もともとの名前は「チョコテック」、箱は横型

耳に残る特徴的な商品名も、実は65年の試験販売時は全く違っていた。「テクテク歩きながら食べられる」という意味を込め、「チョコテック」と名付けられていたという。これまでにないコンセプトで、消費者からの反応は上々だった。

65年に試験販売された前身商品の「チョコテック」

しかし、本格的に販売していくことが決まった段階で、「チョコテック」はすでに第三者に商標登録されていたことが判明する。再検討した結果、食べる際の「ポッキン」と折れる軽快な音の響きを表現した「ポッキー」に決まった。

箱パッケージも現在とは違っていた。1966年に発売された元祖ポッキーのパッケージは横向きのデザイン。地色も白だった。上からスッと取り出しやすいよう、縦向きパッケージに変更。地色も赤に変えて今に至る。

名前やパッケージは変わったが、持ち手がある棒状で、移動したり、会話を楽しんだりしながら食べられるという機能面のユニークさは、その後もポッキーの広がりを支え続ける。ターゲットやシーンの広がりを示すうえで象徴的なのが、70年代後半以降に相次いで打ち出した2つの広告キャンペーンだ。

1つは「ポッキー・オン・ザ・ロック」。ポッキーを冷たい酒に浸し、マドラーの要領でかき混ぜて楽しむことを提案した。もともとは、当時の同社担当者が、街のバーなどでポッキーがマドラー代わりに使われていることを聞きつけたのが発端だった。

50代以上の読者であれば、歌手・松田聖子さんをはじめとする有名タレントを起用したCMが記憶に残っているのではないだろうか。グラスの中でポッキーをくるくる回しながら歌う演出は話題を呼び、「子供向けの菓子」と思われていたポッキーが年齢層を超えて浸透するきっかけになった。

観光地の写真を印刷した「旅にポッキー」キャンペーン商品

もう1つは、「旅にポッキー」。このキャンペーンが展開された80年代初頭は、女性の社会進出が本格化した時期。ファッションや旅を扱う女性向けの雑誌が人気を博し、それらの記事を読んだ若い女性たちが、特集された観光地へ旅行に出かける現象が注目されていた。

同社はその機をのがさず、CMやパッケージを通して、持ち運び便利で行楽のお供として最適なポッキーの特徴をアピールした。函館や京都、倉敷など、各地の観光名所の写真を、パッケージにすり込んで、「旅のお供」感をまとわせた。

「飲み物との組み合わせを楽しんだり、持ち運んで家族や友人と一緒に分け合ったりする『食べ方』は、キャンペーンを展開していた当時の一過性のものには留まりませんでした。約20年たった現在に至るまで、ポッキーはお酒と合う、旅のお供にもぴったりというイメージはお客様の間に根付いている実感があります」

斬新な形状で、発売するとすぐに、消費者の圧倒的な人気を獲得したポッキー。ただ、初めの「驚き」は数年たてば薄れていくのが常だ。発売から10年ほどのタイミングで、商品の特徴とうまくマッチした楽しみ方を発見し、公式に打ち出せたのは、ロングセラーの土台を確かにする上で大きかった。

同時期の70年代には「アーモンド」と「いちご」の両フレーバーも発売。味わいの面でも、楽しみの選択肢を広げていく。この夏に向けても、冷凍庫で冷やした「凍らせポッキー」をプッシュしている。凍らせると常温の1.3~1.9倍の硬度になる特性を生かし、心地よい破断の感覚を楽しめる味わい方を提案。「世界一」の実績にあぐらをかかず、魅力を深掘りしていく取り組みがポッキーの「折れない人気」を支えている。

(ライター 加藤藍子)

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