ユーザーに教わる「北見ハッカ通商流オープンイノベーション」

飲み物に加えても安心なのは、「最初から食品添加物として企画されている、天然由来のハッカ油ならでは」(永田氏)。一般的なアロマオイルでは化学的に合成されたハッカ油が用いられていることが多く、口に入れるのはためらわれる。「食べられません」と注意書きが添えられているタイプは飲食厳禁だ。

朝の紅茶に垂らせば、ミントティーになり、目覚めが爽快に。夜はカクテルのモヒートやミントジュレップが楽しめる。ミントリキュールと違って甘みがないから、「お好みの『味変』を試せる」。たとえば、アイスクリームに添えて、チョコミントっぽく変えたり、ゼリーに加えてさわやかさを引き立てたり。「お客様が寄せてくださる感想を読むと、まだまだ知らない使い道を教えてもらえる」(永田氏)

北見ハッカ通商(北海道北見市)の永田裕一社長

ただ、使いすぎは禁じ手。「本来の風味を損ないかねない」からだ。紅茶やリキュールに垂らす場合は、瓶から直接ではなく、「つまようじの先をぬらす程度にとどめて」。服やシーツにスプレーで吹きかける場合は、無水エタノールを加えて、水で薄めるのがよいという。「マスクにプッシュする場合も、薄めて濃度を調節したほうが香りがきつすぎない」という。

冬や春は加湿器の水に加える使い方が知られている。部屋全体に香りが広がり、長くなった家ごもり時間を心地よく過ごしやすくなる。鼻が詰まった際、カップの湯に垂らして、蒸気を吸い込むと、鼻の通りが改善するという。こういった使い方をホームページで紹介するたびに「私もやっています」「似たような使い方にこういうものもあります」といった声が寄せられる。同社はそれらをマーケティングに生かすほか、さらにユーザーの声として公開。「お客様の知恵をもらって、ハッカ油の使い道が広がっていった」というのが、北見ハッカ通商流のオープンイノベーションだ。

消費者の声はパッケージの改良にもつながった。「ハッカ油の成分はプラスチック性の材質を溶かしてしまうほどの強さを持つ」(永田氏)。だから、同社ではビーカーや試験管に使う耐酸性の瓶を用いている。しかし、本来のガラス瓶からプラスチック製の容器にそのまま移し替えると、容器がダメージを受けかねない。ユーザーの声を受けて、同社はハッカ油成分にふさわしい容器やラベルを検討。材質を改良したり、移し替えの注意を呼び掛けたりして、トラブルを減らした。

ユーザーから報告された用途にはほかにも「運転中の眠気覚まし」「かばんの中のにおい消し」「散歩する犬の虫よけ」など、様々なパターンがある。介護に携わる人が増えてきたことを背景に、「オムツ交換時のにおい消し」という使い道を報告した人も。歯間を掃除するデンタルフロスに塗ったり、洗濯・アイロンの仕上げに使ったりと、爽快感を生かした用途が多い。こうした声を集めて出版された本が「毎日、ハッカ生活。」(北見ハッカ愛好会、大和出版)だ。多彩な使い方を紹介していて、「この本が出てから、さらに人気に弾みがついた」(永田氏)という。

コロナ禍の後には、衛生意識の高まりを受けた用途が広がった。たとえば、身近になったアルコール消毒は、アルコール特有のにおいが気になることも。入り口で来場者に消毒を求める店舗や施設では「アルコール臭を抑えるために、ハッカ油を混ぜるところが増えた」。飲食店では客が入れ替わるたびに、テーブルを拭く作業が欠かせない。ただ、拭くのに使ったダスター(ぞうきん)のせいで、かえってにおいを帯びるケースもある。「布にワンプッシュすれば、清潔感を印象づけやすい」(永田氏)

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「ハッカの街、北見」をアピール
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