リスクテイクが今後の経営課題

第二に「リスクテイク」です。物言う株主たちはすぐに「遊休資産を有効活用しろ」と言ってくる、とぼやく上場企業経営層の愚痴を聞くことがありますが、株主視点に立てばそれはもっともな話です。

経営層からしてみれば、わざわざリスクをとってまで成長を目指さなくても、今のままで良いだろう、と思う場面は多々あります。

一方で株主からしてみれば、他の会社、他の業界が成長しているタイミングで、投資先がそれよりも劣った成長率だと気が気ではありません。だったらさっさと資金を引き揚げて別の会社に投資したくなってしまいます。けれどもどこを選べばよいかまではなかなかわからない。だったら、今投資している先に「ちゃんと成長戦略を描いて成長しなさい」と指示した方が早いわけです。

そのための基準が、適切なリスクを取れる人材を経営層に置いておきなさい、という指針であり、それはスキルマトリックスの公表にもつながってきます。

経営層に求められるスキルが具体化されつつある

スキルマトリックスとは、上場企業の経営層が持つスキルや経験を一覧化して、誰がどの分野の専門性を持つのかを示したものです。三井住友信託の調査によれば、すでに300社以上の上場企業が経営層のスキルマトリックスを株主招集通知に記載しているといいます。

スキルマトリックスの基準は明確ではないのですが、私が経営する人事コンサルティングファームのセレクションアンドバリエーションでは、共通基準を仮置きしています。

先ほどあげた「透明性」、「リスクテイク」それぞれの視点に基づくなら以下のような基準です。

【透明性基準】
  取締役の多様性
   ・ジェンダー
   ・年齢
   ・グローバル経験
  取締役の独立性
   ・ファウンダーとの関係性
   ・株主との関係性
【リスクテイク基準】
  事業成長
   ・自社理念への共感
   ・リスクテイク経験
   ・商品/顧客開発
  リスクマネジメント
   ・財務/ファイナンス
   ・法務/知財
   ・人事/労務

これらはあくまでも投資家視点で求める経営層のスキルですが、ビジネスパーソンとしてキャリアを積んでいく指針にもなります。

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