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『全裸監督2』山田孝之 いいもの作ろうと全員が1つに

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NIKKEI STYLE

日経エンタテインメント!

動画配信サービスから生まれた大ヒットとなった『全裸監督』。2019年の第1作に続き、完結編とも言える続編『全裸監督2』が配信中だ。アダルトビデオ界の革命児・村西とおるを演じた山田孝之、村西のエロスにほれ込んだ川田研二役の玉山鉄二、村西の元相棒・荒井トシを演じた満島真之介に作品の魅力、シーズン2の見どころ、そしてそれぞれの動画配信の楽しみ方を聞いた。

(左から)山田孝之:1983年生まれ、鹿児島県出身。99年に俳優デビュー。近作に『新解釈・三國志』(20)、『はるヲうるひと』(21)。また、映画のプロデューサー業に進出、21年には長編映画初監督作品『ゾッキ』が公開された。 玉山鉄二:1980年生まれ、京都府出身。99年に俳優デビュー。ドラマ「離婚弁護士」シリーズ、「BOSS」シリーズ。NHK連続テレビ小説『マッサン』で主演を務める。映画『手紙』(06)などで山田孝之と共演。 満島真之介:1989年生まれ、沖縄県出身。10年に俳優デビュー。NHK大河ドラマ『青天を衝け』、映画『キングダム』(19)、『ゾッキ』(21)など多数。NHK Eテレ『テレビでハングル講座』の生徒役として出演中。

コロナ禍で急伸する動画配信業界の中にあって、独自のセレクション、ラインアップに注力し、オリジナルコンテンツを次々と製作しているNetflix。今ではNetflix配給の映画がアカデミー賞ほか世界各国の映画祭でノミネートされ、ドラマもエミー賞の常連に。世界のエンタテインメント界に大きな影響を与える存在となり、2020年末には全世界で会員数が2億人を突破している。

日本でのサービス開始は15年だったが、その知名度を大きく広げるきっかけになったのが、『全裸監督』だろう。昭和から平成のバブル期に活躍したアダルトビデオ界の革命児・村西とおるの半生をドラマ化。1話あたりに破格の制作費をかけ、時代を見事に再現したセット、主演・山田孝之をはじめとするキャスト陣の渾身の演技が話題を集め、19年8月に全世界に配信されるや一大旋風を巻き起こす。日本国内のNetflix会員数300万人突破に大きく貢献することになった。

――シーズン1は19年、Netflixの日本国内視聴者数1位を記録するヒットになり、社会現象を巻き起こしましたね。

山田 現場の人間は、誰もこんな騒ぎになるなんて思っていなかったと思いますよ。題材的には97%の人には相当イヤなものだと受け取られて、3%ぐらいの人に刺さる作品になるんじゃないかと思っていた。そしたら、90%以上の人に面白がってもらえた(笑)。

満島 これには驚きました。

日本の作品が海外でどう映るのか

――実際の現場はどんな雰囲気でしたか。

玉山 それぞれアイデアや意見を持ち寄って、みんなで作っている感じが本当にたくさんありました。

満島 そういう意味では、玉山さんがシーズン1の初日のファーストシーンで、川田の変態性を発揮されたところから(笑)。

玉山 台本とは違うんですけど、村西のエロい演出を目の前で見たらこうなるでしょと思ったので(シーズン1第2話)。

山田 ハハハハハ。

玉山 この現場では自分の芝居に限らず、たとえば満島クンが演じにくそうな雰囲気だったら、「ここはこうしたらいいんじゃない?」と提案してみたり。他の現場だったら、人のテリトリーに他の役者が入り込むというのは禁じ手だと思うんですけど、この現場に限ってはそういう感じはなかったね。

山田 いいものを作ろうと自然と全員が1つになっていましたね。実は僕が『全裸監督』への出演を決めたのは、Netflixで世界に配信ということで、自分たちの作品が受け入れられるか確認してみたかったということがありました。日本の題材、日本のスタッフ&キャストで、日本語で作られたものが世界の人にはどう映るのか。

シーズン1の配信後、海外でも反響があって。実際、ハワイやシンガポールに行ったとき、現地の方が目をキラキラさせて、「アー・ユー・ネットフリックス?」とか、"シーズン2を期待しているよ"と言ってくる。それで、楽しんでもらえたんだなと思いました。

転落する姿を演じる

そして現在、『全裸監督シーズン2』の配信がスタートしている。前作に続き総監督を務めた武正晴監督は「シーズン1は映画で言えば前編のようなもの。折り返してからのシーズン2が作り手としては本当に描きたい部分だった」と語る。

コロナ禍のため、一度は撮影中止となるが、Netflixのガイドラインを指標に、日本独自の対策基準を決めて撮影を再開。1000人規模のエキストラを動員してのロケ撮影も行うなど、スケールの大きさはシーズン1を超える。

――シーズン2の見どころはどこになりますか?

山田 本当にスタッフもキャストもやってることがすごいので。後は信じて、僕はアダルトビデオ業界のトップになった村西が、調子に乗りすぎたところから始めてとことん落ちていく姿を見せようと思いました。

満島 僕が演じるトシは村西たちに出会ったからこそ生まれた世界をすごく大切にしていた。それが、シーズン2では村西も、ヤクザに身を持ち崩したトシも落ちていく。今シーズンは共演シーンがほとんどないんですが、トシが村西たちを思う愛情や、愛情が強すぎて起こした行動への後悔も生まれてくる。ヤクザになったからと眉間にしわを寄せてがなり声で演じるのではなく、愛の人間トシを大事に演じました。

玉山 シーズン1を評価された声を聞いたとき、身の引き締まる思いがしました。ただ僕個人として、クリエーティブの世界って頑張ったらとか、気持ちを込めたからいい作品になるというのは少し違うと思っているんです。

僕がこの作品で守らなければいけないものは川田のキャラクター。ただ自分が興奮したいだけ、少しでもエロいものに出合いたいだけ。それだけを託して村西についてったのに、村西と別れてしまい、自分では興奮できなくなっていろんなことを試したり……。純粋にエロの人をやりきりました。

山田・満島 ハハハハハ。

倍速で情報を詰め込む

――みなさんは動画配信をどんな風に楽しんでいますか?

山田 僕はNetflixをはじめ大手からほぼ網羅しています。

玉山 僕もそうですけど、家ではAppleTVにつないで見たり、移動中や風呂に入っている時はスマホで。それに、ドラマ以外はほぼ倍速で見ます。バラエティ番組もスポーツも。倍速にしたら同じ時間で2本見られる。

山田 どんだけ情報入れるんだ(笑)。でも場所と時間を選ばないことは配信の魅力ですよね。家のテレビで見ていたコンテンツの続きをスマホで見られたり。

──それによってドラマの作り方は変わりますか?

山田 現場は何も変わらないと思いますよ。伝え方が変わるとしたら舞台くらいじゃないですか。距離があるから。

玉山 ニュースや情報番組のほうが影響があるかもしれませんね。

――最近、配信で見て面白かったという作品は?

山田 ちょっと前ですけど、『コブラ会』(Netflix)はハマりました。昔の名作(80年代の映画『ベスト・キッド』)を年取った本人たちがそのまま演じるなんて、夢があるなって。

玉山 僕はほとんどドキュメンタリー。Netflixのものはレベルが高くて、お金もかかってる。ドービング問題を描いた『イカロス』は、これがきっかけでロシアのドーピング規制ができたし。『猫イジメに断固NO!:虐待動画の犯人を追え』というのもすごい作品です。

満島 僕は、韓国語講座(NHK Eテレ『テレビでハングル講座』)の番組に出演しているので、見るといったら韓国もの。U-NEXTで『お見合い喫茶店』というバラエティがあるんですが、一般の人たちがお見合いをするんです。初対面から始まる日常的な会話をするので、海外に行けない今、配信で会話の勉強ができるんです。

玉山 そんな使い方もあるのか。確かに配信を上手に使うことで、効率よくさっと情報を取れるようになっているとは感じますね。

Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督シーズン2』

 本橋信宏原作の『全裸監督 村西とおる伝』をベースにアダルトビデオ業界の革命児・村西とおると仲間たちの狂乱のドラマを描いた完結編。山田孝之演じる村西を支える黒木香役の森田望智他、"村西軍団"を演じる柄本時生、伊藤沙莉らレギュラー陣も再結集。新キャストに恒松祐里、吉田栄作、伊原剛志、宮沢りえほか。前作に続き、総監督は武正晴が務めている。

 あらすじ:アダルトビデオ業界の頂点に立った村西は「空からエロを降らせる」という夢のため衛星放送事業への進出を目論む。だが資金繰りをめぐり、川田と決別。ヤクザの世界に身を落としたトシは村西に複雑な感情を抱く。Netflixにて全世界独占配信中

(ライター 前田かおり)

[日経エンタテインメント! 2021年8月号の記事を再構成]

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