社内のコミュニケーションはオープンでフラット

小出社長は「人材獲得の面からも平等の実現は重要だ」という(写真:吉村永)

白河 特にIT分野は激しい人材獲得競争が続いていると聞きます。御社にとって、「平等」がビジネスの根幹を支える経営課題なのだという理由が分かりました。

素晴らしいのは、理念として掲げるだけでなく、具体的なアクションを起こしている点です。創業者であり最高経営責任者(CEO)のマーク・ベニオフ氏の著書を拝読したのですが、「イクオリティ(平等)に関して、私たちの会社は大丈夫だという自信があったが、いざ調べてみると実は男女間や人種間の賃金格差があった」と。そして、発見した問題に対して誠実に向き合い、是正に向けての対策を取っているとありました。

これまでに1620万ドルも費やして賃金ギャップの是正を行ってきたという実績は、説得力があるものだと思います。「分かっていても、行動できない」という会社が多い中で、御社が積極的にアクションをとれる理由は何だと思いますか。

小出 やはり、経営陣が「平等」をビジネスの成功に直結する価値として位置付けている点が大きいと思います。加えて、風通しのいいカルチャーが定着しているのも、平等に向けたアクションを進めやすい背景と言えます。

例えば、グローバルの役員会議の場で、ある女性リーダーがパッと手を挙げて「ところで、男女の賃金格差は本当にないのか」と発言する。その発言を受けて、別のリーダーが「もしも私に男女の双子が生まれ、同じ環境で同じ教育を受けさせ、彼・彼女が同じ会社に入ったとして、給与や昇進ペースが違ったとしたら? 絶対にそんなことがあってはならない」と力説する。そんな場面がごく日常的に起こっているんです。

疑問に思ったことを誰でも臆せず言える雰囲気がありますし、そこから建設的な議論に発展していく。そんな風通しの良さも、平等であることを推進しているのだと感じます。

白河 ご自身も、社員の方から「さん」付けで呼ばれていましたね。

小出 はい、誰も「社長」って呼んでくれませんよ(笑)。私もそれに慣れています。この呼び方が象徴するように、役職を問わず社内のコミュニケーションはオープンでフラットですね。グローバルの経営幹部が集まる会議の様子も360度カメラでリアルタイムに全世界に配信され、6万人の社員がいつでも見られるんです。

白河 「どれどれ、CEO(最高経営責任者)はどんな発言をするのかな」と、誰でものぞけちゃうんですね(笑)。透明性を大切にしているんですね。

小出 そうなんですよ。さらにチャット機能で質問や意見を言うのも自由。そんなコミュニケーションが社内で浸透しているから、平等という言葉にリアリティーが生まれるのだと思いますし、社員の納得も得られるのではないでしょうか。また、従業員の男女比率や女性管理職比率は常に最新の数値をクラウド上で管理していて、社員はいつでも見られるようになっています。

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コロナ禍で働き方の転換期に