理由3:競技コミュニティーの拡大

「面がそろうまでのタイムを争う『競技』として認知度を高めたことも、ルービックキューブの人気を支える一因」と語るのが、トイ事業部で国内トイマーケティングチームのリーダーである板垣有記氏。05年に発足した「日本ルービックキューブ協会」(現・一般社団法人スピードキュービングジャパン)と連携し、広報業務の一部を担当するなど日本各地で開催される大会をサポートしてきた。

競技者として大会に参加したこともある板垣氏は、「オセロや将棋は対戦相手の心理を読む必要があるが、ルービックキューブは自分との戦いなので、気軽に参加できるのではないか。大会では仲間が見つかり、コミュニティーもできているようです」と振り返る。

こうした小さな努力の積み重ねが奏功し、日本国内の競技人口は約2000人にまで拡大。その競技の様子を見て楽しむ人も増えている。

理由4:販売ルートの開拓

一般的な販売ルートである玩具店やECサイトなどに加え、04年から書店に商品を置き始めたことも大きな変化だった。少子化の影響で玩具業界の苦戦が続き、新たな販路の発掘は急務だった。「書店は幅広い年代が訪れるだけでなく、攻略本を置いている店もある。そのためルービックキューブとの相性が良かった」(小林氏)

理由5:変わり種キューブで新規ファン獲得

キューブの種類も、年に2~3種類ペースで増やしている。基本的な3×3以外に、2×2、4×4といった様々な種類があり、ユーザーを飽きさせなかったことも長年愛される一因だろう。

特に人気アニメとのコラボ商品は「新規ユーザーとの接点づくりに効果的だった」という。06年に発売した「スーパーマリオブラザーズ」シリーズで初コラボし、近年は「鬼滅の刃 ミニルービックキューブ」(20年発売・税込み1408円)、「ポケットモンスター ルービックキューブ」(21年発売・税込み2728円)など人気作品が続いている。

ポケットモンスター ルービックキューブ
東洋水産とコラボした「緑のたぬききゅーぶ」(左)と「赤いきつねきゅーぶ」(右)。共に税込み3278円

また、キューブはその幾何学的なデザイン性から、インテリアとしての需要も高い。18年には、キューブに1枚ずつ九谷焼をはめ込んだ「九谷焼ルービックキューブ」(税込み5万4000円)を発売。大人向けの高級路線でも、新しいファンに訴えかけてきた。

こうしてルービックキューブを支えてきたメガハウス。20年から力を入れるのが、複数人で遊べるルービックキューブ型ゲームだ。小林氏は「通常は一人用だが、アフターコロナを見据え、複数人で遊ぶゲームを提案した」と話す。20年5月に発売した「ルービック ケージ」(税込み2750円)は、黒い骨組みだけの本体に立方体の6色のキューブパーツを交互に入れる3D頭脳バトルゲーム。これも世代を問わず、友人や家族で一緒に遊べる。21年8月にもスライドパズルをモチーフにした「ルービックレースマスター」(税込み3520円)を発売予定だ。

発売中のルービック ケージ。本体を回転させたりひっくり返したりして、縦・横・斜めのいずれかで同じ色を1列そろえると勝ち

ラインアップ展開や様々なコラボで新規顧客の間口を広げ、攻略情報を充実させて離脱を防ぐ。興味を持った人には競技という目的を用意し、さらにコミュニティーへの参加を促してファンを増やしていく。決して派手さはないものの、手厚いサービスが消費者の心を捉えた。玩具のヒット商品は毎年のように生まれるものの、3世代にわたって愛され続けるのはまれだ。ルービックキューブの丁寧なマーケティングから、学ぶことは多い。

(日経トレンディ 寺村貴彰)

[日経クロストレンド 2021年7月9日の記事を再構成

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