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ミニ水牛、サル食うワシ 希少固有種の宝庫フィリピン

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ナショナルジオグラフィック日本版

西太平洋に浮かぶ島の森には、異世界からやって来たような生きものが生息している。フィリピンメガネザルだ。

コウモリのような耳や吸盤のような指、巨大な金色の目は、まるでSF映画に出てくる生物のよう。しかし実際には、フィリピンメガネザルは霊長類で、人間の遠い親戚だ。

「本当に、木から木へとジャンプする小さなエイリアンみたいです」と話すのは、フィリピンを拠点に活動する写真家で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(協会が支援する研究者)でもあるガブ・メヒア氏だ。

フィリピンには7600を超える島々があり、驚くほど多種多様な生物たちの揺りかごとなっている。「生物の多様性に関する条約」によると、地球の植物種の5%がフィリピンに生育している。しかも、フィリピンで見られる生物の半分近くが固有種だ。

「フィリピンのどこへ行っても、自然に囲まれることでしょう」とメヒア氏は話す。「それぞれの島に、異なる種が生息しています」

島の生活は、種分化(1つの種が2つ以上の系統に分岐すること)を促す傾向がある。だが、この生態学上の楽園も脅威にさらされている。乱獲や、生息地の喪失および分断の結果、700種を超える在来種が絶滅の危機にひんしていると考えられている。さらに、今回のコロナ禍で、事態はより一層悪化しているかもしれない。保護団体によると、密漁や希少植物の違法採取が増加しているという。

一方、良いニュースもある。近年、フィリピンでは、こうした生物やその生息地の多くを保護する取り組みが急増している。豊かな生物多様性を誇る国立公園の観光は、持続可能な方法で行えば、こうした取り組みの支援につながる。地元の保護団体にお金が流れ、パトロールや土地の購入、さらには飼育下にある希少種の繁殖のための資金になるからだ。

コロナ禍で旅行はためらわれるものの、安全に旅ができるようになったら、生物保護に関心のある旅行者は、以下に挙げるフィリピンの4つの国立公園を訪れるといいかもしれない。ここでしか見られない、とても希少でカリスマ的な野生動物4種を見ることができる。

メガネザル、超音波でコミュニケーション

フィリピンメガネザル(Carlito syrichta)は「世界で2番目に小さい霊長類」と言われ、その大きさは手のひらに乗るほど。西洋の科学者に知られるようになったのは、1894年に初めて学術的に記載されてからだ。しかしあることが、最近まで謎のままだった。

研究者がフィリピンメガネザルを抱き上げると、遠吠ええするかのように口を大きく開けているのに、声は出ていないことがあった。耳をつんざく金切り声や、鳥の歌のような柔らかなさえずりなど、耳で聞こえる発声をすることはすでに知られていたため、この行動は特に奇妙だと考えられた。

 しかしこの謎は2012年に解けた。フィリピンメガネザルが、実際に超音波(人間の可聴域を超えた高い周波数の音)でコミュニケーションしていることが明らかになったのだ。結局のところ、ストレスに起因するこの行動は、無音ではなかった。それは、犬笛のようなものだったのだ。

観光客でも、どこを探すべきかさえ知っていれば、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで近危急種(near threatened)に指定されている、夜行性のフィリピンメガネザルを見ることができる。

「夜は狩りに出かけますが、その後同じ木に戻ってくるのです」とメヒア氏は話す。

悲しいかな、この習性が、フィリピンメガネザルを危険にさらしている。食用やペット取引のために捕まえようとする人たちも、彼らをかなり容易に見つけることができるからだ。

フィリピンメガネザルの邪魔をすることなく、彼らの姿を見るために重要なのは、正式なガイドを予約することだ。メヒア氏は、ボホール島でフィリピンメガネザル・野生生物保護区を運営するフィリピンメガネザル財団を推奨している。

タマラオ、力は強いが、体は小さい

フィリピン人は、タマラオ(Bubalus mindorensis)が地球上で最も人気が高く、最も愛らしい動物の1つだと考えている。だが、フィリピン以外では、ほとんどの人は、力は強いが体は小さいこのスイギュウについて聞いたことさえないだろう。

タマラオは、ウシ科のフィリピンの在来種で、ミンドロ島にのみ生息する。光沢のある黒毛、後ろ向きに生えた角は見事だが、体高は幼稚園児ほどしかない。だが、その背の低さにだまされてはいけない。気性が荒いことで有名で、侵入者に対してすぐに角を振り回す。

「本物の野生動物なのです」とメヒア氏は話す。「もし彼らに木に追い詰められたら、やるべきことは横にジャンプすることだと、レンジャーに言われたことがあります。タマラオは突進してくるからです」

タマラオの肉はいまだに一部のハンターにとっては価値が高く、また、ウシや他の家畜からの病気によっても大打撃を受けた。野生に残る個体はわずか600頭のみで、IUCNのレッドリストでは近絶滅種(critically endangered)に指定されている。

「それでも、フィリピンを訪れれば、イグリット・バコ山国立公園で野生のタマラオを見ることができます」と、タマラオ保護プログラムのコーディネーター、ニール・アンソニー・デル・ムンド氏は話す。

もちろん、タマラオは安全な距離からのみ観察することが望ましい。

ミンドロワニ、世界一レアなワニ

ミンドロワニ(Crocodylus mindorensis)は世界で最も希少なワニだが、北シエラ・マドレ自然公園を訪れれば、かなりの確率で、野生に生きる姿を見ることができる。1つだけ忘れてはいけないものがある。ヘッドランプだ。

「自然の湖のほとりに観察塔を建設しました。夜間ならほぼ確実にミンドロワニが見られます」と、非営利の保護団体マブワヤ財団のCEOマーリン・ファン・ウエールド氏は話す。

タマラオと同様、ミンドロワニは小型で、成長しても体長約1.5メートル、体重14キロほどにしかならない。好きな食べ物はカタツムリだ。

彼らの好物には、地元の米農家にとって脅威となる侵略的外来種のスクミリンゴガイも含まれる、とファン・ウエールド氏は言う。また作物に害を及ぼす、外来種のネズミも食べる。

「つまり、固有種であるミンドロワニは、水田で作物にとって有害な外来種を食べてその数を抑えることで、フィリピンの農家を助けているのです」と同氏は話す。

地球に残るおとなのミンドロワニは92~137頭だけで、近絶滅種(critically endangered)に指定されている。だが残念ながら、ミンドロワニは家畜や人間に対する脅威だと見なされて、人に殺されてしまうケースもある。

フィリピンワシ、王者の風格

乳白色の毛が生えた下腹部や、逆立てると非常に特徴的な長い冠羽など、フィリピンワシ(Pithecophaga jefferyi)は王者の風格を漂わせる。「翼を広げれば、誰もがその影に覆われます」とメヒア氏は話す。「まさに猛禽(もうきん)類の王と女王なのです」。フィリピンの国鳥に指定されているのも不思議ではない。

サルを食べることから、サルクイワシとも呼ばれる。野生には成鳥のつがいは400組しか残っておらず、見つけるのは難しい。だが、飼育下の個体はまだ見ることができる。

「1970年代に保護プログラムが開始されてから、86羽を救ってきました」とフィリピンワシ財団の研究・保護ディレクター、ジェイソン・イバネス氏は話す。

保護の理由には、地元の人々の罠(わな)や銃による負傷も含まれるが、フィリピンワシを苦しめる主な要因は森林破壊だ。1組のつがいは、40~110平方キロの行動圏と営巣用の高い木を必要とする。一方、フィリピンの森で手付かずのまま残るのはわずか35%だけだ。

また現在、フィリピンワシ財団は33羽のフィリピンワシを保護している。繁殖の試みを通じて、新たなひなを野生に放したいとスタッフは考えている。

フィリピンワシは、かつては南米のオウギワシやアフリカのカンムリクマタカなど、世界中で見られる他の大型のワシの近縁種だと考えられていた。しかしその後のDNA研究で、そうした大型のワシとは遠縁であることが明らかになった。つまり、フィリピンワシは独自のカテゴリーに分類されるのだ。

「フィリピンワシは、進化の過程で生み出された唯一無二の生物なのです」とイバネス氏は話す。

独自性というものが、この雄大なフィリピン諸島全域に響き渡るテーマのようだ。

「フィリピンは、本当に島と山と湿地でできているのです」とメヒア氏は語る。「見に行くのが砂浜に生息するオオトカゲだろうと、森に住むメガネザルだろうと、フィリピンが生物多様性の豊かな『メガ・ダイバーシティ国家』と呼ばれるゆえんを目の当たりにする心の準備をしておいてください」

(文 JASON BITTEL、訳 牧野建志、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年7月19日付]

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