高度な「ルヴァロワ技法」

今回の頭骨は、イスラエル中部の採石場にあるネシェル・ラムラ(Nesher Ramla)遺跡で発見された。10年にブルドーザーが先史時代の石器の宝庫を偶然掘り当てると、考古学者たちは1年がかりで発掘調査を行い、14万年前から10万年前にかけての狩猟活動の証拠を大量に発掘した。数万点の石器とともに、カメ、ガゼル、シカなど、さまざまな動物の骨や、火を使ったり動物を殺したりした痕跡などが見つかった。

研究者たちは、ネシェル・ラムラで発見された石器はかなり高度なものだと考えている。もともと私たちの祖先の人類は、岩からはく片を割り取って鋭くとがらせ、ものを切ったり穴を掘ったりする握斧(あくふ)を作っていた。やがて、好みのはく片を正確に打ち欠く新しい手法を編み出し、より繊細なナイフや槍(やり)の穂先を作るようになる。

ネシェル・ラムラの人類が使っていた打ち欠き方は「求心状ルヴァロワ技法」として知られるものだ。この地域では、約14万年前から8万年前のホモ・サピエンスも同じ手法を使っていたと見られる。もっと新しい時代では、欧州のネアンデルタール人もこの手法を使っていたようだ。

今回の2本の論文のうち、石器についての論文の筆頭著者で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもあるイスラエルのエルサレム・ヘブライ大学の考古学者ヨシ・ザイドナー氏は、ネシェル・ラムラの石器製作技法の複雑さについてユーモアを交えてこう証言する。「私は自分で石器を作ってみたことがあります。ごく簡単な石器なら作れますが、ルヴァロワ技法で穂先を作るなんてとても無理です。多くの練習が必要ですから。私はまだホモ・エレクトスのレベルですね」

しかし、より古いタイプの頭蓋をもちながら、これほどまでに高度な道具を作った人類の存在をどう説明すればよいのだろうか? ネシェル・ラムラで発見された石器の一部はホモ・サピエンスが残したもので、遠縁の旧人類が、その使い方や作り方に気づいたということだろうか?

ザイドナー氏は、この説はありえないと考えている。彼はまず、今回の頭骨の破片は深さ7.5メートル以上の堆積物の底で発見されていることを挙げ、ネシェル・ラムラの人類はホモ・サピエンスよりも先にこの場所にやって来たことが強く示唆されると指摘する。

ザイドナー氏がむしろ、求心状ルヴァロワ技法は中東ではなくアフリカで生まれ、アフリカで見つかった道具の一部はホモ・サピエンスではなく旧人類が作ったのかもしれないと考えている。彼は、ホモ・サピエンスが旧人類から道具の作り方を学んだ可能性も同じくらいあるはずだと言う。

米ジョージ・ワシントン大学の考古学者アリソン・ブルックス氏は、今回の研究には参加していないが、同じ時代を生きた新旧の人類が道具の作り方を教え合うためには、両者の間になんらかの相互作用がなければならないと指摘する。

ブルックス氏も、求心状ルヴァロワ技法はアフリカで生まれた可能性が高いと考えていて、「この技術は複雑なので、かなりの訓練を受けなければ習得することは難しく、それには視覚的および口頭で教えることが最も効果的です」と言う。

ザイドナー氏も同意見で、これらの技術を習得した人類がほかの集団に入り、実演によって技術を伝え、欧州やその他の地域に広めたのではないかと考えている。

次のページ
新種はもうたくさん
ナショジオメルマガ