――ご自身はスーツがお好きなのですか。
「事業をはじめたころは22歳で、しっかりしたビジネスマンとして頑張っていきたいと、必ずスーツを着ていました。好きというより、ビジネスに対するこだわりだったんですね。私はスタッフにいつもこう教育してきたんです。『私はビーチでもいつも名刺を持って歩いてきたよ。どなたに出会うか、何がビジネスチャンスにつながるか分からないからね』と」
服装は「9割が黒」 何にでも合い、邪魔しない
――これまではスーツがビジネス上の大事な役割を担っていたのですね。そのスーツから解き放たれて、最近着ることが多いのが、黒のセットアップだと。
「セットアップに黒Tシャツというのが、今もっとも多い仕事スタイルです」
――オールブラックです。
「黒に引かれて、今は90%が黒ですね。私はスーツでもダークスーツが圧倒的に多い。黒やダークグレー、ネイビーでも色が濃いもの。旅館やホテルのプロデュースやデザインの仕事をしていますから、自分に似合う色というのを大事にしています。苦手は茶系やベージュ。似合わないことが分かっています」

――家業のルーツは洋服店。その影響はありますか。
「ファミリー事業としてのはじまりは加藤洋装店といって、大阪で婦人服の仕立屋をしていました。上の階に住み込みの縫い子さんがたくさんいて、うわーっと生地があって、店に立っていた母親がデザインをスケッチしながらお客さんとやりとりする光景を覚えています。でも私自身は服に憧れがあったわけでもなく、兄貴のお下がりを着ていました」
「むしろ、黒が好きになったのは、バンドマンのときかも。学生時代は音楽を本格的にやっていて、プロのミュージシャンを目指していました。当時黒ばかり着ていましたね。周囲でも黒が多かったです」
――クリエーターやミュージシャンは黒を着ている印象があります。黒Tシャツはどちらのですか。
「プラダのものです。着やすくて最高です。このスリッポンタイプのスニーカーもプラダではきやすい。ブランドに特にこだわっている訳ではありませんが、あえていえばあまり大衆的な黒Tシャツは着ません」
――時計もかばんも黒。靴もそうですね。
「デザイン的にいうと、白と黒は何も邪魔しない色だと思うんです。建築的にも合わせやすいし、みんなを邪魔しない色。みなさんの服の中に靴だけ黒があっても邪魔しないでしょう。華美にならず何にでも合う。マテリアルがよく分かる色でもあります」
(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)

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