蒼太 うーん、そうなると何歳までは頑張って続けて、それを超えたら方向転換をするとか考えておく必要があるってことでしょうか。または優先順位を決めて、やりたいことを続けるなら、他のことは諦めるとか。
安藤先生 単純に考えると、できること、何かしらスキルがあるということは仕事をする上で最低限の条件となります。できることのうちで、やりたいことを優先するか、それとも求められることを優先するかというのが多くの人が直面する選択肢でしょう。
ただし今はできなくても、続けているうちにできるようになるという可能性もあるわけです。社会的に必要とされる仕事に就きたい。しかし現時点では例えば必要な資格がないので、勉強していつかはその仕事に就くといったパターンもありますね。
蒼太 少しずつですが分かってきた気がします。
これから努力するポイントを見つけるのも自己分析
安藤先生 さて、南さんの3つの円に戻って確認しておきましょう。そこに共通する要素はあるでしょうか?
蒼太 えーと、僕の場合に共通するキーワードは、人、チーム、そして協力でしょうか。でも、これだけでは、自分がどの業界や企業で働けばいいのか、ちょっと絞りきれないですよね。
安藤先生 そうでしょうか? 特定の業種までは決められなくても、方向性はわかるはずです。例えば、希望する職種は、研究職や社内事務職ではなく、営業職が良さそうだなとか。チームで仕事をすることが良さそうだなとか。
蒼太 なるほど。確かに、そのくらいの決め方でよければ少し方向性がみえてきたような気がします。でも、まだまだ「自分のやりたいこと」の深堀りが足りないような気がするし、「自分にできること」も少なすぎて自信をもってこの仕事をしたいと決めきれないですよね。
安藤先生 そうかもしれませんね。しかし南さんにはまだ時間があります。
先ほど考えた、これから自分がやるべきことを実行してみましょう。その経験の中で「自分にできること」は増えていくはずですし、「自分のやりたいこと」も同時にみえてくるはずです。
蒼太 ひとまず僕に必要なのは、就活よりも前に自分がどんな人間になりたいのかをよく考えることのようです。
それと同時にできることを増やしていきたいと思います。そのためにも先ほど(前回記事参照)考えた(1)環境政策ゼミでの取り組み、(2)野球、そして(3)アルバイトについてのチャレンジを実行に移していきます。
安藤先生 はい。それでは今日はこのくらいにしましょうか。
蒼太 ありがとうございました。就活、なんだかできそうな気がしてきました。また相談させてください!
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ここで安藤先生と蒼太くんの面談は終了です。ふたりの会話から何かを得ることはできたでしょうか? 次回は、就職活動本番を控え企業選びに悩む学生が登場します。
日本大学経済学部教授。2004年東京大学博士(経済学)。政策研究大学院大学助教授、日本大学大学院総合科学研究科准教授などを経て、18年より現職。専門は契約理論、労働経済学、法と経済学。厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会で公益代表委員などを務める。著書に「これだけは知っておきたい 働き方の教科書」(ちくま新書)など。