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「理想の自己PR」から見える 就活前に取り組むこと

ふつうの大学生のための就活ガイド 第6話

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NIKKEI STYLE

日本大学経済学部・安藤至大教授が、これから就職活動を始める「ふつうの大学生」の相談に乗る、ストーリー形式の連載「ふつうの大学生のための就活ガイド」。第6回のテーマは、理想のエントリーシートです。(学生も会話もフィクションです)

N大学経済学部3年生の南蒼太(みなみ・そうた)は労働経済論の授業を担当している安藤先生のところへ就活の相談に行きました。前回、「理想のエントリーシートを書いてみましょう」という課題を出された蒼太は、授業後に安藤先生の元を再び訪れます。

蒼太 先日はどうもありがとうございました。理想のエントリーシート(ES)を書いてみました。こちらです。見て頂けますか?

安藤先生 はい、それではまず自己PRから読んでみますね。

あなたが学生時代に力をいれてきたことはなんですか?(800字以内)



 私が学生時代に力をいれてきたことは2つあります。
 1つ目は、「お客様の要望を徹底的に聞く」ことです。私は、建築学科にて、住宅のリノベーションに興味を持ち研究をしてきました。リノベーションは、もともとの住宅の良さを活かしながら、お客様のニーズを最大限に反映する必要があります。そして研究室の課題として、実際にリノベーション提案を複数件体験しました。
 その中で最も苦戦したのは、最初は住み慣れた住居を生かして老後暮らしやすいようにしたいという要望であったのが、何度プランを提示してもお客さんが納得してくれない案件でした。そこで根気よくヒアリングを繰り返していくと、孫に頻繁に遊びにきてほしいという想いがあることがわかりました。そこで、バリアフリーでかつ、子供がはだしで遊び回れる家を提案しました。その結果、建築学科での最優秀賞に加えて学生コンテストで大賞を受賞することができました。この経験によって、お客様の希望を引き出すことの重要性を学びました。その後の課題でも、お客様自身が言葉にできないでいる要望をくみ取る努力を続けています。

 2つ目は、「チームのために自ら率先して動く」ことです。私は、小学生から野球を始め、現在は大学の野球部に所属しています。勝利のためにはチームワークが必要であるため、私は特に後輩の指導に尽力しました。後輩からのアクションを待つのではなく、自分の空いた時間には後輩の癖を観察してアドバイスを行い、良いプレーがあれば積極的に声掛けして称賛することを心がけています。
今では後輩から生活面での相談を受けることもありますし、監督からもチームの橋渡し的な存在として認識されています。小さな積み重ねであっても、自分のプレーを誰かが見てくれているという安心感を皆に感じてもらうことが重要です。また、それがチームワークの向上につながっていると感じており、仕事をする上でも大切にしていきたいと考えています。

安藤先生 これは、頑張りましたね! どんな意図で書いたのかを説明してもらえますか?

蒼太 (やった!)ありがとうございます。僕は、経済学部なんですが、やっぱりリノベーション会社といえば建築学科のほうがうれしいかなと思って、まず建築学科の学生ということにしました。実際に家のリノベーション案なんかを考えて、学生のうちに賞をとった設定です。

あと、僕はやっぱり野球が好きで努力してきましたから、野球について書きました。本当は高校生から始めたのですが、一つのことを続けられる人間というのは魅力的だと思って小学生から始めたことにして、サークルではなく部活の方がいいかなとも考えました。

安藤先生 なるほど、いいですね。確かにこの人物であれば、Dリノベーションはもちろん、他の企業でも会ってみたいと思う採用担当者は多いでしょうね。もちろん改善できるポイントはありますが、よく書けていると思います。

理想の自己PRを書く意味

蒼太 でも、これは僕じゃない別の人ですよね……。確かにこんな人がいたらすごいなと思って書いてみましたが、今回の取り組みにどんな意味があるのですか? 僕はもう3年生ですし、経済学が楽しくなってきたところです。今から大学を受け直すことや転部などは考えていません。

安藤先生 南さん、ちょっと不満そうですね(苦笑)。理想のESを書いた意味はもちろんあります。

まずDリノベーションにとって理想的な人物を想像してみることで、企業の視点から、採用したい人物像を南さん自身が想像してみたことが重要です。会社から見た理想的な学生を考えるためには、業界や企業のことをよく理解する必要がありますし、実際に似たような人がライバルになるかもしれませんよね。

蒼太 えー、こんな学生がいたら確実に負けます……。

安藤先生 そんなに落ち込まないでください。これは勝ち負けの問題ではありませんし、ライバルを上回らなければ採用されないという意味ではありません。数人しか採用しない場合は別ですが、一定規模以上の企業の場合には、それなりに多くの人を採用するわけです。そして同じような人ばかりを選ぶわけではなく、採用する際には人材ポートフォリオを考えます。

蒼太 ポートフォリオですか?

安藤先生 ポートフォリオとは、元は書類を挟んでおくフォルダのことを指します。それが分野によって、例えば金融業界では複数の資産をどう組み合わせるかという資産構成の意味で使われますし、クリエイターにとってはこれまでの実績や制作物をまとめた作品集の意味になります。ここでは企業が様々なタイプの人材をバランスよく採用するという意味です。

蒼太 なんとなく、わかりました。

安藤先生 企業は様々な人材を必要としています。同じ企業に、他にどんな学生が応募するのかを考えて、自分がその会社に加わるとどのような面で貢献できるのかを考えるためにも、ライバルについて知っておくことには意味があります。

蒼太 建築学科を出た学生じゃできないことを考えて、他の面で活躍できるってことをアピールすればいいということですね。

安藤先生 その通りです。今回、南さんが書いてくれた理想的な自己PRで良いところが2つあります。1点目は、具体的なエピソードが述べられていることによって、説得力があります。

2点目は、「お客様の要望を徹底的に聞く」「チームのために自ら率先して動く」といった行動特性や人間性が明確になっていることです。つまり、企業の視点からすると、この学生を採用したらどのような形で活躍してくれるのかが想像できるわけです。

蒼太 自分で書いておいてなんですが、僕もこんな学生になれたら自信を持って就活に臨めそうです。

安藤先生 この取り組みのもう1つの意味は、「これから何をすればよいのか?」を考えるきっかけになるということです。理想的な人物を具体的に想像したことで、自分には何が足りないか、どの部分を向上させることが必要なのかを把握することができたはずです。

それでは南さん、実際の就職活動が始まるまであと約半年もあります。理想の自分に近づくために、その間に何ができるか考えてみてください。そして実際に行動に移しましょう。

蒼太 はい。来年の就活本番までに、理想に近い自己PRを書けるように、何をやればいいかを考えてみます。

理想の自己PRから、今後できそうなことを考えてみる

安藤先生 それではもう少し時間があるので、これからやることを具体的に考えてみましょうか。

蒼太 え、今ですか!?

安藤先生 はい、今です。5分間くらいで、思いついたことを書いてみてください。

(10分後)

蒼太 うーん、とりあえずできそうなことを書き出してみました。まず、あと半年で理想の自己PRに書いてみた「お客様の要望を徹底的に聞く」「チームのために自ら率先して動く」人間になるために、そしてそのことを会社に伝えられるような実績を作るために次のことを考えました。

<これから半年でできそうなこと>
(1)環境政策ゼミでの取り組み
・このコロナ禍でゼミ生の情報共有が薄れているので、オンライン上でゼミ生同士が気軽に情報交換できる場を作る。そのために無料で使えるものがないか探して提案する。
・ゼミの研究活動を頑張る。毎年やっている小学生向けの講座「環境問題を学ぼう」のリーダーに立候補する。それをきっかけに「これが専門です」と人に言えるように研究も頑張ってみる。
(2)課外活動
 高校から続けている野球はできるだけ続けて、チームワークを大切にするということを実践する。
(3)アルバイト
 居酒屋のバイトはコロナ禍で経営が厳しいみたいなので、テイクアウトメニューの呼びかけや正しい衛生管理をして安全をアピールすることで、売り上げに貢献する。

正直、自分の理想で書いた「賞をとる」というようなことには及ばないですけど、あと半年でできそうなことや、これからも続けたいことはこれくらいかなと思います。

安藤先生 いいですね。この中で南さんにとって、最も大きなチャレンジはなんですか?

蒼太 えっと、環境政策ゼミの講座開催のリーダーに立候補することですね。これ以外は、自分1人で頑張れることですけど、ゼミの活動は他の学生の希望もあります。そもそもリーダーに選んでもらえるかも実際にうまく講座ができるかもわかりません。でもリーダーになれば、勉強やゼミ運営などをやらざるを得ない状況に自分を追い込めるかなと。

安藤先生 そうですね。人間は誘惑に負けやすいものです。当初はやる気であったとしても、少しずつ手を抜いてしまうかもしれません。そこで大事になるのが、始めたら辞められない状況に自分を持っていくことであり、そのための手段がコミットメントです。リーダーになるというのは、勉強や運営にコミットすることになりますね。

入りたい会社、どうやって見つける?

安藤先生 ここまで理想のガクチカ(学生時代に力を入れたこと)や自己PRについて考えてきたわけですが、志望動機についてはどうですか?

蒼太 理想の志望動機についても、業界や企業のことをもう少し調べながら書いてみました。

あなたが当社を志望した理由はなんですか?(800字以内)



 私が貴社を志望した理由は3つあります。
 1つ目は、貴社で働いている大学の先輩から話を聞いて、リノベーション事業に魅力を感じたからです。特に先輩社員から「家は、お客様にとって人生で最大の買い物であり、正解がない難しい仕事ではあるが、お客様に認められた時の達成感は大きい」という話を聞いたのが印象的でした。私の幼少期に、祖父の家を取り壊すことがあったのですが、その際に泣いている父の姿を思い出しました。そしてあの時に、リノベーションという選択肢はなかったのか、家族の思い出になる部分を残して次の家を建てられなかったのかと考えました。そこで大学ではリノベーションの研究室に入りました。様々な選択肢を提示できるリノベーション事業は、お客様の人生に深く関わるという責任とともに、大きなやりがいがあり、生涯の仕事にしたいと考えています。

 2つ目は、貴社のDパークタウン事業の「人と共に生きる街」という理念に共感したからです。リノベーション事業というと1つの住居を改装するというイメージが強いですが、Dパークタウンは、空き家の多い地域を1つの街として捉え、事業を展開している点に驚きました。空き家の増加という社会問題への解決策の提示だけでなく、人々の新しいライフスタイルの提案をしている点に共感するとともに、自分も社員の一員となって街をつくっていきたいと考えています。

 3つ目は、貴社のチームワークを大切にした風通しの良い社風に惹かれました。先輩社員から、仕事をする上では他部署との調整もあるが、お客様のためにより良い商品をつくるという目標は皆同じで、妥協せずに話し合うと聞きました。また、貴社は社長へのプレゼンの機会もあるという風通しの良い社風です。私自身も野球を小学生から続けており、皆が目標のために遠慮せずに話し合えるチームが強いことを知っています。そういった社風のある貴社であれば、私自身もチームの一員となって貢献できるはずです。

ただ、改めて考えてみると、少し悩んでしまって……。

安藤先生 悩んだというのは、どんなことですか?

蒼太 「そもそも僕はDリノベーションが第1志望なのかな?」という根本的な疑問が出てきてしまったんです。

今回ESを書くにあたって、安藤先生から具体的に企業名を想定して書いてみようと言われたので、とりあえず先輩が働いているDリノベーションを身近な例として思いついたわけです。しかし僕は、住宅や不動産業界が本当に第1志望なのか、もっと向いた職業があるのでは……と考えるとわからなくなってきたんですよね。

安藤先生 そうでしたか。実際にESを書いてみることを通じて、就活のルールを知ることが目的で始めた取り組みですので、志望する業界や企業についてはこれから考えていきましょう。

蒼太 こんなことを聞いていいのかわかりませんが、そもそも自分のやりたいことや、入りたい会社を見つけるにはどうしたらいいんでしょうか?

安藤先生 もしかして、南さんは「やりたいこと」を仕事にするって考えていませんか?

蒼太 え、違うんですか? 例えばお笑い芸人は、自分がやりたいからその仕事をしているわけですよね。自分がタレントになろうとは思っていませんが、そういう風に自分がやりたいと思うことがあって、そこから志望業界などを探すんじゃないんですか?

安藤先生 なるほど。自分のやりたいことを仕事にして、それで生活している人のことを考えているわけですね。そして志望動機を考えている中で、そもそも自分は何をやりたいのかで迷ってしまったと。

蒼太 もちろん卒業したら就職して、稼いだお金で暮らしていきたいと思います。でもお金がたくさんもらえることよりも、まずは自分がやりたいと思える仕事をやるのが幸せなことかなって。よく天職って言いますよね。それに出合うためにやるのが就活かなと。

安藤先生 わかりました。まず南さんに必要なのは、自分を知ることです。自分の志望業界・企業を絞り込んでいくために、今から「3つの円」を描いて考えていきましょう。

(つづく)

安藤至大
 日本大学経済学部教授。2004年東京大学博士(経済学)。政策研究大学院大学助教授、日本大学大学院総合科学研究科准教授などを経て、18年より現職。専門は契約理論、労働経済学、法と経済学。厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会で公益代表委員などを務める。著書に「これだけは知っておきたい 働き方の教科書」(ちくま新書)など。

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