男性取りやすく 法改正で出生時育休創設、2回まで可人生100年時代のキャリアとワークスタイル

2021/7/30
「改正育児・介護休業法」で男性の育児参加を促す(写真はイメージ=PIXTA)
「改正育児・介護休業法」で男性の育児参加を促す(写真はイメージ=PIXTA)

男性の育児休業取得率は7.48%(2019年度「雇用均等基本調査」)。2010年度の1.38%と比べると増えたとはいえ、10年以上経っても抜本的な改革が見られないままです。政府は25年までに男性の育休取得率を30%まで高める目標を掲げています。こうした状況を背景に、男性の育児参加を促す「改正育児・介護休業法」が22年度以降、段階的に施行されます。また、夫婦共働きの場合の健康保険の扶養の基準を明確化した厚生労働省の通達が21年8月から適用されます。今回は、これらのポイントについて解説します。

現在の育児休業制度は手続きが煩雑

まず、現在の育休制度の概要について、確認しておきましょう。

育児休業は、原則として子どもが1歳に達するまで取得することができます。「保育園に入れず待機児になった」など法律に定められた一定の延長事由に該当する場合は、最長で2歳に達するまで取得できることになっています(「保育園に入れず育休延長に 給付金の受給も延ばすには」)。休業期間は原則分割して取得することはできず、男性に限って子どもの出生後8週間以内に取った場合、特別な事情がなくても再度取得できるという例外があります。

育児休業は、休業開始日の1カ月前までに申し出をすれば、希望どおりの日から休業できます。申し出がこれより遅れた場合は、事業主が休業開始申し出日の翌日から1カ月以内の範囲で指定できるとされています。ただし、1歳以降の休業の申し出は、2週間前までにすれば問題ありません。

また、育児休業は育児のために労務提供義務を消滅させる制度、つまり、育児のために働かなくてよいと認める制度です。だから、たとえば正社員であっても普段のように恒常的・定期的に働かせることは認められていません。例外的に、労使の話し合いにより、子の養育をする必要がない期間について、一時的・臨時的にその事業主の下で働くことは可能とされています。

こうしたルールはありますが、もっと育児休業を取りやすくするために、柔軟な対応を求める声が挙がっていました。

改正法、出生時育休を創設

6月に成立した改正育児・介護休業法では、男性の育休取得を促進するために、子どもの出生直後の時期において、柔軟な枠組み(出生時育児休業)が創設されました。具体的には、子の出生後8週間以内に4週間までの育休取得を分割して2回まで取得できるようになります。

育児休業の申し出は、原則として休業の2週間前までに短縮されることになりました。ただ、これは職場環境の整備などについて、今回の改正で義務付けられる内容を上回る取り組み(具体的な内容は省令で規定される予定です)の実施を労使協定で定めている場合は、1カ月前までとすることも認められています。

さらに、今回注目されているのは、労使協定を締結している場合に限り、労使の個別合意により事前に調整したうえで育児休業中の就業が可能となることです。これまではあくまでも一時的・臨時的でなければ認められなかった点を考えると、代替要員を配することが難しい専門的な仕事をしている方も、取得に対する心理的ハードルを下げられる効果を期待できるでしょう。

育休中の就業に関して想定される流れは以下の通りです。まず労働者が休業中でも働いてよい場合に事業主にその条件を申し出て、事業主はその申し出た条件の範囲内で候補日や時間を提示します。提示内容について労働者が同意した範囲で、育休中の就業が認められる、というものです。

就業可能日などの上限は、今後厚生労働省令で定められることになりますが、今のところ休業期間中の労働日・所定労働時間の半分までとなる見込みです。なお、雇用保険の育児休業給付においては、こうした改正内容が考慮されて見直されます。

これらの出生直後の柔軟な枠組みについては、公布後1年6カ月以内の政令で定める日(22年10月1日見込み、以下同)が施行日となります。

育休取得の環境整備や個別の意向確認が義務化

22年4月1日から、育児休業をしやすい雇用環境の整備に関する措置が事業主に義務付けられます。これは研修をしたり、相談窓口を設置したりするなどが挙げられますが、具体的内容については、複数の選択肢からいずれかを選択する措置となる予定です。

なお、環境整備については、短期の取得ばかりでなく、1カ月以上の長めの育休の取得を望む労働者がいた場合、希望する期間を取得できるように事業主が配慮するように指針で示される予定になっています。

また、妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対して、会社から個別の制度周知および休業の取得意向の確認をする措置が事業主に義務付けられます。個別周知の方法については、厚生労働省令において、面談での制度説明や書面による制度の情報提供などの複数の選択肢が示される予定です。法的な措置義務なので、会社はこのうちいずれかを選択して実施することが必要になります。

女性の労働者自身が妊娠した場合は、当然ながら時期をみて会社に報告することになります。しかし労働者が男性の場合、妻の妊娠について特に事前の報告もせず、出産してから「生まれました」と保険手続きの依頼のために申し出をしていたケースも少なくありません。

ところが改正法によって、男性の労働者も個別に育休取得意向の有無を確認されるようになれば、前向きに取得を検討しようと考えるのではないでしょうか。もちろん、これは会社側の姿勢も大きく影響します。まして育休取得を控えさせるような圧迫面接的な態度はハラスメントにもなりかねません。そうした威圧的な意向確認を認めないようにすることも指針において示される予定です。企業には十分な配慮が求められることになります。

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育休の分割取得が可能に 育休取得状況も公表へ