
こんなに良い肉を使えるワケとは
工夫は、自由に使えるソースにも表れている。「いきなり!ステーキ」は、カレーソースを含めて、4種ほどのソースを用意していたが、「みんなのグリル」は、「和風おろしステーキソース」と「オニオンステーキソース」の2種のみ。「いきなり!ステーキ」時代の名残か、ワサビは用意されている。
この2種のソースがなかなか良い。「和風おろしステーキソース」は、少し甘めのご飯にぴったりな味。そのままご飯にかけても良い感じだ。「オニオンステーキソース」は、ややさっぱり。どちらも万人ウケする味わいだ。ワサビを使って「味変」するのも楽しい。
ニトリらしさを感じるのは、容器がいずれも耐熱容器の有名ブランド「HARIO」製だったこと。ニトリが飲食店を経営する理由として、ニトリ店内で販売している製品のショーケースとしての役割も持っているという話を聞いたことがある。それを実践しているのだろう。

料理は単品で、お替わり自由のライスバー、サラダバー、スープバーの3点セットをつけると350円。ランチタイムは1回盛りきりで、280円となる。これは「いきなり!ステーキ」と同じシステムだ。「オリジナルカレー」(300円)を追加できるのは客単価アップの策だろうし、多くの野菜トッピングが可能な「いきなり!ステーキ」と違って、追加野菜を「ブロッコリー」と「キャベツ」(共に100円)に絞ったのは、勉強の成果で、オペレーションを簡素化しようとしたからだろう。
「いきなり!ステーキ」からの転換を進めながら、外食事業を拡大しようとしているニトリ。正直「みんなのダイニング」の商品は、かなり良い。師匠の「いきなり!ステーキ」より、上を行くのではないか。唯一、「チキングラタン」は、まだまだかなと思う。想定ライバルは、「サイゼリヤ」のド定番商品「ミラノ風ドリア」。品質も価格もまだまだ改善の余地はある。

ただ、料理を味わっているときから頭を離れない疑問があった。「なんでこんなに良い肉を使えるのだろう」と。帰りがけ、店の前に飾ってあったオープン祝いの花を見て納得した。そこには日本ハムの社長名が。系列の流通企業の花もあった。日本ハムは、海外に生産拠点を持ち、牛肉はオーストラリアに2カ所、鶏肉はトルコに1カ所を持つ。日本ハムは日本最大の食肉企業であり、日本最大級の食品企業でもある。
なるほどそういうことか。「いきなり!ステーキ」の肉のメインサプライヤーは、「こてっちゃん」で知られ、近年、食肉業界で上位を伺う準大手のエスフーズ。「いきなり!ステーキ」を経営するペッパーフードサービスの大株主でもある。ニトリはペッパーの成功事例をよく見習っているのだ。
ニトリと日本ハムはお互いにメリットがある。ニトリとしては安定的に高品質な食材を調達できる。日本ハムとしても、今後ニトリが食品小売りまで手を広げるのであれば、ここで良い顔をしておいて損はない。
いずれにしても「みんなのグリル」は良い店だと思う。ただ、外食産業を長く取材してきた記者として、どうも「ニトリが外食本格参入」というニュースだけではない、裏側の匂いを感じてしまうのだ。
(フードリンクニュース編集長 遠山敏之)