頭骨が語るもの

頭骨を発見した男性は生前、隠し場所を孫たちに明かしており、18年に骨が回収されることになった。

頭骨は保存状態が非常に良いだけでなく、前述のように、古い人類の特徴と現代の人類の特徴が混在していた。「ショックを受けました」と、ニー氏は振り返る。ハルビンの頭骨はずんぐりむっくりしており、眉骨が非常に発達している。これらは現生人類にはあまり見られない特徴だ。一方、ほお骨がきゃしゃで平たく、低い位置にあるなど、私たちに似た特徴も備えている。

ハルビンの頭骨は、古い人類と現在の人類の特徴を兼ね備えている。アジアで発見される化石には、これまで考えられてきた人類の系統樹の枝にうまく収まらないものが増えている(IMAGE BY XIJUN NI)

「眼窩をのぞき込むと、とても不思議な感覚に襲われます」とニー氏は言う。「何かを伝えようとしているのではないかと、いつも考えてしまいます」

調査を開始したチームは、ヒト属(ホモ属)のさまざまなグループの頭骨、顎骨、歯の化石95点から情報を収集し、600以上の特徴を明らかにした。その後、スーパーコンピューターを使って系統を分析、ハルビンの頭骨は、私たちホモ・サピエンスに近いところに出現する、新しい枝に属すると結論を出した。

「これを見て驚きました」と言うのは、化石のグループ分けと年代を決定した2つの研究の著者であるストリンガー氏だ。同氏は、ハルビンの頭骨はネアンデルタール人の子孫だと予想していた。

ハルビンの頭骨はいくつかの点でほかの人類と異なるため、別の種として命名されるべきだと、チームの一部は考えた。新種を記載した論文の著者であるニー氏は、竜人を特徴づけるものとして、著しく四角い眼窩、長くて低い脳頭蓋、頭骨の正中線に沿った隆起がないことなどを挙げる。

「ほかとの違いは、一つの特徴だけではありません」と同氏は言う。「組み合わせのようなものです」

竜人をめぐる議論

しかし、チームのほかのメンバーや外部のすべての専門家が竜人を独立した種と認めているわけではない。また、人類の系統樹における相対的な位置についても同意していない。

英リバプール・ジョン・ムーア大学の生物人類学者、ローラ・バック氏は、この頭骨の特徴の多くは、程度の問題のように思われると言う。同じ種であっても、ある程度の違いはあるものだ。性別、年齢、地域的な適応、化石の年代など、多くの違いがそれぞれにわずかな変化を生む。

独立した種でないとすれば、竜人は何者なのか? ストリンガー氏は、今回の研究でハルビンの頭骨と同じグループに分類された「ダリ頭骨」に、同じく現代的な特徴と古い特徴が混在していることを指摘している。中国北西部の陝西省で発見されたこの頭骨は、「ホモ・ダリエンシス」という独自の種と考えられている。

「人類学ではすでに種名が氾濫しています」とカナダ、トロント大学の古人類学者であるベンス・ビオラ氏は付け加える。同氏は、竜人をホモ・ダリエンシスに分類するか、種名を付けずにおくのが望ましいと考えている。なお、同氏は今回の研究に関わっていない。

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