検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

竜とそばかすの姫・細田守 三たびネット社会描く理由

細田守監督インタビュー(上)

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

日経エンタテインメント!

細田守監督の3年ぶりの最新作『竜とそばかすの姫』は、新たなる挑戦かつ、ワールドワイドな地平にスケールアップしたエンタテインメント大作だ。壮大な仮想世界のビジュアルと美しい自然描写、高校生の青春群像、さらにネットを介しての自己肯定や芸術の持つ力、傷ついた心への寄り添いといった普遍的なテーマや社会的意識が込められた重層的な作品となっている。これまでも、常に変化し続ける時代を切り取って描写してきた細田監督。その渾身の最新作『竜とそばかすの姫』に込めた思いを、7つのポイントに分けて聞いた。

ポイント1:3度目のインターネット

『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』や『サマーウォーズ』でインターネット世界を描き、若者の心をつかんできた細田守監督。本作最大の注目点は、今またインターネットを真正面から取り上げることだ。

「僕は、インターネットの世界を舞台に、継続的に映画を作っている世界でも数少ない監督の1人だと思います。インターネットの歴史はまだ25年ほどですが、2000年の『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』、09年『サマーウォーズ』、そして21年『竜とそばかすの姫』――つまり、ほぼ10年おきに作っているんです。

12年前の『サマーウォーズ』と比べても、現代はインターネットがより生活に欠かせないものになり、特にSNSは、若い人にとって"もう1つの現実"です。さらにこのコロナ禍で一気にリモート化が加速。ネットの役割が変化したことで、どんな新しい物語が生まれるか。10年後にこの作品を見ると、もっと変化や違いが客観的に見えるかもしれません。

なおかつ、インターネットを肯定的に描いています。ネットは、誹謗中傷や、匿名で遠慮のない言葉の刃が飛び交い批判されることも多いですよね? 現実世界でははっきり見えない人間関係のヒエラルキーや差別感情が、ネットでは可視化され、見せつけられる。さらに、ネットやSNSで人格が変わったり、現実と振る舞いが違う人もいる。

でも、どちらが本当でどちらが嘘かというより、1人の人がやっている以上どちらも本当。例えば本作の主人公・内藤鈴(すず)は、クラスの隅でうつむいているそばかす少女ですが、<U>では"ベル"という人気の歌姫。真反対の存在であっても、どちらもその少女の一面です。人間は多面体でできていて、本当はみんなそうした異なる側面を持っているんです。

そんな具合に、インターネットは本人が思ってもいない別の側面も明らかにする。もう1人の自分と出会って変化が起き、現実の自分も強くなっていく――そんな効果もあると思うと、若い人がSNSやインターネットに求めるものの重要さが分かってきます。ただ批判するだけではなく、肯定的に"寄り添う"目線が必要ではないか。特にこのコロナ禍の、制限が多く抑圧された世の中には。それができたら、多少は気が晴れる夏になるんじゃないかと思うんです」

ポイント2:『美女と野獣』への回答

もう1つの大きなモチーフとなっているのが、『美女と野獣』だ。

「ジャン・コクトーの『美女と野獣』も好きですが、30年前のアニメーション映画『美女と野獣』がすごく好きで。アニメの仕事がつらくて辞めようと思ったときに見て、『こんな素晴らしい作品ができるのなら頑張って続けよう』と思えた。

『美女と野獣』では野獣が好きなんです。最初は暴力的な野獣が、ベルという愛らしい存在によって次第に変化し、素敵に見えてくる。唯一気に入らないのは、最後に呪いが解けて王子になること。野獣のままベルと結婚すればいいのにやっぱりイケメンかって(笑)。でも現代なら、野獣のままでも受け入れられるのではないか。

一方ベルも、美女であることに価値がある描かれ方でしたが、現代の美女とはどういう存在か。大好きな映画でありながら、割り切れない思いに対する自分なりの答えを表現したい。それが『美女と野獣』を現代で作る意義だと思ったのです」

ポイント3:社会の変化=野獣が竜へ

しかし『美女と野獣』とインターネットは世界が異なる。1本の作品で両方を描く発想はどこから出てきたのだろうか。

「『美女と野獣』のモチーフをインターネットの世界でやる、というアイデアは、野獣の持つ二面性と、インターネット上と現実の人格の二重性が、構造的に似ていると思ったから。野獣が元の姿に戻るのも『ネット上で匿名が暴かれる様子』と似ている。さらに、18世紀フランスの『美女と野獣』の社会的問題と、今のインターネットの環境や人々の苦境が近いのではないかとピンときたからです。

野獣の造形を竜にアレンジしたのは、18世紀の野獣が象徴するのは暴力だから。封建社会の男性は暴力で女性を支配する構造があって、それがどう変わるかを描いたのが『美女と野獣』。でも現代の野獣の問題は、深い心の闇や一種の孤独が根源にあるのではないか。それで、暴力性ではない違う存在が必要でした。闇や孤独の象徴としての竜、しかもその竜は傷だらけ。その傷がなぜできたのかを巡る物語にしようと考えたのです。

だってこれだけ世の中が豊かになって人権意識も変化してきているのに、おそらく人の幸福度はそんなに変わっていないんですよ。齋藤優一郎プロデューサーとも話したのですが、今の子どもたちの幸福度は昔と変わらないし、つらかったり傷つく人が歴然といる。18世紀の封建社会とそんなに変わっていないとしたら、現代社会ってどうなんだと。社会もエンタテインメント映画もそれに向き合わなければ、と思いました。だって描かなければ、そうした問題がないことと同じになってしまうから。

『時をかける少女』もそうですが、何回も映像化されている物語を時代を変えて描くのは大きな意味があります。同じ骨格で何が変わったのかを描くことで、世の中の変化が見えてくるからです。昔の作品と同じなら、何も現代を見ていないということ。クリエーターとして、それではダメなんです。

もちろん、これまで作ってきた作品からの連続性もあります。例えば『デジモン』『サマーウォーズ』の流れからインターネットをモチーフとすること。『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』の現代における家族の変化。そして『時かけ』以来、15年ぶりに高校生の女の子が主人公です。17歳の少女を描くことで、青春や恋愛だけでなく、同世代や世代が異なる女性の関係性も表現したいと思いました。

例えばうちの奥さんにもママ友の人間関係が、娘にも幼稚園での人間関係がある。なので、主人公の世話を焼く親友のヒロちゃんや全く異なる立ち位置のルカちゃんといった存在や、クラスの環境も描かなければいけない。――そもそも昔の恋愛映画にカースト制なんて言葉はなかったですが、"スクールカースト"とか言われ出したあたりから、クラスのなかでおいそれと恋愛できない状況が発生しているんですよね。

すずとしのぶくんの関係にも垣間見えますが、そんな状況に追い込まれる。昔も近いことがあったでしょうが、SNSでそれがより顕著になって叩かれたり。そんな大変な時代に生きているんですよね」

◇  ◇  ◇

来週公開の後編では、現実の世界の舞台に高知県を選んだ理由や、世界中のクリエーターたちと協力した効果などを聞く。

(ライター 波多野絵理)

[日経エンタテインメント! 2021年8月号の記事を再構成]

●日経エンタテインメント! 2021年8月号総力特集
細田守監督最新作『竜とそばかすの姫』
スタジオ地図の10年と未来


【スペシャルロングインタビュー】
細田守「最新作『竜とそばかすの姫』その根底に流れるものとスタジオ地図の10年」
【研究】
葛藤とチャレンジ 『竜とそばかすの姫』が生まれるまで
【キャストインタビュー】
中村佳穂(主人公・すず/ベル)
成田凌(しのぶくん)
染谷将太(カミシン)
玉城ティナ(ルカちゃん)
幾田りら(ヒロちゃん)
【スタッフインタビュー】
常田大希(メインテーマ『U』)
岩崎太整(音楽監督)
川村元気(プロデューサー)
齋藤優一郎(プロデューサー)
エリック・ウォン(プロダクションデザイン/英国)
カートゥーン・サルーン(コンセプトアート/アイルランド)
ヨハン・コント(インターナショナルセールス担当/フランス)
【詳細解説】
スタジオ地図10周年
時をかける少女/サマーウォーズ/おおかみこどもの雨と雪/バケモノの子/未来のミライ

日経エンタテインメント! 2021年 8 月号【表紙: 竜とそばかすの姫】

著者 : 日経エンタテインメント!
出版 : 日経BP
価格 : 840 円(税込み)

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_