8代目シボレー日本上陸 コルベットならではの速さ

2021/9/12
シボレー・コルベット クーペ3LT(MR/8AT)
シボレー・コルベット クーペ3LT(MR/8AT)
webCG

ミドシップ化や右ハンドル仕様の設定など、あまたのトピックで注目を集めている“C8”こと8代目「シボレー・コルベット」が、いよいよ日本の道を走りだした。“コルベット史上初”の新機軸が多数盛り込まれた新型の実力をリポートする。

ハンドルが右にある!

待望のC8コルベットが日本上陸。ナンバーもついたので早速借り出して取材に……と段取ったその日は、梅雨前線が活発化し、いつもの山坂道は通行止め。高速道路は事故で渋滞と、絶好にも程がある日和になってしまった。こんな日に限って……とは、この仕事をしていてままあることなので仕方がない。日本の地を走り始めたこの個体も、この後はしばらくお座敷に引っ張りだことなるので、ともあれできることをやろうと傘を片手に端々を眺めてみる。

並行モノの「ダッジ・バイパー」に乗る編集部のH君は、ナンバーステーの台座がきちんとできていることにいたく感心の様子。いやいやかつての正規バイパーも並行みたいなもんだったから……というツッコミは引っ込めつつ、GMは昔から仕向け地の法規には割と真摯(しんし)に対応してきたほうではないかと思う。「左ハンドルばっかり売っている」とツッコまれると、返す言葉はないのだが。

……と、そんなGMの物件にしてハンドルが右にある。C8コルベットの重大な関心事のひとつはこれだろう。エンジンが後ろに引っ越したおかげで、前軸側の構造物を自由に取りまわせるようになったことが大きな理由だろうが、この右ハンドルの設定により、日本のみならずスポーツカーの愛好家が多いイギリスでも、コルベットは大手を振って販売できるようになった。

そこで気になるのが、ドライビングポジションがきちんととれるのかということだ。MRやRRは、FRと違って前輪とキャビンの位置関係が近いため、タイヤハウスの張り出しがフットスペースを侵食し、ペダルの置き場が割を食うことが多い。その場合、左ハンドルならばフットレストが泣くことになるが、右ハンドルではその影響がアクセルペダルを直撃。ブレーキペダルごと車両中央側に追いやられることになる。今日び、そういうクルマ(=MRやRRの高性能スポーツカー)のインターフェイスは3ペダルでなく2ペダルが主流であり、以前よりはペダルレイアウトに余裕ができているのは確かだが、それでも思慮なくつくれば大惨事となることは言うまでもない。

2019年7月の初公開と同時に、世のクルマ好きを騒然とさせた8代目「コルベット」。1953年から始まる同車の歴史のなかで、初のミドシップモデルとなる。
インテリアは、ジェット戦闘機を思わせる、ドライバーを囲うような計器類やコンソールの配置が特徴。右ハンドルの設定も“コルベット史上初”のトピックだ。
キャビン側から見た「LT2」エンジン。ヘッドの小さなOHVの動弁機構やドライサンプ式の潤滑機構もあり、エンジンまわりは非常に低重心な設計となっている。
チェッカードフラッグとシボレーの“ボウタイ”がデザインされた、コルベット伝統のエンブレム。世代によって意匠が異なり、C8では黒い縁取りと狭い夾角(きょうかく)が目を引くものとなった。

ライバルにも引けを取らない静的質感

果たして、右ハンドル車をつくり慣れていないGMのクルマにして、コルベットのそれはほとんど違和感のないレイアウトとなっていた。ステアリングは完全にドライバーの中央正面にあり、左右の“足置き”も自然で、腰から下がねじれるようなことはない。アメリカでは標準体形となる大柄大足の自分的には、「ブレーキペダルの位置がもう少し左奥でもいいかな」と思う場面もあったが、これは個人差の範囲であって、総じて運転環境はかなりクリーンに仕上がっていると思う。

過度にタッチパネルに頼らず、主要な操作系については物理スイッチを残した点は、「誰でも乗れること」に対するプライオリティーが高いアメリカ車らしい配慮だが、ハザードスイッチが天井に押しやられてしまったのは、それを多用する日本的には残念なところだ。

インテリアの印象は、米本国で試乗したときから変わらない。試乗車は上級トリムの「3LT」だったこともあり、棚田のようなダッシュアッパーや陣地を分かつ断崖のような空調コンパネの端々にも表皮が巻かれているものの、その造形はちょっとビジーで大人げない。運転席から見るインパネまわりの情景はなんとも未来的で、コラムから左右に生えるウインカーとワイパーのレバーが、むしろ不釣り合いだ。総じて、静的質感はこのクラスの水準点。開発のベンチマークであっただろう「ポルシェ911」あたりと比べても遜色はない。勇ましい形状ながらベンチレーターも配されており、長時間の着座でも疲れを感じないシートの出来もまた、911あたりと比べるに値するクオリティーが感じられる。

ミドシップの常である後方視界の悪さは、このクルマも然(しか)りだが、それを補うべく高精細カメラによるマルチビューシステムが全グレードで標準化されている。一方で前方視界は、カウル高が低くフェンダーの両峰も一目瞭然と、情報量が多い。見た目の印象では車体の後ろ側が大きく広がっているように見えるが、料金所の通過や狭道でのすれ違い時などにバックミラーでクリアランスを確認する限りは、前方視界から得られる車幅感覚で運転しても問題はなさそうだった。また“狭い”つながりで言えば、ドア形状やサイドシルの太さはやはり狭所に優しいものではなく、他のミドシップスーパースポーツ系と同様、乗降時には注意や配慮が求められる。

次のページ
グランドツアラーとしても素質は十分
MONO TRENDY連載記事一覧