女性が活躍する社会の実現を目指し、政府や経済界は取り組みを進めていますが、世界の中での日本の立ち位置は低いままです。世界経済フォーラムが男女平等の度合いをランク付けした「ジェンダー・ギャップ指数」は2021年も156カ国中120位と、前回からほぼ横ばいです。経済の分野では少しずつ改善していますが、政治の停滞が影響しているようです。
この指数は健康、教育、政治、経済の4分野で平等度合いを測ります。世界から後れをとるのは政治と経済です。政治は147位、経済は117位と低迷しています。それでも15年前と比べると、仕事を持つ女性の増加で経済のスコアは上がりました。逆に政治はスコアを下げ、女性の権利が著しく制限される中東諸国の下に位置します。
上場企業で役員に占める女性の割合は12年の1.6%から20年は6.2%まで伸びました。政府や東京証券取引所が女性の幹部登用を促すルールを設けてきたことで、管理職に就く女性も増えています。
経済分野での女性活躍の漸進は、企業業績との関連も背景にあるようです。大和総研が女性の幹部登用が進む上場企業163社とそれ以外の1155社とで5年間の業績を比較すると、総資産利益率で1.3ポイントの差がありました。企業規模など他の関連要素を除き、女性登用が純粋に好業績を生むという因果関係を確かめたといいます。
分析を担った中田理恵研究員は「女性登用は長期にわたるほど業績への貢献が大きくなる。企業には『数合わせ』で終わらない継続的な登用が求められる」と話していました。
一方、政治分野のスコアが低い原因は「トップに女性がいない」「女性議員の数が少ない」などです。参院は女性比率が徐々に高まり、23%まで上がっていますが、衆院は10%にとどまっています。
先の東京都議選では当選した女性の割合が32%と初めて3割を超えました。仮にこの水準まで国会も女性進出が進むと、米国やドイツを抜いて世界で50位内に入ることができます。
女性議員が増えると女性活躍が一層進むという循環が生まれそうです。都営地下鉄は19年から、車両内に「子育て応援スペース」を設けました。内装のデザインを変え、子どもが泣いても周囲に気兼ねしなくていいようにしました。発案した龍円愛梨都議は「議員や知事など、女性の共感が広がったことが大きかった」と振り返ります。
企業統治に詳しい一橋大学のクリスティーナ・アメージャン教授は「政治の場で女性進出が進まないと、女性が能力を発揮するためのルール形成も進まない」と話します。今秋までに行われる衆院選に向け、政党や有権者の判断が試されそうです。