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ガラス越しにタンクが見えるのはスイミーの都市型ワイナリーの魅力(大阪エアポートワイナリー)

ガラス越しにタンクが見えるのはスイミーの都市型ワイナリーの魅力(大阪エアポートワイナリー)

都心の繁華街や空港のターミナル内にワイン醸造所の「ワイナリー」が出現し始めた。この都市型ワイナリーの旗振り役となっている、スイミージャパン(東京・江東)の中本徹社長は気取らないワインとのつきあい方を仕掛ける。ワインを「接点、フック」と位置づけ、人がつながる「場、体験」を優先するのは、ワイン至上主義の造り手からは出てきにくい発想だ。入門書を読むところから始めた「門外漢」は、そのノウハウを起業支援の形で広めることによって、「うんちく抜きのワイン文化」という風も起こし始めた。

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「どこも一等地ばかり」。スイミーにはこのところ「都市型ワイナリーを開きたい」という案件が舞い込み続けている。「ほとんど1週間に1件ぐらいのペースで引き合いが来る」(中本氏)。既に札幌や京都、神戸、福岡などで具体的なプロジェクトが始動。創業から約5年で東京と大阪に3軒の都市型ワイナリーを構えた実績が買われ、体験形の「コト消費」を呼び込みたい事業者を引き付けている格好だ。

第1号となった東京・江東の深川ワイナリーでは、テイスティングコーナーと予約制レストランの両方で、醸造風景を眺めながらワインと食事を味わえる。ワインとの相性を重視して、食事のメニューは契約農家がワインブドウを栽培している長野、山梨などの食材を優先。ワインと料理のマリアージュ(風味の調和)を醸し出している。

小ぢんまりした印象の第1号ワイナリーとは異なり、「渋谷ワイナリー東京」(東京・渋谷)は40席を超える大型店だ。スケートボーダーの聖地的存在だった旧宮下公園跡地にオープンした複合商業施設「MIYASHITA PARK(ミヤシタパーク)」内にオープンした。「ワインタンクが並ぶ醸造室の様子を、ガラス越しに眺められるリアル感を意識した」(中本氏)。ビール業界ではクラフトビール醸造所を併設したマイクロ(小規模)ブリュワリーがあるが、こちらは「マイクロクラフトワイナリー」をうたう。

「分離と融合」という、相反するアプローチを持ち込んだ。従来は隣接地に設けるのが当たり前だったワイン畑と醸造施設を分離。都市部にはブドウ処理機器と醸造タンクだけを置いた。「畑の隣に醸造設備がなくても構わないと気づいて、都市型ワイナリーのイメージが固まった」。ワイン造りを入門書から学んだ「門外漢」ならではの、常識にとらわれない志向が新ビジネスの扉を押し開けた。

創業前に各地のワイナリーを訪ね回った。ほぼ1年間に及んだ学びの期間は助走としての価値が大きかったが、事業収入の見込みが立たない状況での「仕込み」はもどかしくもあったようだ。「社員に向かって『事業化する』と宣言しながら、実際には動きが見えにく」いという『ワイナリーするする詐欺』のような状態で、ひたすら知見のキャッチアップに努めた」という。

交通の不便なエリアに多い各地のワイナリーへ足を運ぶうち、「わざわざ観光を兼ねて来てもらうのは、集客の広がりを欠く」と気づいた。各地に優れたブドウ産地があることも分かり、「原料ブドウを都市部へ取り寄せる」という手法が思い浮かんだ。現在では北海道からでも輸送に1日はかからないという。都市部で醸造風景を見せる演出を取り入れることによって、「食事とエンターテインメント」「飲食空間と醸造スペース」の融合が手に入った。

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