N
ライフコラム
井上芳雄 エンタメ通信

2021/7/17

井上芳雄 エンタメ通信

やり方のコツや指針を早く見つける

自分の感覚としては、舞台は劇場に来た人に見てもらうもので、キャパシティーが例えば600人だったら1公演で600人以上の人には見てもらえません。そこが舞台のいいところだし、それが好きで舞台俳優をやっているのですが、一方でキャパ以上に認知が広がるのが難しいジャンルでもあります。舞台を1カ月とかやっていると、よくも悪くもそこに集中して、舞台と家の行き来だけになり、会う人も限られるし、世界が狭くなってしまいます。

そんななかで、コメンテーターのような仕事をやると、現場で会う人も違うし、受ける刺激も違う。僕や舞台のことを知らなかった視聴者の方々に、知ってもらえる機会にもなるし、得るものも大きいと思うのです。だから、舞台もテレビもどっちもできる機会があるのは、すごくいいことじゃないのかな。違うことをやると、使う神経や筋肉も違って刺激になるし、なにより好奇心に勝るものはないという感じでしょうか。

今回のコメンテーターのように、慣れない現場に入るときは、やり方のコツや指針のようなことを早く見つけようと心がけています。今回だったら、実はチームプレーなんだと発見したようなことです。それは誰も教えてくれないので、自分で探すしかないのですけど、見つかるとがぜんやりやすくなります。それは役作りに似ているかもしれないです。この役はどういう人物で、何を大切に生きているのかを探すし、見つかるまでは演じていても、居心地が悪い気がします。でも1個、この人はこれを大切に生きているんだというものが見つかると、全部がうまく流れ始めます。そういう感覚に似ているかもしれません。コメンテーターの仕事にしても、そういう役の自分を演じているといえなくもないですから。チームプレーを大事にする、という指針を見つけて、コメンテーターという役割にもさらに興味が湧いてきました。

『夢をかける』 井上芳雄・著
 ミュージカルを中心に様々な舞台で活躍する一方、歌手やドラマなど多岐にわたるジャンルで活動する井上芳雄のデビュー20周年記念出版。NIKKEI STYLEエンタメ!チャンネルで月2回連載中の「井上芳雄 エンタメ通信」を初めて単行本化。2017年7月から2020年11月まで約3年半のコラムを「ショー・マスト・ゴー・オン」「ミュージカル」「ストレートプレイ」「歌手」「新ジャンル」「レジェンド」というテーマ別に再構成して、書き下ろしを加えました。特に2020年は、コロナ禍で演劇界は大きな打撃を受けました。その逆境のなかでデビュー20周年イヤーを迎えた井上が、何を思い、どんな日々を送り、未来に何を残そうとしているのか。明日への希望や勇気が詰まった1冊です。
(日経BP/2970円・税込み)
井上芳雄
 1979年7月6日生まれ。福岡県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。大学在学中の2000年に、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビュー。以降、ミュージカル、ストレートプレイの舞台を中心に活躍。CD制作、コンサートなどの音楽活動にも取り組む一方、テレビ、映画など映像にも活動の幅を広げている。著書に『ミュージカル俳優という仕事』(日経BP)、『夢をかける』(日経BP)。

「井上芳雄 エンタメ通信」は毎月第1、第3土曜に掲載。第98回は8月7日(土)の予定です。


夢をかける

著者 : 井上芳雄
出版 : 日経BP
価格 : 2,970 円(税込み)


注目記事