白河 平等性を担保するためには、数値の可視化、透明性が重要であるわけですね。平等の推進に関して、日本法人で独自に進めている施策はあるのでしょうか。

小出 米国本社では、平等を推進するための役職「チーフ・イクオリティ・オフィサー」を創設したことが注目されました。多様なコミュニティを反映した職場づくりに取り組んでいるからです。日本法人ではこの役職はまだありませんが、同様の機能を果たせるように「オフィスオブイクオリティ(平等推進室)」というバーチャルオフィスを人事部門の中に立ち上げました。

日本独自の施策としては、新卒採用での対策です。日本国内にはまだエグゼクティブ候補になる女性の人材が多く育っていないので、新卒採用の時点から女性を積極的に育成することを重視しています。最近は、新卒で入社する社員の過半数が女性です。

コロナ禍で働き方の転換期に

白河 確かに、「新卒一括採用」は日本独特の仕組みですし、そこからアプローチするのはユニークな施策になるわけですね。

小出 そうなんです。私が7年前に会長兼CEOに就任したときには中途採用が中心でした。労働市場に女性のエンジニアが少ないために、男性の採用に偏ってしまうのが課題でした。比率を改善していくためには、新卒から女性を採用して活躍してもらうキャリアパスをつくり、可視化していくことが必要だと考えました。

一方で、「女性を優遇するのは逆差別ではないか」という見方があるのも事実です。性別や学歴などを聞かずに選考する「ブラインド採用」が理想的なのかもしれませんね。

白河 エンジニア中心という業種の事情から、今は女性を積極的に採用して男女比率の均衡を目指しているフェーズということですね。

小出 弊社の研究開発部門は女性の割合が高いと思います。特に米国では優秀な女性のエンジニアが多く活躍している印象です。

私が今注目しているのは、新型コロナウイルスが世界に与えた試練が、女性の働き方を前へと進める可能性です。例えば、日本法人では、約2700人いる従業員のうち9割以上が在宅勤務にシフトするという、ワークスタイルの転換期を迎えています。在宅勤務が原則となることで、より自分のパフォーマンスを発揮しやすい環境をつくり出せる女性が増えるとしたら、これまでチャレンジできなかった領域まで踏み出そうとする女性のエンジニアも増えてくるはずだと期待しています。

後編では、平等推進への取り組みやリモートワークなどについて、引き続き小出会長兼社長に聞く。

白河桃子
相模女子大学大学院特任教授、昭和女子大学客員教授。東京生まれ、慶応義塾大学文学部卒業。商社、証券会社勤務などを経て2000年ごろから執筆生活に入る。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員、内閣府男女共同参画局「男女共同参画会議 重点方針専門調査会」委員などを務める。著書に「働かないおじさんが御社をダメにする ミドル人材活躍のための処方箋」(PHP新書)、「ハラスメントの境界線」(中公新書ラクレ)など。

(文:宮本恵理子)