「ハッカの街、北見」をアピール

ハッカ油の知名度が上がってきたのを追い風に、同社が目指すのは、「ハッカを使った、北見市の活性化」だ。栽培から蒸留までを自ら手がける強みを生かし、「ハッカの街、北見」を押し出していきたいという。

お手本は北海道のおみやげとして名高いチョコレートの「ロイズ」(製造・販売はロイズコンフェクト)や、観光人気が高い富良野市。「新千歳空港にはミュージアムの『ロイズ チョコレートワールド』があり、富良野市はラベンダーの印象が強い。同じように地域を象徴するイメージをハッカでまとわせたい」(永田氏)。

北見市は焼き肉やカーリングで有名。北見市常呂町のカーリングチーム、ロコ・ステラの松澤弥子選手も北見ハッカ通商の社員だ。「着地型ツアーのテーマにハッカを加えれば、さらに厚みが出る」と、永田氏は期待する。

北見ハッカ通商のオープン型ファクトリー

集客の核施設として2019年に社屋と工場をオープン型ファクトリーに一新した。製造ラインの見学が目玉で、ハッカ油の生産工程を見られる。地場産ハッカの歴史を紹介する資料も展示。「化学合成ではない天然ハッカの魅力を畑から工場まで一貫した、北見の環境で感じ取ってもらいたい」(永田氏)。地球温暖化のあおりもあって、長く暑い夏が続くようになった。「クールな印象が強いハッカは、涼しい北海道のイメージと重なって、訴求力が大きい」と見込む。

原料となるハッカ栽培にも力を入れている。北見市内で栽培地を増やしているのに加え、地元の北見工業大学との間で共同研究講座「ハッカラボ」を立ち上げ、栽培方法の改良や新製品の開発に取り組み始めた。永田氏は「もともと北見のハッカ文化を途絶えさせてはいけないという思いから創業した会社。今は原料の大半をインドから調達しているが、北見で栽培する和ハッカが増えれば、新たな商品開発にもつながる」と、かつて世界の7割を算出していた「ハッカの街・北見」の復活を願う。

世界最大の規模を誇ったホクレン工場は一部が1986年に「北見ハッカ記念館」へ生まれ変わった。2007年には日本近代化産業遺産として認定されている。蒸留の方法を紹介する「薄荷蒸溜館」も同館内にある。北見市仁頃はっか公園にはハッカ御殿や農園もあり、「オープン型ファクトリーと一緒に回れば、ハッカ文化への理解が深まる」(永田氏)。

アジアでは以前からハッカ成分を使った医薬品が浸透している。シンガポールの「タイガーバーム」は知名度が高い。しかし、香りがきつめで、好みが分かれる。北見ハッカ通商がアジアの百貨店にブースを構えたところ、「自然なくどくないフレーバーが好まれた」(永田氏)。大型量販店の「ドン・キホーテ」がハワイで物産展を開いた際も人気を博したそうだ。

新商品の開発にも余念がない。20年に発売したのは、初のロールオン型ハッカ油。先端のボール部分にオイルをなじませ、マスクやハンカチの上を転がすように使う。スプレー式は吹き出す方向や分量を思い通りにコントロールしにくいところがあったが、「ロールオン型であれば、塗りつけたい場所に少量だけ塗布しやすい」。これも消費者から寄せられた声を反映した商品だ。

明治期に屯田兵が栽培したハッカは、北海道の歴史を示す。畑と工場、観光を立体的に組み上げる北見ハッカ通商の現在形は、「農業の6次化」にもつながり、開拓者精神に富む。ハッカ飴(あめ)から始まった同社は消費者と誠実に向き合う姿勢で口コミを呼び、商品の幅を広げ、時間をかけて飛躍した。「暑さや不快感がますます気になる時代に、ハッカはもっと役に立てる」と語る永田氏の声もすがすがしく響いた。

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