間かけ、惜しげもなく伝授した。

スタッフ全員が料理に関してはまったくの素人だったため、最初は大変だったが、約半年たった今では全員が、小薇さんも絶賛する腕前になっている。

現在、「小薇点心」はレストラン営業と冷凍点心の宅配を行っているが、「本格肉まん 香包」はテイクアウト専門。目の前で作りたての点心4種類を、できたての一番おいしい状態で持ち帰り、味わうことができる。

仕上げと販売を担当している店長の永田さん。ひっきりなしに訪れる客への落ち着いたていねいな対応に、大手外食チェーンで販売部長を務めていた前職の名残が感じられる。