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有森裕子 逆境下での東京五輪、選手に求められるもの

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

いよいよ東京五輪(開会式は23日)が開幕し、8月24日からはパラリンピックが始まります。新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中ではありますが、開催が決まった今、徹底した感染対策のもと、人々の命や健康を何よりも優先して無事に大会を終えてほしいと願うばかりです。

五輪イヤーに日本記録を樹立する選手たちのメンタルの強さ

厳しい戦いをくぐり抜けて切符をつかみ取った代表内定選手たちは、本番の大舞台に向けて調整期に入っていると思います。

陸上も、五輪の最終代表選考会を兼ねた日本選手権が6月末に終わり、五輪本番さながらの白熱した戦いを見ることができました。男子110メートルハードルでは2度のフライングの後で集中力が切れそうな中、泉谷駿介選手(順天堂大)が今シーズン世界3位に相当する日本記録を樹立し、男子3000メートル障害の三浦龍司選手(順天堂大)も、転倒したにも関わらず日本記録を更新。五輪イヤーの勢いと、選手たちのメンタルの強さを見ることができました。

また、9秒台の選手たちがスタートラインに並んだ注目の男子100メートルでは、多田修平選手(住友電工)が悲願の初優勝を飾り、3位の山縣亮太選手(セイコー)とともに五輪の切符を獲得。これまで大きなタイトルに縁がなかった彼ですが、最後まで諦めない姿勢を貫いて土壇場で最高の結果をたたき出しました。

5000メートル女子に関しては、廣中璃梨佳選手(日本郵政G)、新谷仁美選手(積水化学)、田中希実選手(豊田自動織機TC)が表彰台に上がり、力のある選手が順当に結果を出したという印象でした。東京五輪で5000メートルと1500メートルの2種目に出場する田中選手のお母さんは、私が現役時代に活躍されていた市民ランナーです。北海道マラソンで2度も優勝され、強かったことをよく覚えています。田中選手のコーチであるお父さんも3000メートル障害の元実業団選手で、そんな陸上一家に生まれた彼女が、同日に2種目レースがあるというハードな日程にどう挑むのか、楽しみです。

練習環境も世の中の雰囲気も、明らかに例年とは異なり、選手たちにとっては逆境の中で迎えることになった五輪。自分の思いや周囲の思い、さまざまな現実に悩み、向き合いながら、自分が今やるべきことに向き合って結果を出す選手たちの奮闘には、心を打たれます。五輪の舞台での活躍を期待したいと思います。

実力を発揮するために必要なのは「調整力」と「順応性」

さて、注目のマラソンは、女子が8月7日の7時、男子が閉会式のある8月8日の7時にスタートします。先日テレビの情報番組で、女子マラソンの鈴木亜由子選手(日本郵政G)の練習が紹介されていました。彼女はトラック出身で、マラソン挑戦わずか2戦で代表権を勝ち取った選手ですが、私の時代と比べても練習の質がとても高いのが印象的でした。

例えば、3分20秒を切るスピードで1キロを走り、1分間のレスト(休憩)を入れて20本ほど走ります。私も現役時代は同じ距離でのインターバルトレーンングをしていましたが、もう少しレストの時間が長かったですし、そんなに速いタイムでは走れませんでした。ですから、スピードが持ち味のアフリカの選手たちに対しては、粘りで勝負するしかなかったのです。でも今は、鈴木選手だけでなく、男女ともに日本人選手の練習のスピードは明らかに上がっています。

そんな質の高いトレーニングで身につけたスピードや持久力を五輪で発揮するためには、本番1カ月前からの調整期がカギになります。選手によって調整方法は異なりますが、通常ならきつい練習はせずに、疲れをきちんと抜きながら、筋肉に刺激を入れるスピード練習などのポイント練習を、計画通りに取り入れていく。そんな「調整力」が大事です。

また、「順応性」も重要です。今回は母国での開催なので、飛行機での長時間移動や時差などの疲れはないですが、それ以上に、感染防止に気を配るストレスがあります。選手たちがいつごろ、どのような移動手段で北海道に入り、どのくらい自由に行動できるのかは分かりませんが、予想していなかったことや、やりにくさも出てくるかもしれません。また、どんなに入念に準備をしていても、レース本番では何が起こるか分かりません。そんな時に試されるのが順応性で、何が起きても冷静に受け入れ、対応できる選手ほど強さを発揮するでしょう。

テロに屈せず走り抜いたアトランタ五輪

私自身は、五輪のレース中にアクシデントが起きて慌てた経験はありませんが、直前に想定外の出来事はありました。1992年に出場したバルセロナ五輪は、湾岸戦争の影響を受けて、コースがギリギリまで決まりませんでした。ただ、私自身に焦りはなく、どんなコースや条件でも受け入れられる覚悟ができていたので、自分の調子を整えることに集中して試合に挑むことができました。

一方、1996年のアトランタ五輪では、大会7日目に、マラソンのコース上にある公園で爆破テロ事件が起こりました。のちに「リチャード・ジュエル」(2019年、クリント・イーストウッド監督)という題名で映画化されたこの惨事に、さすがに恐怖心がわいて動揺は隠せませんでした。そうはいっても、本番を目の前にして、「走らない」という選択肢はありません。自分でどうしようもできないことは考えずに、ただ目の前のレースに挑むことに集中しました。そんな気概や覚悟が持てるのが、五輪という大舞台なのだと思います。

直角コーナーがリズムや流れを変えるポイント

札幌の大通公園がスタート地点とフィニッシュ地点になる今回のマラソンコースは、約20キロを1周、約10キロを2周する周回コースからなります。スタートから緩やかな坂道を登り、8キロ付近以降は下り始め、あとは全体的にフラットな道が続きます。北海道大学の構内を含む周回コースの1周目は皆ライバルたちの様子を見るでしょうが、2周目、3周目での北大構内に入る手前ぐらいから仕掛ける選手が出てきて、スピードレースになると思います。

北大の構内では右折、左折と、小刻みに直角に曲がるコーナーが連続するので、そこで自分のリズムをどう作るか、他の選手のリズムをどう崩すかもポイントになるでしょう。もし早めに北海道に入れるのなら、母国開催のメリットを生かし、徹底的にコースの下見をして何度も試走し、本番のイメージにつながる練習ができればいいなと思います。

コロナ下での五輪は、もう二度とあってほしくないですが、どんな経験も自分にとってプラスにするか、マイナスにしてしまうかは本人次第です。選手たちは今の環境でできることに集中し、すべてを自分の力に変えてほしいと願っています。

また、先日、日本オリンピック委員会(JOC)が、選手の会員制交流サイト(SNS)などに書き込まれる誹謗中傷を監視するチームを設置するとの報道がありました。選手個人のSNSアカウントに、五輪への出場辞退を求めるコメントが殺到するなど、選手を苦しめる「ネット上の誹謗中傷」が起きていることには心が痛みます。世論に向き合いながら、五輪に関する発言にも言葉を選び、1日1日をがんばる代表選手たちに、さまざまな"単なる理不尽"な批判の矛先が向かないように、各組織がしっかり支えてほしいと思います。

(まとめ 高島三幸=ライター)

[日経Gooday2021年7月13日付記事を再構成]

有森裕子さん
元マラソンランナー(五輪メダリスト)。1966年岡山県生まれ。バルセロナ五輪(1992年)の女子マラソンで銀メダルを、アトランタ五輪(96年)でも銅メダルを獲得。2大会連続のメダル獲得という重圧や故障に打ち勝ち、レース後に残した「自分で自分をほめたい」という言葉は、その年の流行語大賞となった。市民マラソン「東京マラソン2007」でプロマラソンランナーを引退。2010年6月、国際オリンピック委員会(IOC)女性スポーツ賞を日本人として初めて受賞した。

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