2021/7/27

「自分がしてほしかったサポート、かけてもらってうれしかった言葉がある。それを後輩たちに伝えたい」と語る長月さん。

例えば、自分のルックスに悩みを持つアイドルは少なくないそうだ。卒業したら美容の勉強をして資格を取りたいのは、「自分はかわいいと思ってもらえるようなメークをしてあげたい」と思うからだ。

「海外で困っている子供たちの助けになりたい」

将来の夢はもう一つあり、それはさらにスケールが大きい。海外で恵まれない子供たちの力になることだ。できればUNICEF(ユニセフ)のような国際貢献活動に関わりたいという。

これは長月さんの家庭環境の影響もある。インテリアの仕事をする父親は海外出張が多く、ジャズ歌手の母親は自宅でいつも英語の歌を練習していた。そんな家庭環境で育った長月さんには、自然と海外への志向が芽生えていた。恵まれない子供たちを支えたいと思ったきっかけは、フィリピンのごみ山で暮らす子供を紹介するテレビ番組だった。世界は広い。困っている人たちがたくさんいる。そんな人たちの力になりたいと思った。

もともと語学に興味があった長月さんは卒業したら、英語だけでなく広く外国語の勉強を本格的に始めたいと意気込む。「コロナ禍が収束したら、たくさん海外旅行もしてみたい。風の匂いも土の色も差し込む光も、海外に行けば日本とまったく違う風土の中で、たくさんの人たちが生きている。中には助けを必要としている子供たちもいる。そんな子供たちに寄り添えたらうれしい」

卒業直前に出演した舞台「球詠」(最前列左から2人目が長月さん)

5月末に卒業を発表したとき、芸能界からは完全に足を洗おうと思っていた。しかし、卒業直前に出合ったある仕事が思いを変えた。女子高校生の野球部がテーマの芝居「球詠(たまよみ)」だ。長月さんが、絶対にやりたい、この役以外なら出ないと思ったのが、捕手の山崎珠姫役だった。ラスアイでのこれまでの役割とは違い、ヒロインであるエース投手を支える役どころが、本来の自分の姿と重なった。出演者全員がラスアイメンバーの舞台「球詠」は大好評で、終了直後に続編の上演が決まった。長月さんは「初めての舞台の仕事は本当に楽しかった。アイドルは卒業するけど、舞台の仕事はお話をいただけるなら、もう少しやってみたい」と思うようになった。

卒業を決めてから、やりたいことが次々とあふれてきた。人を支えたい、勉強したい、海外の子供たちの力になりたい――今は100個くらいあるという。

ラスアイ4曲目のシングル「Everything will be all right」で、長月さん自身が熱唱するこんな歌詞がある。「自分の伸びしろ、こんなもんじゃないよ、何が起きたって、Everything will be all right」。長月さんはまだ21歳。伸びしろ、可能性は無限大だ。

(編集委員 鈴木亮)

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