そのうち競技としての存在を知ると「競技人口が少ないから日本代表クラスのトップ選手を目指せる」と、ますますのめり込んでいく。現に今では、全日本選手権で上位に入るトップ選手に成長した。「自分が一番好きなスポーツの競技人口が少ないままでは、やっぱり悲しい。見る人にも楽しく感じてもらえて、やってみたいと思えるような競技にしたいという思いが強くなっていった」

SUPをメジャーにしたいとの一心で、まず在籍する早稲田大に公認サークルを立ち上げた。その後、16年10月には学生競技団体の全日本学生SUP連盟を設立し、19年4月に現在のサップリーグジャパンに加わった。今ではチームが慶応義塾大学や立教大学に広がり、横浜市立大学では初めて体育会系部活動になった。競技人口はこれまでに累計300人ほどまで増えたが、「まだまだ少ない」と笑う。

「全エネルギーを自然にぶつけられる」

競技スポーツとしてのSUPの魅力について、大森さんは「ボードと体が1つになって、こぐ動作を通じて自分の体のエネルギーを自然の中に全部ぶつけることができること」と言い切る。サーフィンは波という限られた資源の奪い合いで、同時に競えるのも2人が限界だ。一方でSUPは「海や水辺といった地球の中で一番壮大なフィールドで、己の肉体の限界を試すことができる」と強調する。

相模川の湘南マリーナなどを本拠地としている(手前中央が大森さん)

実際のレースも決められたコースをたどるのではなく「沖にあるブイを回って一番早くゴール地点に帰って来た選手が勝つというシンプルなもので、基本的にどういうルートを通ってもいい」。どのようにすれば波を受けにくく進めるかなど、自然と向き合う部分が多く戦略性も高いという。学生連盟の競技会は3人1組によるチーム戦にしており、目標を共有することを通じて生涯の仲間と出会えるということも大事な点として伝えたいという。

そんな競技SUPは、大森さんが描いていた人生設計を大きく変えた。大学で学んだ流体力学を生かし、現在は専用ボードの設計も手掛ける。20年9月にウェブサイト制作などを手掛けるIT(情報技術)関連企業「かけて」を設立したのも、大学・大学院で専攻した機械工学のテクノロジーをSUPに落とし込むためだ。練習に参加する学生の出欠、練習のノルマの達成度合いなど自身の理念の実現に向けてウェブシステムで詳細に把握できるようにした。今後は、あらゆるモノがインターネットにつながるIoTの技術やドローン(小型無人機)などを駆使することで、競技会場の安全管理や臨場感がある観戦体験につなげられるのではないかとみる。

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