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新米管理職に落とし穴 「逆パワハラ」を回避する方法

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

実績が認められて昇進し、初めて部下を持つ。誰にとっても、それはうれしい瞬間であることは間違いない。

ところが、当初は中間管理職としての職務を張り切って果たそうとするも、次第にメンタル不調をきたし、休職に追い込まれるというケースは少なくない。そう指摘するのは、精神科医・産業医の奥田弘美さん。奥田さんは現在、約20社で産業医を担当。これまでに2万人以上のメンタルヘルスをサポートしてきた。

多くの中高年ビジネスパーソンが直面するメンタル危機を乗り越えるための処方箋を、具体例を交えて詳細に説明した書籍『「会社がしんどい」をなくす本』の著者が、「初めて部下を持った新米中間管理職」が陥りがちな落とし穴と、それを回避する方法について解説する。

◇   ◇   ◇

こんにちは、精神科医・産業医の奥田弘美です。

30代になり中堅社員になると、社会人としての意識や振る舞いもしっかり身に付き、経験やキャリアも重ねてきて、社内で一人前のプレーヤーとして活躍できるようになっていきます。体力・気力も十分あり、疲れ知らずにバリバリと動ける時期です。

この頃から、個人の能力に応じて中間管理職としてマネジャーの業務も任されるようになります。

昇進は喜ばしいことですし、まして初めて部下を持ったのならなおのこと張り切るでしょう。ところが、昇進のような「喜ばしい変化」であっても、人間は大きなストレスを受けます。当初は気が張っていてそのストレスに気づかないかもしれませんが、時間がたつにつれてその影響を実感するようになるでしょう。

しかも「初めて部下を持つ」という、多くの人が経験する職業上のイベントには特有の"落とし穴"があります。私が会った、IT系企業でシステムエンジニアをしていたTさんも、それに陥った1人でした[注]

真面目で人当たりも良く、顧客の評判も上々で、着実に社内での評価を上げてきたTさんは、ある年の春から数人のグループのマネジャーに昇進し、初めて部下を持ち、あるプロジェクトの責任者となりました。

Tさんは昇進を素直に喜び、当初は非常に張り切っていたそうです。

ところが半年ほどたった頃からTさんの様子がおかしくなってきました。それまで勤怠には全く問題がなかったのに、体調不良を理由に遅刻が目立つようになり、温厚で笑顔の多かった表情も一変し、いつも暗い顔をして誰とも話さなくなってしまいました。

そして、上司が心配して人事部に報告し、私が産業医としてTさんと面談することになったのです。

[注]エピソードでは、個人や団体が特定されないように情報を適宜加工しています

部下に文句を言われ、自分が長時間労働する羽目に

面談室に入ってきたTさんは、顔色もあまり良くなく表情も暗い感じでした。私が「最近体調不良で遅刻が増えているようですが、調子はどうですか?」と尋ねると、「実は夜の寝つきが悪くなってしまって。ここ1~2カ月は、毎日2~3時間しか眠れていません」と話します。

事情を詳しく聞いてみると、当初は張り切っていたものの、部下2人のうち1人が仕事が遅くミスをしやすかったため、自分がカバーしながらもう1人の部下に仕事を多く頼んでいたそうです。すると仕事を多く頼んでいた部下が次第に「なぜ自分だけ仕事の量が多いのか? 不公平じゃないか」と不満を口にし始め、Tさんに文句を言うようになりました。

部下に強い口調で文句を言われてショックを受けたTさんは、平等に仕事を振るようにしたそうです。すると仕事の遅いほうに合わせて仕事を振るために、当然ながらプロジェクトの進捗(ちょく)が遅れ始めました。

Tさんは責任を感じて終電まで目いっぱい残業し、遅れた仕事をカバーしようとしたのですが、あまりにも忙しくて、仕事の遅い部下のミスに気づくのが遅れてしまいました。

その結果プロジェクトの遅れが致命的になってしまい、上司やクライアントからも「どうなっているんだ!」と厳しく責められてしまったのです。

夜も不安で眠れなくなり、朝起きるとひどい頭痛がするようになってきました。頭痛薬を飲んでなんとか会社には来て、自分で無理をして膨大な仕事をこなすという毎日……。

Tさんは私に「もうプロジェクトリーダーを降りたいです。前のように部下を持たないで、自分の仕事に思い切り集中できる身分に戻りたい」と訴えました。

このようなケースは、中間管理職の経験が浅い人によく見られます。部下からの要望と上司やクライアントからの要望との間でサンドイッチ状態になり、身動きが取れなくなって心身の調子を崩してしまうのです。

特にTさんのように黙々と仕事をこなす職人タイプや、性格が優しくて人に強く言うのが苦手で他人から嫌われることを恐れる人が部下を持つと、このようなケースに陥ってしまうようです。

「逆パワハラ」に苦しめられる新米管理職

部下のほうが露骨に文句を言ったり反抗的な態度を取ったりする「逆パワハラ」の状況になって、メンタルを崩す若い管理職に私は何人も出会ってきました。

彼ら彼女らは本来プレーヤーとして仕事をすることは大好きなのですが、他人に毅然(きぜん)とした態度で注意をしたり指示命令を出したりすることは苦手なのです。性格も温厚でNOと言えないタイプの人は、部下に食われてしまって主導権を取られてしまうことがあります。

プレーヤー気質の人は、いくら仕事ができるからといって部下をいきなり持たすのではなく、徐々にリーダーシップが身に付けられるように、まずは「管理職の見習い」的な立ち位置に置くことがお勧めです。

部下の管理の仕方、注意の仕方、部下からのクレームへの応じ方などを丁寧に指導してあげる「管理職になるためのコーチ」が必要なのです。コーチングなどの外部研修に積極的に行かせるのもよいでしょう。

管理職としてのスキルを身に付けてから中間管理職として独立させないと、Tさんのような「マネジャー職に適応できない」というケースが起きてしまいます。

Tさんは不眠症状や抑うつ状態がかなりひどく頭痛も頻繁に起きているようでしたので、すぐに心療内科を受診して治療を受けてもらうことにしました。同時に会社の人事部にフィードバックし、「Tさんのマネジャー職を一時的に免除し、仕事量や責任も大幅に軽減してあげることはできないか」と提案しました。

プレーヤーとしての能力は会社で高く評価されていたために、人事もすぐに動いてくれて、Tさんは望み通りリーダー職を解かれプロジェクトも変更となり、マイペースで仕事に取り組めることになりました。

心療内科での治療の効果も出て体調は次第に回復し、数カ月後には表情も元通りになり、穏やかな笑顔が見られるようになりました。

「かくれ疲労」にご用心

30代や40代は、どんどん責任のある仕事を任されて求められる仕事の質も高くなってくる時期です。

Tさんのように仕事ができる社員ほど会社の期待が集まり、管理職としての仕事も任されるようになってきます。

グループのリーダーや部署のトップとして、売り上げや契約数といった「数字」のプレッシャーと日々格闘している人も少なくありません。

また産業医として面談をしていると、「日中は部下の指導やフォローで自分の仕事ができなくて、終業時間が過ぎてからやっと自分の仕事が始められる」といった人にもよく出会います。

こうした精神的なプレッシャーと肉体的な疲労が重なって限界に達してしまうと、自律神経が乱れてパニック障害になったり、不安が高じて不眠症などのメンタル不調を発症したりする人もしばしば出てくるのです。

そのほかこうした精神的なストレスと体の疲労が蓄積した場合は、慢性的な腹痛や下痢(または便秘)を繰り返す過敏性腸症候群や、ストレス性の胃潰瘍をはじめ、胃もたれや胃痛が継続する慢性胃炎や機能性ディスペプシア、胸やけやむかつきを感じる胃食道逆流症になる人も珍しくありません。

また精神的な緊張による肩こり・首こりが長引いて、緊張性の頭痛になる人もいます。心身の疲労が蓄積することによって、めまいや耳鳴りを感じたりひどいときはメニエール病になったりしてしまう人もいます。

これらのストレス性の疾患は、体にも心にもストレスと疲労が知らないうちにじわじわとたまることによって発症してしまうのです。

30代や40代は、なまじ体力があるために疲労やストレスの蓄積になかなか気づかない人が多いので注意が必要です。

責任のある仕事に追われている人ほど、次のような「かくれ疲労」の兆候がないかチェックしてみてください。

●仕事や人間関係のことで、普段より細かいことが気になりやすくなっている

●そのためつい夜遅くまで考え込んだり、早めに目が覚めたりと、熟睡できる日が減っている

●何となく体がだるいなと感じる日が増えている気がする

●仕事や家事などのルーティンワークに対して、普段より「めんどくさいなあ」と感じてイラッとしやすい

●病院に行くほどではない胃もたれ、便秘、下痢、肩こり、頭痛、耳鳴りなどが、以前より増えている

●休日に予定を入れてみるものの、いざ出かけるとなると何となくテンションが下がってしまい、出かけるのをためらう。頑張って行ってもあまり楽しくない

こうした兆候があれば、要注意です。これらは、疲労の蓄積によって起こっている自律神経の乱れの初期症状だからです。

この状態であれば、体力や精神力でとりあえずしのげるので、見逃されやすい傾向があります。「なんだか気がたるんでるなあ。もっと頑張らなくっちゃ」「ノルマ達成のために、もっとギア上げなくちゃ」と自分にハッパを掛け過ぎていると、本格的な心身の不調に結びつく可能性が高まるのです。

もしこうしたサインをキャッチしたら、とにかく心と体を休息させることに注力してください。

平日はできるだけ睡眠時間を「6時間以上」確保する必要があります。もし仕事のことが気になって神経がピリピリするため熟睡しにくく、寝つくまで1時間以上かかったり、途中で2回以上起きてしまったりする症状が週に何回か起こるような場合は、心療内科や精神科、内科などで相談し、軽い睡眠導入剤を処方してもらうのもお勧めです。不眠症状が悪化してしまうと、心身の不調がどんどん進んでしまいます。

「睡眠薬を毎日飲むのは抵抗がある」という人も、1週間のうち1、2日だけでも服用し、グッと深い睡眠を取るだけでも、体の疲れはかなり違ってきます。

また昼食や夕食をできるだけ時間をかけてゆっくり食べて、自律神経のバランスを整えましょう。仕事中は多忙過ぎて気が抜けないという過緊張気味の人でも、昼食や夕食の時間を長めに取ることで、リラックスを図ることができます。

心身の休息時間をしっかり確保するためには、休日には「仕事から完全に離れられる時間」が必要です。自分が休みの日には仕事の連絡が入らないよう、きちんとONとOFFを分けることも大切なのです。

[日経Gooday2021年7月2日付記事を再構成]

奥田弘美さん
精神科医(精神保健指定医)・産業医・労働衛生コンサルタント。株式会社朗らかLabo 代表取締役。1992年山口大学医学部卒。精神科医、そして約20の事業所の産業医として、日本経済を支える働く人の心と身体のケアを日々応援&サポートしている。これまでにメンタルケアを担当したビジネスパーソンは累計2万人以上。マインドフルネスやコーチングを活用した心の健康法も、執筆やセミナーなどにて提案している。 著書には『1分間どこでもマインドフルネス』(日本能率協会マネジメントセンター)、『心に折り合いをつけて うまいことやる習慣』(すばる舎・共著)など多数。最新刊は『「会社がしんどい」をなくす本 いやなストレスに負けず心地よく働く処方箋』(日経BP)。

「会社がしんどい」をなくす本 いやなストレスに負けず心地よく働く処方箋

著者 : 奥田弘美
発行 : 日経BP
価格 : 1540円(10%税込)

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