ざるの上のうなぎ(写真はPIXTA)

2つ目の新常識は「選び方」。

うなぎといえば最近、私のまわりで中国産の評判がすこぶるよい。私は10年以上前に安さに釣られてスーパーで中国産のかば焼きを購入したものの、骨っぽいわ泥臭いわで2度と口にすまいと思った記憶がある。

おいしくなった安価な中国産うなぎ

しかし、ここ数年は友人たちからは「牛丼チェーンのお店でうな丼食べたらすごくおいしかったよ。安かったから中国産だと思うけど」とか「スーパーの中国産のうなぎは最近おいしいよ」といった話をよく耳にする。

果たして中国産うなぎは本当においしくなったのか。旬の食材の通販サイト「豊洲市場ドットコム」の運営会社・食文化のシニア産地プロデューサーの八尾昌輝さんによれば、やはり「最近の中国産うなぎのかば焼きは好評ですね」という。

「値段が安いので、たっぷりと食べられて満足感が高いという面が好まれているようです」と八尾さん。

同通販サイトでは、20食入りといった「まとめ売り」のものをうなぎ好きが自宅用に購入することが多いとか。つまり、ギフトには国産を、自分用にはコストパフォーマンスが高い中国産を選ぶ傾向があるようだ。では、以前と一体何が変わったのか。

「以前は『中国産うなぎは泥臭い』と言われていました。昔は『ロストラータ種』という品種を使っていたため日本人には合わない独特のクセがありました。近年は同じジャポニカ種を使っているため日本人の好みに近づきました。ただ、このことでシラスウナギの中国・台湾・日本の買い付け競争が起こり、国産うなぎ高騰の一因にもなっています」(八尾さん)

日本と同じ品種を使っているだけでなく、養殖方法の違いや企業努力もおいしくなった理由の1つという。

「中国のうなぎは2~3年近く長い時間をかけて養殖することから、身が大きくなり歩留まりが良くなります。ただ、長く養殖すると皮が固くなり骨も太くなるという欠点があり、日本ではあまり行われませんが、中国では焼きや蒸しの技術により食感を良くし、さらに日本のタレメーカーも加わって日本人に好まれる商品設計をしていますので、味が格段に良くなっています」(八尾さん)

歩留まりとは生産された製品のうちの良品の割合を指す言葉であるが、食料生産・食品加工の現場では、原料に対する可食部の比率を指す。つまり、捨てられる部分が少ない。ちなみに日本産うなぎの養殖期間は半年から1年半とのこと。

「中国産うなぎはマズい」はもはや古い常識。これまで中国産を敬遠していた人も固定観念にとらわれず、おつかい物や自分へのご褒美には国産、普段の自分用には中国産というふうに使い分けてみてはいかがだろうか。

(柏木珠希)

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