女性の心をくじく「駄言」 こんな言葉はレッドカード

2021/8/19
就職活動中、女性はリクルートスーツのスカートを着用すべきだという暗黙のルールがある。最近では、そうした固定観念に縛られない企業も出てきている
就職活動中、女性はリクルートスーツのスカートを着用すべきだという暗黙のルールがある。最近では、そうした固定観念に縛られない企業も出てきている
日経 X woman

心を打つ「名言」があるように、心をくじく「駄言」(だげん)もあります。駄言には無意識の思いこみ、特に、性別のステレオタイプによるものが多くみられます。そんな駄言を集めた書籍が日経xwoman編集の『早く絶版になってほしい #駄言辞典』(以後、『#駄言辞典』)。ジェンダーにまつわるステレオタイプから生まれる400を超える「駄言」を、エピソードとともに紹介している本書から、駄言の実例とその駄言を生んでいる背景の分析を紹介します。今回のテーマは「女性らしさ」に関する駄言とその要因です。

「就活は女性らしくスカートで」

書籍『#駄言辞典』を制作するに当たって公募したところ、ツイッターとウェブ上フォーマットに、合計約1200個の駄言が投稿されました。中でも目立ったのは「女性らしくない」「女のくせに」といった性別による行動規範に関する駄言でした。

「女性は女性らしく振る舞うべきだ」という考え方を時代錯誤と感じる人は多いでしょう。しかし、これは「嫌な発言なのでやめてほしい」というモラルやマナーの話にとどまらないテーマです。さまざまな資料を探っていくと、この問題が日本の社会全体や法律の歴史にも根ざしていることが分かってきます。私たちは、そのことにまず気付く必要があるのです。

さて、日本の社会に、「女性は女性らしく、男性は男性らしく」というジェンダー規範が広く浸透したのは、いつ頃からなのでしょうか。

「女らしさ」の背景には戸籍法や旧民法の存在がある

「女らしさ」を準備した背景の一つに、1871年(明治4年)に制定された戸籍法や1898年(明治31年)に交付・改編された旧民法があります。戸籍を編製するに当たり、明治政府は父親とのつながりを重視しました。また、旧民法で定められた家制度によって、妻は結婚すると夫の家に入り、その家の姓を名乗るなど、男性が権力を持つような社会構造がつくられたのです。それと同時に「良妻賢母教育」が進められ、女性の行動が制限され、「女らしさ」が押し付けられるようになったと考えられます(参考:『女性差別はどう作られてきたか』集英社新書)。

早く絶版になってほしい #駄言辞典

著者 : 日経xwoman
出版 : 日経BP
価格 : 1,540 円(税込み)


両性は「平等」になったはずなのに

第2次世界大戦後、日本国憲法の第24条には「両性の平等」が定められたものの、社会における性別役割分業の構造は残りました。また、日本社会には家族的な考えを会社に持ち込む傾向があるため、これが職場における性別役割分業にもつながったと考えられます。

さらに、高度経済成長期の間、日本では生産性を向上させるために男性は会社で長時間働き、女性は家で家事や育児を担うというライフスタイルが前提とされました。家庭や学校、社会においても、女性と男性は性別で分けられ、「女性らしい」または「男性らしい」振る舞いや考え方が推奨されることが続いたのです。

しかし、そうした高度経済成長期は幕を閉じ、今、日本は人口減少、経済縮小の局面を迎えています。今日求められているのは、性別役割分業の意識を払拭し、従来の固定観念を打ち壊して、新しい価値を創造する、多様性のある社会をつくることです。

また、近年では性的マイノリティーのLGBTQや多様性を尊重する考え方も広まっています。2021年3月、札幌地方裁判所が「同性婚を認めないのは違憲」とする判断を示したこともその一例です。

固定観念に別れを告げ、「自分らしさ」を発揮する時代

私たちは「女性・男性」という2つの枠組みに可能性を押し込めるという固定観念に別れを告げ、一人ひとりがもっと自由に伸び伸びと「自分らしさ」を発揮し、新たな価値を創造していく時代に突入していると言えます。

就職活動の場においても、その流れが見えます。従来の就職活動で、女性は「女性らしさ」の象徴であるスカートのリクルートスーツを着用し、髪形や持ち物も画一的なスタイルにすることが推奨されていました。しかし、最近では「女性らしい」スタイルに縛られることなく、「自分らしい」服装や髪形、メイクを許容する、また、業界によっては歓迎さえするという、新しい流れが生まれています。

このように、誰もが性別に縛られず、自分らしい選択ができるようになれば、社会はこれまでよりも生きやすいものになるはずです。

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駄言の実例「女を捨ててる」