起業家のM&Aを格安仲介 6億円大損を失敗の糧に

M&AクラウドCEOの及川さん
M&AクラウドCEOの及川さん

ベンチャー企業を対象にした企業買収や売却の仲介を手掛けるM&Aクラウド(東京・新宿)の最高経営責任者(CEO)の及川厚博さん(32)。大学在学中に創業したソフト会社を実際の企業価値より約6億円安く売却し、その失敗を糧に2015年に同社を設立した。インターネットを活用してM&A(合併・買収)を格安で仲介し、「起業家の転職」を支援するという独自のビジネスモデルを構築した。及川さんのキャリア人生に迫った。

自社売却は2億円弱で大損 他社は30億円も

「バカだった。大損したと後で気付いた」。及川さんはこう話す。東洋大学在学中の11年に仲間2人とアプリ開発会社のマクロパスを設立。ベトナムのダナンを拠点としたソフト受託事業で業績を伸ばした。しかし、「ソフトの受託よりも医療関連の新規事業をやりたい」と会社売却を思いついた。

起業して3年。社員は35人で、売上高は約4億円、経常利益は4000万円と業績は好調だった。企業の売却経験があるスタートアップ業界の先輩から相場を聞くと、「営業利益の4倍ぐらい」と即答。15年末に2億円弱で売却したのだが、その直後に浅はかな判断だったと思い知らされる。

同じ時期に代表者の年齢も業績もほぼ同じソフト会社は大手IT(情報技術)企業に約30億円で自社を売却。さらに売上高が約3億円で、しかも赤字だったソフト受託会社は8億円で売却された。「少なくとも6億円は安く売却してしまった」とあぜんとした。

もちろん先輩の助言だけを頼りに売却したのではない。もともと学生時代には公認会計士の勉強もし、M&A仲介のアドバイサーとも相談していた。着手金は100万円。しかし、このアドバイザーはIT業界には疎かった。買収先リストに目ぼしい会社はなく、あまり検討せずにマクロパスの取引先のに売却した。

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