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ジェラテリア・チルコドーロの手づくりジェラートのカップ。上から右回りにクリーミィクリーミィ、マレーナ、アモーレ・デッラ・ルーナ、抹茶。店舗および通信販売で1個324円~

ではここからは、日本の実力派の職人たちを紹介していこう。

大阪市中央区の「ジェラテリア・チルコドーロ」のオーナー兼ジェラートマエストラで、日本ジェラート協会の副会長をつとめる茂木(しげき)美佐さんは、1980年代半ばにイタリアのパルマ県のジェラテリア(ジェラート専門店)で短期修業。2011年、アドリア海沿いの中部の都市リミニで毎年開かれる製菓見本市Sigepでのジェラート世界コンクールにて、チョコレートを課題とする部門で4位となり、日本のジェラート職人の中のパイオニア的役割を果たした。

入賞したアモーレ・デッラ・ルーナ(イタリア語で「月の愛」)は、ビターチョコに日本酒由来の酒かすを加えた。「このジェラートが月光のように人の心を優しく照らしてほしいと願って名づけたんです」と茂木さん。ネーミングにも自然の繊細さを愛する日本人らしい心が生きている。

ジェラートの本場で力試しをしてみたい、入賞すれば自店のジェラートに話題性も生まれるとあって、茂木さんの後に続くように世界コンクールに挑戦する日本人は増えつづけた。

同じく日本ジェラート協会の副会長をつとめる「マルガージェラート」(石川県能登町)の柴野大造さんは、奥能登の生乳を使ったミルク味、能登の塩とピスタチオを用いたマスカルポーネ味など、地元の産品とイタリアの産品・技術を結びつけて新しい味を生み出した。その結果、イタリアジェラート協会が正統なジェラートの普及を願って任命する「世界ジェラート大使」をまかされるまでになった。

ジェラート・ワールドカップで躍進し続ける日本チーム

製菓見本市Sigepで03年から2年に1度開かれているジェラートの権威ある世界大会「ジェラート・ワールドカップ」でも、日本チームは躍進をとげている。12年に初出場で世界13カ国中6位、18年には11カ国中4位と順位を上げてきた。そして20年1月の日本チームは、帝国ホテルで働く30代シェフパティシエ4人が挑んだ。

ジェラート・ワールドカップ2020出場時の日本チームの作品群。ジェラートケーキの評判がとくによく、氷彫刻を彫り終えたときは会場がどよめいたという(写真提供 帝国ホテル)

監督は「現代の名工」にも選ばれた帝国ホテルのエグゼクティブペストリーシェフ、望月完次郎さん。チームメンバーはそれぞれ経験も技術も豊かだが、専門のジェラート職人はいない。それでも仕事終わりの夜の時間帯に練習を重ね、ジェラートを知り尽くす本家イタリアに次ぎ、見事に準優勝を果たした。

「現代の名工」にも選ばれた帝国ホテル・エグゼクティブペストリーシェフの望月完次郎氏 (撮影 中村浩子)

「日本のジェラートの強みは、四季を通して手に入る豊富な食材」と望月さんは勝因の1つを語る。いまや世界でも食材として通じるユズやワサビだけでなく、黒ニンニク、山椒(さんしょう)まで使った。これに対し、優勝国のイタリアが選んだ食材は、パルミジャーノやマルサラ酒など、一般的なものばかり。かんきつ類からハーブ、スパイスまで、まだ世界に知られていない食材をジェラートに応用した日本の存在感はいや応なしに増した。

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ワールドカップの経験が生きた帝国ホテルのアイスバー
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