2021/7/27

眠気と運転事故に関するもう一つの話題として、米国では交代勤務者の夜勤明けの眠気に対する治療薬が認可された。夜勤明けはただでさえ眠気があり事故リスクが高いが、特に体質的に夜勤に弱く、強い眠気や不眠、体調不良を生じやすい人(交代勤務睡眠障害と呼ばれる)は、居眠り運転しやすい夜勤明けの帰宅時が要注意である。このような夜勤問題のハイリスク者に対して、もともと過眠症の治療に使用されていた薬物(覚醒刺激薬)を使えることになったのである。

過眠症とは、睡眠不足や夜間睡眠の異常がないのに日中に極めて強い眠気が生じる睡眠障害の一種で、覚醒刺激薬はその名の通り強い覚醒作用を有する。夜勤時の眠気は誰にでも生じ得る生体反応で、疾患とすべきではないという反対意見もある中でも承認されたという。それだけ夜勤明けの居眠り運転事故に対する危機感が強いのだろう。

日本ではさまざまな工夫や身の回り品で対処するしかない。居眠り運転を防止する方法については、仮眠やカフェインなどを活用する方法がある。「夜勤時の賢い眠気対処法」でも詳しく解説したので参考にしてほしい。不眠症や睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害があると居眠り運転のリスクが大幅に増加するので、特に職業ドライバーの方は検診をしっかりと受けていただきたい。そして何よりも、居眠り運転の最大の原因である睡眠不足のままハンドルを握らないことが一番の対策であることを強調しておきたい。

三島和夫
 秋田県生まれ。医学博士。秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事など各種学会の理事や評議員のほか、睡眠障害に関する厚生労働省研究班の主任研究員などを務めている。『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人氏と共著、日経BP社)、『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(編著、じほう)などの著書がある。

(日経ナショナル ジオグラフィック社)

[Webナショジオ 2021年5月13日付の記事を再構成]

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