同時に、起業は競技選手として生きていくための手段でもあった。身の丈に合った生き方、そして自分の成し遂げたいビジョンのためにどういう生き方の組み合わせがいいのか考えた結果だった。「SUPがなかったら起業は絶対に考えていなかった。普通にメーカーに就職してエンジニアとして暮らしていたと思う」と明かす。競技を通じて積み上げた成功体験が、自分も何かできるのではないかという原動力になっていた。SUPを通じて出会えた経営者や医者など様々な仲間の生き方、彼らから得た学びは、今も大きな財産となっている。

目指すは21世紀最大の水上エンターテインメント

NPO法人エティック(東京・渋谷)が運営する大学生向けの起業家・リーダー育成プログラム「メーカーズ ユニバーシティ」の存在も大きかった。SNS(交流サイト)のフェイスブックの広告欄でたまたま見付け、大学院修士1年の時に参加。学会での発表などで多忙となる中、最初は現実逃避の程度だった。しかし、たくさんの起業家と議論を重ねていくうちに「組織をどう作るか、理念を伝えるには何をすべきかなど、抽象化して考えると悩みはみんな同じなんだ」と気付いたという。

「まずは『海の箱根駅伝』をめざして広げていきたい」と意気込む

同時に「組織を大きくするためには、いかに人に任せていくかも学んだ」という。連盟の発足当初は意思決定など全部自分だけで完結させようとして、1人の限界を感じていたところだった。起業家の卵である同世代の人たちと出会わなければ「こぢんまりとしたサークル程度の組織にとどめて、今のように広げることはなかった」と話す。競技SUPの選手人口は、まだ1000人に満たないという。大森さんは「まずは誰もが楽しめる、応援したいと思える、そして勇気や元気を与えられるような身近なコンテンツに育成し、みんなに好きになってもらいたい」と意気込む。

大森さんたちが拠点としている相模川の河口付近には、くしくも箱根駅伝のコースである湘南大橋がかかっている。全国各地の大学にサークルや部活動を広めて「海の箱根駅伝」を実現させた先には、スポーツ動画配信のDAZN(ダゾーン)に放映権を売りたいという目標を掲げている。「SUPを21世紀最大の水上エンターテインメントにしたい」という野望に向かい、大海原にこぎ出したばかりだ。

(沢沼哲哉)

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