富士通のデジタルノート 電子ペーパーで手書きを追求
戸田覚の最新デジタル機器レビュー
今回は富士通クライアントコンピューティングから登場したノートデバイス「QUADERNO(クアデルノ)」の新モデルをレビューする。電子ペーパーを採用し、ノートを手書きすることに特化したデバイスだ。
書きやすい電子ペーパー
我々は昔から紙とペンを使ってノートやメモを記してきた。今でも手書きは大いに人気がある。タブレット端末のiPadと専用ペンのApple Pencilの組み合わせで「デジタル手書き」をしている人も多いだろう。
では、クアデルノは何が違うのか。iPadはご存じのようにディスプレーに液晶パネルを採用している。テレビなどと同じく保護するガラスの下に液晶パネルがあり、その裏のバックライトを点灯して画像を表示している。
これに対してクアデルノは、ディスプレーに電子ペーパーを採用する。電子ペーパーの詳しい原理を理解する必要はないが、液晶パネルとはまったく別物であることは知っておきたい。最大の特徴は、紙のような表示ができることだ。
反射率やコントラストが紙に近く、文字がくっきりと読める。紙と同様に反射光で表示するので、バックライトは必要なく、目に優しい(暗所での利用に備えてフロントライトを備える機種もある)。ツルツルのガラスとは違って表面は抵抗があり、紙のように書きやすい。
バッテリーが長持ち、軽量・薄型
電子ペーパーは、米アマゾン・ドット・コムの「Kindle」に代表される電子ブックリーダーにも多く採用されている。紙に近い表示なので読みやすく、また書きやすいメリットがある。
液晶パネルより消費電力も少ないので、バッテリーが長持ちする。クアデルノには2種類のモデルがあるが、A5判サイズは261グラム、A4サイズ判は368グラムと軽く、それぞれ6ミリ以下と非常に薄い。荷物としては、同じサイズの紙のノートを持ち歩くのと変わらないのだ。バッテリーはWi-Fiオフで最長2週間、Wi-Fiオンでも最長5日間持つという。
モノクロ表示と価格をどう見るか
ノートデバイス用のディスプレーとしては、いいことずくめの電子ペーパーだが、デメリットもいくつかある。そもそも液晶パネルとは違い、表示はモノクロがほとんどだ。最近はカラーのモデルも登場しているが、映画や写真などを見るのには向かない。画面の書き換えが遅く、残像も残るので、動きの激しいコンテンツ表示は無理がある。手書きでノートを書いても、前の画面の残像が少し残ることがある。
また、ノートをとるためのデバイスとしては、価格がやや高い。クアデルノのA4判モデルは6万9800円、A5判モデルは4万9800円だ(いずれも公式オンラインストアでの販売価格)。値段だけを見ると、多くの人は汎用性の高いiPadを買ったほうがよいと思うだろう。中位機のiPad Airは6万9080円から、普及機のiPadなら3万8280円から手に入る(いずれも公式オンラインストアでの販売価格)。
その考えはおおむね間違っていない。だが、ノートをとるだけならクアデルノのほうが快適だ。すでにiPadなどを持っていて、さらに快適な「デジタル手書き」を求めるユーザーがクアデルノを高く評価しているのだ。
パソコンやスマホとも簡単に連携
クアデルノは手書きしたノートのファイルを、パソコンやスマートフォンとやりとりできる。パソコンとの接続はあらかじめ専用ソフトをインストールした上で、ケーブルをつなぎクアデルノを認識させる必要があるが、以降はBluetoothやWi-Fiでファイルをやりとりできる。
スマホともワイヤレスでやりとりが可能だ。こちらは、スマホ内蔵の近距離無線通信「NFC」を使って直接にやりとりするか、Wi-Fiを使う。
使い勝手は良好で、スマホやパソコンからクアデルノのストレージを読みにいく感覚だ。作業性はよく、1度接続してしまえば快適に使える。
クアデルノで手書きしたノートはPDF形式のファイルになるので、パソコンやスマホで手軽に再利用できる。
手書きにこだわる人に
商談や会議などでパソコンを操作しながら、ノートを手書きしている人は少なくない。手書きのノートは文字だけでなく記号や絵なども自由に書ける柔軟性があるからだ。
だが、紙のノートは保存性が悪いし、検索もしにくい。1冊使い終われば持ち歩くノートを新しいものに切り替えるので、以前書いた情報を閲覧できなくて困る。
クアデルノなら、大量にノートできる。内蔵メモリーに1万ファイルを保存できるし、古いファイルをパソコンに送ってしまえばストレージ容量は実質的に無限だ。
同じことはiPadでもできるが、より紙に近い見た目や書きごごちを求めるなら、クアデルノが選択肢として浮上してくる。電子ペーパーを採用したノートデバイスは他社からも登場しているが、本体の動作速度やパソコンやスマホとの連携アプリの出来などで、クアデルノが頭一つリードしている印象だ。
次ページに実際の操作画面を掲載するので参考にしてほしい。
1963年生まれのビジネス書作家。著書は150点以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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