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デンシバ Spotlight

豪雨の犠牲者なくすには 「事前避難」徹底がカギ

2021/7/25

デンシバ Spotlight

台風やゲリラ豪雨はこれからが本番だ(7月11日、東京都内=共同)
台風やゲリラ豪雨はこれからが本番だ(7月11日、東京都内=共同)

今年も大雨による被害が各地で相次いでいます。静岡県熱海市では土石流が発生し、多くの住民が犠牲となりました。気象予報の精度が向上し、避難情報の改善も進んでいますが、人的な被害はなくなりません。国や自治体だけでなく私たちの不断の取り組みが必要です。

最近、大雨を降らせる原因として、線状降水帯という雨雲の連続的な襲来が知られるようになりました。雨を降らせる積乱雲が列をなして次々に発生し、同じ地域に長時間激しい雨が降る現象です。雨の降る地域は長さ50キロから300キロメートル、幅20キロから50キロメートルになります。

積乱雲が次々に発生するのは、エネルギー源になる大気中の水蒸気が大量に供給し続けられるためです。大気は暖まると水蒸気をたっぷり含みます。水蒸気量が増えているのは、地球温暖化で海水面温度が上がり、大気を暖めるためとされます。

水蒸気量を測れれば、線状降水帯発生を予測できるようになります。気象庁は水蒸気の観測網を強化し、6月から線状降水帯が発生したことを意味する「顕著な大雨に関する情報」という情報を発表し始めました。

すでに7月に入り、鳥取県、島根県、鹿児島県などに出されています。しかし、現状では情報の発表は線状降水帯が発生した後です。水害対策に詳しいリバーフロント研究所の土屋信行・技術審議役は「線状降水帯の発生を早く予測できるよう、観測網やレーダーの整備を急ぐべきだ」と話しています。

市町村が出す避難情報も5月に見直しました。これまで「避難勧告」と「避難指示」があり、危険度がわかりにくいとの声がありました。このため「避難指示」に一本化し、これを5段階の警戒レベルで2番目に危険なレベル4としました。

最も危険なレベル5の「緊急安全確保」は、すでに災害が起きているような状態です。避難所などへの移動は危険なため、今いる建物の上層階などで安全を確保する必要があります。

安全に避難するため、土屋さんは「雨が降る前」「日が暮れる前」の事前避難が大切だといいます。しかし、市町村の判断は遅れがちです。理由は(1)市町村の3割は水害の危険性を判断する土木職員がいない(2)雨の予測でなく、増水後の河川の水位を基準に判断している(3)空振りに終わった時の住民の苦情を懸念している――などです。

国が予測の精度を高めても、それを市町村が生かせなければ住民の命は守れません。土屋さんは「情報を持つ国の機関が、雨が降り出す前に、空振り覚悟で避難情報を出すべきだ」と主張します。住民も自治体と競争するくらい自ら情報を集めて早めの避難を心がけ、空振りならむしろ良かったという気持ちで臨むことが大切でしょう。

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土屋信行・リバーフロント研究所技術審議役「実効性あ