私の場合には、ソフトバンクアカデミアに挑戦し、所属するようになり、ビジネス資本と社会関係資本が増幅しました。

今、キャリアに悩んでいるなら、違う環境に身を置いてみましょう。今の会社でこれからのキャリアの可能性を見いだせないとしても、すぐに転職しようと考えるのではなく、まずは会社にいながら他の環境にも足を運んでみるのです。

複数の環境やコミュニティに所属するには、恵まれた時代になりました。どこからでもオンラインで参加できるからです。もし今の勤務先が副業を奨励していないとしても、仕事以外の個人活動までコントロールすることはできません。一つの組織の中だけに、キャリアを閉じ込めるのだけは避けましょう。

20代は「目の前の業務に集中」は本当?

私が大学の外で行動することの他にもう1つ、心がけていることがあります。それは、すでに経験値のたまった仕事を減らしていくということです。

9つの大学で講師をしてきたので、大学で教えるということのキャリア資本は形成されました。自分の中で「やり方がわかる」という状態になったので、契約を更新することはしませんでした。現在、学生に教えているのは法政大学だけです。また、中学や高校でのキャリア講演についても、登壇数を限定するようにしています。

そして生み出された時間を使って、研修プログラム開発の案件を進めています。最近はキャリアナレッジという会社を起業し、企業の社員向けの行動変容診断ツールや「プロティアンキャリアドック」(総合的なキャリア支援プログラム)の開発・運用を十数案件、手がけています。企業からの依頼で、キャリア開発プログラムを総合的にデザインしていくことは様々な知見が不可欠ですので、今でも関連書籍を読み漁ります。もちろん結果を出さないといけないので、考え抜いて形にしていきます。

新しいプロジェクトには、新たな出会いがあるので、社会関係資本も同時に形成されていきます。

「20代は目の前の業務だけに集中すべきだ」と言う人がいますが、私はそうは思いません。30代から外をみようとキャリア設計するのではなく、20代のうちからもさまざまなキャリア資本を蓄積していくように行動した方が、飛躍の幅が違うと私は考えています。

「鉄は熱いうちに打て」とは、キャリア形成においてもあてはまるのです。組織内キャリアとしての働き方が身体化される前に、自ら主体的にキャリアを形成していく自律型キャリアの経験と機会を増やしていくのです。さあ、20代のうちに、あなたはどんなキャリア資本を形成していきますか?

田中研之輔
 1976年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程を経て、メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員。2008年に帰国し、法政大学キャリアデザイン学部教授。大学と企業をつなぐ連携プロジェクトを数多く手がける。企業の取締役、社外顧問を19社歴任。著書に「プロティアン―70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術」(日経BP社)、「ビジトレ―ミドルシニアのキャリア開発」(金子書房)など。Twitterは@KennosukeTanaka(キャリアに関する様々な質問を受け付けています)
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