2021/8/11

3つの円の中に書いた条件を見て、うまく重なる部分はありますか? 仮に、やりたい・できる・求められるという3条件を完全に満たす仕事を見つけることができれば、まさに天職と言っていいでしょう。しかし現実には、すべてを同時に満たすのは難しいわけです。

3つの条件を完全に満たした仕事は天職と言えそうだが…

蒼太 うーん、天職を見つけるのは難しいということですか……。

3つの円と仕事の選び方

安藤先生 はい、残念ですが。例えば、やりたいことがあっても実際に上手くできなければ仕事になりません。ミュージシャンになりたいけれども、歌があまり得意ではなく、楽器も弾けなければ、仕事にすることはできないわけです。

また、やりたいしできることであっても、社会から求められるものでなければ収入を得る仕事としては成立しません。例えば、逆立ちをして歩くのがとても上手な人がいて、それを仕事にしたいと思っていても、誰もその芸に対してお金を払わなければ生活できませんよね。

蒼太 それはまあ、そうですね。

安藤先生 そして、自分にできることであって社会から求められる仕事であっても、本当はあまりやりたくない仕事というケースもあります。この場合には、仕事として成立するわけですが、満足度は高くないと思われます。

極端な例を考えてみましょう。現在、米国で活躍している大リーグ、エンゼルスの大谷翔平選手は野球が得意でプロチームから求められる才能なわけです。しかし仮に、大谷選手が実は野球よりもサッカーが好きだったとしたら、どうでしょうか。

蒼太 大谷選手はリトルリーグ時代から有名で、野球が本当に好きだと思いますよ?

安藤先生 これは「仮に」の話です。野球は上手だし他人からはその仕事で活躍することを求められている。しかし好きなことは別にあったとして、そちらを仕事にした場合は成功するとは限らない。このような場合には、自分のやりたいことを選ぶか、それとも求められることを選ぶかといった選択を迫られることになります。

蒼太 確かにそうですね。プロスポーツ選手で、本当はやりたかった別の分野に転向してみたけれど、あまり活躍できなかったというケースはありますからね。

安藤先生 少し極端な例で考えましたが企業への就職でもやりたいことと求められることのズレはよくあることです。例えば、外回りの営業の仕事は、キツそうだからあまりやりたくないけど、求人はあるし、頑張ればできる仕事だとします。しかし本当にやりたいのは商品開発とか広報とか、クリエーティブっぽい仕事だっていうのはありそうな話ですよね。しかし、そんなカッコイイ仕事は求人が少ないし、あってもなかなか採用されないわけです。

蒼太 やりたいことと求められることがズレていたら、どうすればいいんでしょうか?

仕事を選ぶ際の優先順位とは

安藤先生 自分にやりたいことがあったとして、それが社会から求められているかどうかを見極めるのは難しい問題ですね。運の要素もありますし。

例えば、売れないお笑い芸人として活動している人がいたとします。そして本人は「これは絶対に面白いネタだ。いつか時代が追いついてくる」と信じていたとします。このときアルバイトをしながらでも舞台に立ち続けるという選択肢があるでしょう。ただし生活は苦しいかもしれない。一方で、やりたい芸人としての仕事は諦めて企業で働いた場合には生活は安定するかもしれません。しかし「あのとき続けていれば」と後悔することもあるでしょう。頑張って続けていれば、いつかは売れるかもしれないし、売れないかもしれない。それでも続けるかどうか。こればかりは本人が決めることです。

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