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豪雨の犠牲者なくすには 「事前避難」徹底がカギ

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今年も大雨による被害が各地で相次いでいます。静岡県熱海市では土石流が発生し、多くの住民が犠牲となりました。気象予報の精度が向上し、避難情報の改善も進んでいますが、人的な被害はなくなりません。国や自治体だけでなく私たちの不断の取り組みが必要です。

最近、大雨を降らせる原因として、線状降水帯という雨雲の連続的な襲来が知られるようになりました。雨を降らせる積乱雲が列をなして次々に発生し、同じ地域に長時間激しい雨が降る現象です。雨の降る地域は長さ50キロから300キロメートル、幅20キロから50キロメートルになります。

積乱雲が次々に発生するのは、エネルギー源になる大気中の水蒸気が大量に供給し続けられるためです。大気は暖まると水蒸気をたっぷり含みます。水蒸気量が増えているのは、地球温暖化で海水面温度が上がり、大気を暖めるためとされます。

水蒸気量を測れれば、線状降水帯発生を予測できるようになります。気象庁は水蒸気の観測網を強化し、6月から線状降水帯が発生したことを意味する「顕著な大雨に関する情報」という情報を発表し始めました。

すでに7月に入り、鳥取県、島根県、鹿児島県などに出されています。しかし、現状では情報の発表は線状降水帯が発生した後です。水害対策に詳しいリバーフロント研究所の土屋信行・技術審議役は「線状降水帯の発生を早く予測できるよう、観測網やレーダーの整備を急ぐべきだ」と話しています。

市町村が出す避難情報も5月に見直しました。これまで「避難勧告」と「避難指示」があり、危険度がわかりにくいとの声がありました。このため「避難指示」に一本化し、これを5段階の警戒レベルで2番目に危険なレベル4としました。

最も危険なレベル5の「緊急安全確保」は、すでに災害が起きているような状態です。避難所などへの移動は危険なため、今いる建物の上層階などで安全を確保する必要があります。

安全に避難するため、土屋さんは「雨が降る前」「日が暮れる前」の事前避難が大切だといいます。しかし、市町村の判断は遅れがちです。理由は(1)市町村の3割は水害の危険性を判断する土木職員がいない(2)雨の予測でなく、増水後の河川の水位を基準に判断している(3)空振りに終わった時の住民の苦情を懸念している――などです。

国が予測の精度を高めても、それを市町村が生かせなければ住民の命は守れません。土屋さんは「情報を持つ国の機関が、雨が降り出す前に、空振り覚悟で避難情報を出すべきだ」と主張します。住民も自治体と競争するくらい自ら情報を集めて早めの避難を心がけ、空振りならむしろ良かったという気持ちで臨むことが大切でしょう。

土屋信行・リバーフロント研究所技術審議役「実効性ある情報提供を」

東京都や江戸川区の職員として防災を担当し、「水害列島」「首都水没」などの著書があるリバーフロント研究所の土屋信行・技術審議役に聞きました。

――今年も水害が相次いでいます。

「7月豪雨と命名される水害がここ何年も続き、定番になってしまっている。しとしと雨で済んでいた梅雨の時期に大雨が降るようになったのは地球温暖化の影響だ。日本近海ではここ50年で2℃海水面温度が上がった。海水面温度が上がれば気温も上がり、空気中に水蒸気がたっぷり含まれるようになる。すると太陽光線を吸収してさらに気温が上がり、高温多湿で水蒸気を非常に多く含む状況になる」

「梅雨の時期は、停滞前線が構成され、高温多湿の大気の下にオホーツク海の寒気団がくさび形に潜り込み、上昇気流をつくって雨を降らせる。海水面温度が高いと雨を降らせても次から次へと水蒸気が供給され、一向に大気が乾かない湿舌という状態になる。これが同じ場所で積乱雲が次々にできるバックビルディング現象を起こし、線状降水帯を発生させている。線状降水帯の発生を早く予測できるよう、観測網やレーダーの整備を急ぐべきだ」

――海水面温度の上昇は台風にも影響を与えます。

「台風は海水面温度が26.5℃以上になると発生する。今のところは東京近海でも小笠原辺りで発生するかどうかだが、海水面温度がさらに上昇すれば台風が発生する緯度が上がる。そうすると上陸時の勢力は強くなり、通り道も変わってくる」

「日本は地域によって雨の降り方に特徴があった。西日本は梅雨に雨が多く、沖縄は台風の通り道、東北は冬の雪、北海道は梅雨もなければ台風も来なかった。今は北海道も長雨があり、台風も来る」

「日本の年間降水量は1500ミリから1700ミリと欧州の国の2倍あり、その豊富な水が急な流れになっている。一番長い信濃川でも、洪水になると、降ってから18時間から20時間で日本海に注ぎ込む。あっという間で、途中にある家屋や田畑をみな流してしまう。広島県三原市では7月の大雨で、3年前の西日本豪雨と同じところで堤防が決壊した」

「それに比べ、欧州の川はゆったりしている。ライン川はアルプスの雪解け水が流れ込み、人々は飲み水など生活に使って再び川に戻す。この循環を上流、中流、下流で繰り返し、北海に注ぎ込むまで人の体を3回通るとも言われるくらい穏やかに流れている」

「そのライン川周辺でも急流を発生させるほどの豪雨が降り、欧州では近年まれな大きな洪水被害を出した。地球温暖化の影響が世界的に広がっていることの表れだろう」

――河川が氾濫しそうになった場合の避難情報が、これまでの「避難勧告」と「避難指示」から「避難指示」に一本化されました。

「わかりやすくなったのはよい。これまでは『勧告』と『指示』でどちらがどのくらい緊急性が高いのか、わかりにくい面があった。ただ、防災担当者は避難指示をきついイメージで受け止めており、いきなり避難指示だと、経験やノウハウのない自治体はちゅうちょしてしまうかもしれない」

「さらに考えてほしいのは、避難情報を全国1700余りの市町村が出す点だ。市町村レベルで土木関係の職員がいない自治体が3割ある。首長に的確に情報を上げる技術職員がいないと、首長が避難の判断を誤ることがある」

「昔は市町村の発令でよかった。1959年の伊勢湾台風で災害対策基本法ができた当時は、気象庁ですら台風の位置が正確にはわからない時代だ。現場で雨や風の状況をみて判断した方が住民の命を守ることができた。『観天望気』の知識が地域に残っており、市町村が避難情報を出す理由があった」

「今は専門家集団である気象庁、国土交通省、内閣府防災が情報を持っている。情報を持っている国の機関が避難情報を出すべきだ。米国では連邦緊急事態管理局(FEMA)が避難情報の発令を担い、フランス、ドイツも中央政府の危機管理庁が出している。自治体の権限だからと国が逃げていては国民の命を守れない。かつては地域のコミュニティーがしっかりしていて避難の情報もすぐに伝わったが、今は地域の情報伝達力も落ちている。住民に迅速、確実に伝わる実効性のあるやり方が必要だ」

「もう一つ課題がある。避難情報は河川の水位を基準に出している。水位が上がるのはすでに雨が降っているからで、それだと雨の中、逃げろということになる。豪雨の中、逃げるのは命を捨てるようなものだ。雨が降らないうち、明るいうちに避難し、雨が降り出したり暗くなったりしたら外に出ない。こうした人の命を守る避難情報のあり方を突き詰めれば事前避難になる」

「東京都江戸川区で防災を担当していたとき、水害の避難情報は(1)発災の24時間前に発令する(2)8時間前までに避難が終わらなければ、外に出ず、上の階に逃げる垂直避難にする――とした。オオカミ少年になるのは覚悟のうえで、事前避難を柱にした。台風や大雨は前もってわかるようになってきたのに、雨が降り出し、危機の直前にならないと避難情報が出ないのは制度の欠陥だ。情報を持つ国の機関が、雨が降り出す前に、空振り覚悟で避難情報を出すべきだ」

――水害の犠牲者はなくなりますか。

「水害は人的犠牲を避けられるようになってきている。水害から命を守るため大切なことが2つある。一つは自分の命は自分で守るという住民の意識だ。地域のことを的確に知り、自分で逃げる場所を確認しておく。避難情報が出る出ないにかかわらず、気象庁の予報をみて、そろそろ危ないのではないかと自分で早め早めに判断していく。自治体と競争するくらいのつもりで判断できるとよい。自治体は避難情報を出していないが、深刻になる前に、余裕のあるうちに逃げようと考えたい」

「もう一つは治水対策への投資だ。小泉政権で半減し、さらに民主党政権で半減した。その後の自民党政権でインフラ投資を増やしつつあるが戻し切れていない。東京、名古屋、大阪のゼロメートル地帯に逃げられる高台がどれだけあるか。防災は避難行動などのソフトを支えるハード整備と、ハードの機能を生かし切るソフト対策が車の両輪だ」

(編集委員 斉藤徹弥)

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