要点3 遠すぎず近すぎないバランス力が肝心

リーダーには、メンバーを役割でなくひとりの人間として見る、つまり「パーソナイズ」する姿勢が必要となる。これは、良い労働条件や多額の報酬を与えることや、相手と特別親しくなることとは異なるもの。大切なのは「あなたについてもっとよく知りたい」と思っていることを、常に言葉と行動で示すことだ。それによって相手の支援が必要なとき、また時に相手の考えに賛成できないときでも、互いに率直に意見を伝えられるような心理的安全性がつくられる。距離を取りすぎて堅苦しくなってもいけないし、プライベートに踏み込みすぎてもいけない。「謙虚なリーダーシップ」とは、この両極の間で巧みにバランスを取るスキルのことだ。

要点4 「私だけが」から「私たちが共に」へ

新時代のリーダーシップは、上から下へではなく、組織的に生まれる。組織が巨大化、多様化しているなかでは「私だけが」という思い込みのリーダーシップより、「私たちが共に」という協働のリーダーシップが輝きを放つ。最終的に誰もが自身の領域のリーダーになれば、全員の責任感が高まる上、いつでも互いに情報や支援を求めたり、共通の目標を確認し合ったりするようになる。謙虚なリーダーが謙虚なリーダーシップを組織全体に広めることで、さまざまなことがうまく進み始めるはずだ。

(嶌陽子)

[日経ウーマン 2021年8月号の記事を再構成]

謙虚なリーダーシップ――1人のリーダーに依存しない組織をつくる

著者 : エドガー・H・シャイン
出版 : 英治出版
価格 : 1,980 円(税込み)