出会いが引き出しを作った

俳優・中野英雄の次男として生まれ、06年、13歳のときにデビュー。「映画俳優」を目指した。

(写真:中川容邦)

「ゼロ年代の映画に影響を受けて、カッコイイ先輩方のようになりたいと思っていました。だけど、映画界から見向きもされない感じがあって、高校生のときには『俺には無理だな』と。そんなときに出合ったのが、岩松了さんの演劇です。一般公募のオーディションを受けて出演(11年の『国民傘』)したら、『演劇って、こんなに面白いんだ!』と衝撃を受けたんですよ。世の中には映画だけじゃなく、面白いものがたくさんあると気づいて、マインドが変わりました。

その後の転機として大きかったのが、『ゆとりですがなにか』。宮藤(官九郎)さんが書いてくれた山岸ひろむというキャラクターで、初めて世間に認知された感覚があって。『山岸、面白かったよ!』とか『山岸ムカつく!』とか(笑)、いろんな反応があって面白かったし、まさかあいつ(山岸)に俺の人生救われるとは思わなかったです(笑)。

深田晃司さんや石井裕也さん、松居大悟さんといった監督たちとの出会いも大きかったですね。くすぶっていた頃から起用してくれて、『面白いじゃん!』って言ってもらえて。そういう言葉が1番の支えでした。

コメディ演技を鍛えてもらったのは、福田(雄一)さん。福田組では、普通のドラマや映画では絶対にしないような表現を要求されるんですよ。引き出しの中身を根こそぎ出されて、その引き出しがギザギザに変えて返されるみたいな(笑)。いろんな監督に引き出しを開けてもらって、気づいたら演じられる役が広がっていた感じがします」

今年2月には、今泉力哉監督のもとでアイドルオタクを演じた『あの頃。』と、西川美和監督、役所広司主演の『すばらしき世界』が公開。名優・役所との共演について仲野は「俳優人生の最大の目標の1つでした。それが西川監督のもとでかなった、夢みたいな話。本当に宝物のような経験になりました」と振り返る。

そして4月からは連ドラ『コントが始まる』がスタート。同じ93年生まれのトップランナー、菅田将暉、神木隆之介、有村架純と肩を並べて共演している。菅田は高校の同級生で、今でも親友だ。

「将暉が『一緒にやろう』と言ってくれて、有村さんが決まり、神木君が決まったときは、ワクワクしました。みんな信頼できる俳優なので、お芝居していて楽しくて、このまま終わりたくない(笑)。

将暉がいなかったら、全然違う人生だった気がしますね。お芝居はもちろん、彼の活躍は近くにいても本当に刺激になりました。もちろん、若い頃は自分と比べて、悔しい思いをしたこともあります。まあ、それは将暉に限った話じゃないですけど。でも、そういう燃料も必要じゃないですか。それがなかったら、続けられなかったんじゃないかな。近い道ではなかった気がしますが、どんな経験も無駄じゃなかったと、少しずつ感じられるようになりました」

現在、28歳。30代に向け、どんな俳優になっていきたいのか。

「若さだけじゃ通用しなくなるので、新しい自分、大人の表現もちゃんと見つけて、30代も楽しんでもらえる役者になりたいです。

そして、北野武監督の作品に出てみたい。ヤクザ役でも何でもいいです。あと、いつか映画を作りたいですね。それは監督じゃなくてもいいんですけど40歳くらいにはやりたい。そのためにも、今は俳優としての説得力を強めていかないといけないと思っています」

(ライター 泊貴洋)

[日経エンタテインメント! 2021年7月号の記事を再構成]

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